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思い出がよみがえる

  迷宮からマーストンたちは謎の力で引っ張られ、地下空洞のどこかの城の玉座の前に立っていた。


 ここに落とされた人間は、【正義の鉄鎚】、そして【世界樹の葉】のメンバーと、マーストンの従妹のセラティー、ギルドの職員のラドルさんと、ホワイトの大所帯だった。


 そしてエルフの執事は、雇い主だろう魔族の男性、そしてダークエルフであるクリスティーヌの父に、流血の制裁を受けている。


 そして……。

「白々しい」

 振り返ると、みんなの視線はホワイト様に集中しているが、彼はそしらぬふりでそっぽを向いている。


「貴方には、そう見えるでしょうね」


 そう言ったアゾト、クリスティーヌの父は言った。


 彼は、今にも噛みつこうとする狂犬の様な、執事の上に座って居る。

 まるで本当に、狂犬を押さえつけているようだ。


「あの……その方に眠って貰う事って……」

「それはできない。代わりこうしょう。クリスティーヌ今は幸せなのか?」


 彼女はキョロキョロと、まわりを見る。

「えっと……幸せです。今、みんながいるので、寂しくありません。お父さんとも会えました」


 そうクリスティーヌは、少しあどけなさの残った顔で笑う。

 そして彼女に合わせる様に、赤い瞳の彼女の父が目尻をさげて笑っていた。


「そしてお前には、お母さんがいたんだ、シンシア。彼女は森に住み、まぁ他のエルフ同様、華奢で胸が残念だった。彼女に助けられた時、そう思った……」


「胸が残念?」

「お前は大丈夫だ。きっとな……我の血も、頑張ってくれるだろう。我は昔、ここ地下大空洞を出て、魔族が暮していた地上に、出たかった。


 だからエルフの封印の魔法の、月に一度の揺り戻しに合わせて、地上に戻ろうと考えた。


 そして結果は成功し、害の少ない魔物として、強制排除にまでもっていき、地上へ出たには出たんだが……。


 エルフの魔力を真っ向から受けてしまい、少し浄化されそうになっていたのかもしない。


 エルフの森で倒れていたようだ。


 そんな我が目覚めた時、『誰?!』っと言ったエルフは、白い透き通るような肌で、美しい金の髪だった。その姿は完全に、弓矢と、水色の瞳で、我を射殺そう狙っていた。


 その月の女神のような姿に、一目惚れをした。


 幸運な事にシンシアは大変面倒みがよくて、彼女に拾われる事となった。


 そして……今や私の椅子になっておる執事と、何故か空き家で住まされる事になる。

 こっちの方が先輩で、もっと酷い状態で拾われていたらしいがな。


 当然の事、男女が居れば愛が育まれる。これはシンシアが言ったので間違いない。


『目の前のものたちが全て、美しく、素晴らしく感じるのは何故か?』という問いに、彼女はそう答えた。


 なるほど、これは魔族にはない概念だ。教えられなければわからない。


 『しかしそれは性欲のどう違うのか?』と彼女に聞くと、『それは……いつかわかるわ』


 そう魔族の老人に、人間やエルフを憎む理由を聞いた時、みたいな返事をしだしす。

 人間で、こっちに調査しに来た奴は、基本こちらの事を無視しだし、エルフも人間界へ上がるまで見たことが、無かったにのにだ。


 ところで、その違いについてわかるものがいるか?」


 見回すと、アレックスが手を上げていた。マーストンの心に動揺が走り、女性のアレックスを見る視線は、マーストンにしてみれば痛いほどだった。

 そしてアレックスは普通に語りだす。


「これは……貴族の概念ではあるが、性欲とはコントロールするものだ。貴族の家系と領地の平民の未来をつなげるためにそれはあり、それを忘れれば……余計な跡目争うが生まれる。そしてそれは……愛した相手さえ死にいたされる事もある。そう教わったが?」


「なるほど……、痛いところを突かれたな。それは我もよく知っている。我にそれはを教えてくれたのは、我の下に組み敷かれているこいつだがな」

 エルフの執事は、下を向きその表情は見えない。


「嫉妬に狂ったこいつが、他のエルフに我を売り、我は呪いを体に刻まれふたたび大空洞へと落とされ、今まで会う事は叶わなかった。


 シンシアは……他のエルフに、腹の中のお前が、取り上げられぬようにと、そこから逃げた。


 そしてこの椅子が見つけた時には、クリスティーヌ、お前は消え、シンシアは虫の息だったらしい。


 しかしこいつおめでたいほどの馬鹿だったので、我を売った相手を、こいつは殺してまわったらしい。


 シンシアの臨終の時も、間に合わないという失態をやらかす。恐ろしい阿呆だ。


 我も我で、八つ当たりで、この地を統治していた。その我の前にこいつがある日、突然現れた。


 しかも殺して欲しいと言って訪ねて来たので、生かしているし、こいつだけがシンシアが生きていた今ある証拠であると考えると、大変腹立たしくもあった。


 そして……今回、こいつの失態の連続で、クリスティーヌ苦労かけたな」


 そこで彼女は小さく首を振り、やはり彼は目を細め見つめていた。

 

