それぞれのパーティー
僕らの問題は解決しつつある。
「さすがパパ!」
ニンフが驚きの声をあげて、クリスティーヌはそんなニンフの言葉を聞いて、アゾトに尊敬の眼差しを向ける。
アゾトの意見は単純明快。
「ふーん、可愛そうに、くそ弱いのに自分の弱さに納得できないのか……」
マーストンは考え直した、物分かりの良いアゾトもこの地下空洞で生きる魔族。
人の通りは、通用しないようだと……。
「こうしよう。君の所のエルフのくそじじと、私が居れば、生命線の最低ラインを越えない様にする事は出来るはず。そこで人間のパーティーで、うちの執事を倒せばいい。そうすれば人間界も安泰、君のところのくそ弱も納得出来ずとも、迷宮まで俺が連れて行ってあげよう。ククッ、弱いくせに粋がるから敵に塩を送られる事になる」
僕は言葉が出なかった。
ただ、口を開き、考えをまとめようとするが、僕は何を、すべきかここでは常識は通用しない。
だから、僕は大きく息を吸い込み、「ありがとうございます」そう伝えるのみだった。
「レイソンは生意気なのよ。うちのマーちゃんの事、置いていたのよ許せないわ」
「えっ、そうなんですか?」
「それならお父さん心配だから、ちゃんとめってしなければいけないなぁー」
「そう思うわ」
ニンフと、クリスティーヌと、アゾトの楽し気な会話は続いていた。
クリスティーヌと、アゾトは親子なのだからわかるとして、その会話を回しているのが、うちのニンフなんだが、いいんだろうか?
「ニンフ」
僕がそう言うと、「ごめんなさい、まーちゃんが呼んでいるわ」
そう、忙しいのに困ってしまうわ。と、いう感じで、ニンフはやって来た。
「マーストン、クリスティーヌの事は任せてね」
そう勉強できる生徒の様に、ブラウンの瞳をきらきら輝かせて、彼女は僕を見上げる。
「あ……、せっかくの親子水入らずなんだから、ニンフ、お邪魔してはいけないよ」
「任せて、村の老人会でもちゃんとしていたもの」
彼女は胸に手をやり、胸をはって行った。
祖父は、老人会の活動も協力してたらしいけど、ニンフも行ってたのか……初めて聞いた。
「うん……じゃあ、クリスティーヌの事、お願いします」
そう言って、僕はみんなの所へ帰った。
「どうだった?」
赤い髪のアレックスは、腕を組み壁にもたれ掛かりそう聞いた。
僕はその下で、縛られているレイソンを見る。
「とりあえず、クリスティーヌと、アゾトの親子の会話をうちのニンフが回している。祖父が老人会へ連れて行くほどだから、たぶん、失礼はないはずだと思う」
「へー、ニンフは気ままと所だあるが、ダークの面倒は見ていたし、任せて大丈夫だろう」
「だが……」
だが、床にレイソンが寝かされている状態で、いや、不都合は隠しても伝えなければ、今回も目的は達成できるはずはない。
そして戦いって事は打ち分け、もうすこし彼には平常心を思い出して貰わなければならない。
「とりあえず、今後の事は決まった。ここで話し合って大丈夫な内容だけではないが、ここにいる全員へ伝えなければいけない」
僕はそう、アレックスに伝えて全員へ徴収をかける事にした。
◇◇◇
やはり、アゾトの提案はこちら側では不評だった。
ラドルさんは一言。
「はぁ……、足の速いものがあるのに……」
そう言って、髪をかきあげた。
残念ながら、お弁当には間に合わないかもしれない。
「けれど、帰って鍋にすれば大丈夫ですよ」
「うちへ君たちを呼ぶのは嫌だ」
「なら、うちを使ってください。チトセもうちを知っているので、大丈夫なはずです」
だが、帰宅はもっと遅くなるはず。女性がそんな遅い時間に夕食を食べるだろうか?
うちは食の細い、ニンフと、クリスティーヌしか居ないから、わからない。
隣のマルノネ、あんな小さな子に夜遅く食べさせたら、うちが追い出されてしまう。
「残業しているなら可能性はある。やるだけ、やってみよう」
そう、ラドルさんは言った。
計画性が凄い。
「そういう事だからレイソン、暴れなさそう?」
ケイトが、レイソンの猿ぐつわを外す。
「どういうつもりだ。マーストン……」
僕とアレックスは顔を見合わせる。
今回、僕は彼に何かやった? くそ弱とか聞こえた?
「お前は、いつから剣を使えるようなってた?」
あぁ……そっちか、先ほどのニンフの契約解除の際、僕がアゾトに切りかかったのを見ていたらしい。
「それは以前からだよ。聞かれなかったから言わなかった。ヒールの合間に剣を持っていたら、確実ではないけどダメージを見逃すからね」
「だが、起死回生の1打になってたかもしれない」
僕は少し長く伸びてしまった前髪を片側へ寄せてレイソンを見る。
「それは、ここに居るアレックスが決める事で、もう君じゃない」
「マーストンは召喚師で、今はセラティーも居てくれる。だから、マーストンには後衛の火力として力を尽くして貰う。それに……剣技の起死回生が欲しいならどいててくれ、俺が決める」
アレックスがそう言うと、レイソンは口を閉ざす。
そしてすべての拘束をケイトが解いた時――。
「行くぞ」
ケイトと、クリシアを呼びつけ、戦い方の戦略をたてるようだ。
セラティーは彼らのバックアップに付くが、魔力の回復飲料の限られた世界で、最低限の回復のみしか行う事ができない。
つまり、死なない程度治すのみ。
ホワイトと、ラドルさんの中止宣言から有無を言わさず、僕らと交代となる。
僕らも勝てる見込みはない。
この大空洞、魔界で新たな危険が無くなるとなれば、挑まなければいけない。
そう、それが大空洞、魔界だった。
続く
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またどこかで。