「毎回、こいつの報告を聞けば、我ら親子のためとはいえ、こいつは殺しておくべきかと思ったが、一目会いたかったのだ。


 我が娘と……。

 そしてクリスティーヌも、長い時をかければ、いつかはまた、ここまで自身の力で来れるだろう……。


 地上に幸せがあるのなら、そこで生きればいい。


 椅子、お前も区切りがついただろう? クリスティーヌも幸せと言っている。


 正直、今回も死体を1つ作って、クリスティーヌの居場所を壊すところだった。

 お前は災いしか生まん。上手いお茶だけを沸かしていればいいのだ」


「グゥフ……」

 アゾトの下から、落胆と、歯ぎしり混ざる! 音が聞こえて来た。


「ふむ」

 それを聞いて、気に入らなそうな声を彼は漏らし、そしてマーストンたちに向き直った。


「で、……誰が、クリスティーヌ、お前の彼氏だ?」

 それを聞いて、そういう言葉は物語の中だけだと思っていた、マーストンはある意味大いに驚いた。


 その問いには、クリスティーヌ自身は沈黙した。


「一緒に居て世界が輝けば、愛なのだぞ?」


「じゃー、迷宮から出た時に感じる。生き返ったーて、感じるあれは?」

 セラティーが、隣のケイトに聞いた。


「えっ……それは……」

 ケイトは明らかに動揺し、振り返っているマーストン越しにアゾトを見ている。

 確かにあの瞬間、世界の輝きは素晴らしく目を奪われる。


「ねぇーどうなの? ラドルさん」

「それは積み重ねていけば、愛になる可能性もあると思いますよ。思い出も増えますし、相手が好ましい反応をすれば、それだけ愛は深まります」


「「へぇー……」」

「じぁーダー……クリスティーヌはそういうのは、どうなの?」


 パン! 

「あります!」


 彼女は胸の前で、手を打つ。

 そしてアゾトは腰を浮かし、マーストンは、やっぱり懲りていないだろう執事に睨まれる。


「ニンフちゃんと、料理したり、おやすみ前に話すと、とても楽しいです」

 ニンフはうんうんと、うなずく。


 話す……はなす? 彼女の前だけでは話せてたのかニンフ……。


「そうなのか……お父さん嬉しいよ」


 彼は立ち上がり、ニンフのもとへと歩いて行く。


 そして彼女の両肩を2度ほど叩くと、彼女は目を瞑り、同時に、マーストンの剣がアゾトの首元を捉えた。


「ニンフに何やっている……」

 マーストンは冷静な怒りの海に沈みながら、そう言った。


「契約を半分切っている」


 アゾトはニンフの額を右手の中指と、人差し指で撫でる。


 彼女の心臓付近から、芯を抜いた輪切りのパイナップルの様な魔法陣が幾つもあらわれて、ピシッピシッと大きな音をたてながら亀裂が入っていく。


 それが終わると、召喚の契約が遂行された時のように、彼女のしばりが、彼女の中へと戻っていった。


 そしてマーストンの剣の刃はアゾトに手で押され、退けられてしまう。

 切る事に躊躇していた、彼の剣はあっさりと首元から離されてしまった。


「毎日、ハツカネズミする程度の召喚の契約をして、以前の誰かの契約を書き換えていけ、そうすれば契約は置き換えられる」


「ありがとうございます」


 マーストンは剣を納めると、深く頭を下げる。

 それを見てたクリスティーヌも、続けて頭を下げた。


「これでもっと話せるように、なったはずだ」

「ありがとう。薬草食べてね」


「まずいから、いらん」

「それじゃーもっと大きくなれないわよ?」


 そうニンフは、マーストンと同じ背の高さのアゾトと言った。


 ーーニンフは話し方は昔と変わらない。

 女の子なのに、僕より祖父に似てるし、芯の強さがよくあられている話し方。


 懐かしく魔界のこんな場所で、少しだけ涙がこぼれそうだった。


 続く


見ていただきありがとうございました。


またどこかで!

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