イックの危機一髪!?
ぶち抜かれた2階の部屋。
輪の形に並べられた椅子は、フルーツバスケットのようだった。
「皆様、よくぞ集まってくださいました」
そう輪の中の1席に座って居る、彼は言う。
「集まってない。いや、集まったのか? ……では、集まったと言って、何を聞かせてくれる? 彼女の過去か、あんたの過去か? その全部か?」
そうイックさんが、言っている間に、アレックスとラスクさんを見るが、ふたりとも首を振っている。
執事の隙をみた攻撃は出来そうにないらしい。
……今の所は。
「………………」
返事はなく、執事の彼は、ただ足を組んで座って居るだけだった。
「無視か…………」
「では、ボクらで勝手に話そう。じゃーまず、マーストン話して」
サラティーは、落ちついた様子でマーストンを指さした。
「僕が知りたいのは彼女の両親の事です。今、彼女の両親が出て来ず、執事が出て来るのは1.彼女の両親が何らかの事態で出て来れない。2.ダークエルフさんを執事の彼に一任している。3.彼が無暗にしゃしゃりでている。どれだと思いますか? ダークエルフさん」
マーストンは、敵の返事を誘いこむ作戦を実行し始める。
「皆さん、その前にクリスティーヌ様を、ダークエルフと呼ぶのはやめてくれませんか? 聞いていて、不愉快です。彼女の母が命がけで産み、送った名前があるのですから……」
「じゃーその彼女の母の記憶を、黙して語らない貴方はなんなのですか? それとも貴方について行けば、その記憶を語ってくれると? 彼女の母に会わせてくれると? 僕らと彼女の間にも『ダークエルフさん』という名前について思い出は作られているのです。貴方がそれを上回るだけの、彼女と、彼女の母親のとの、思い出を根拠を示すべきです!」
彼はさも気に入らないと言うように、手を広げ笑う。
まぁ、そうだろう。マーストン自身も手詰まりで、これが付け焼刃の問答だとは知っていた。
「時間稼ぎですか、それとも誘導尋問? 下劣な人間が考えそうな考えそうなことです」
彼はマーストンたちを見ている。下劣な人間と言っている。森の人、エルフは、人間を嫌い森へ行ったのか?
彼らは森を愛しているので、森に居ると僕は思っている。
だから、彼の憎しみは、人間の近くに住まざる終えなかったものか、ハイエルフと言われる部類。
世界の中で、人間、エルフ、ノームなど認識しなけばいけない存在だったのか?
それとも……彼は、やはり魔界と呼ばれるところから現れたのか? ヒントを絞って答えをだすしか、今はなかった。
「でも、彼女はそうは思っていないかもしれませんね」 そう言うと、ダークエルフさんを見た。
執事の彼と真逆にいる彼女に、8人の視線が注がれる。
「お母さん? 私のですか……?」
そう彼女が言った時、執事のポーカーフェイスが外れ、心底悲しそうな顔をする。
――これは……。
彼女の母はたぶん死んでいる。そう考えた方が正解に近いだろう。
そこを揺さぶると、隙を作る事が出来る可能性が高い。
そして……全滅する可能性も、あるように思える。
「貴方の母上は優しく、聡明で素晴らしい方でした。しかし、しかし……、私が違う居ないしばらくの隙に……」
執事の彼は余程悔しいのだろう、噛み締めている唇から血が滴り落ちる。
「ですが……、クリスティーヌ様、そんな卑劣な事を計画したものは全て、長い年月をかけて居なくなってしてしまいました。いるのは下界に怯える臆病者ばかりです」
「エルフの世界……」
そう言ってブラックファイアーが、一斉にガッツポーズをする。
「はは、気味悪いですねー。お嬢様のために殺しておいた方がよさそうですね」
「そんな事をしたら、お嬢様も、貴方の様に短絡的に、人を殺める人になっちゃいますよ」
「ちょっ馬鹿!」
「撤退、お願いします……」
そして彼らは一斉に帰還の、護符を破り始める。
マーストンもニンフとダークエルフさんに帰還を見届け、護符を破いていたが……イックの居た席の後ろの壁は無くなっていた。
首の高さから。
マーストンが元の世界に帰ると、血の海になっており、今回の討伐メンバーで、人だかりになっている。
ヒューッドン!
そんな音がして振り返ると、チトセに渡された赤い花火をアレッスが打ち上げていた。
「今日はもう、迷宮へ入ったら殺されるぞ!?」
そう言う、イックは寝転がりながら治療を受けている。
「お前がわるいんだけどな。そして首の大きな血管やってるんだから、もう話すな」
「はぁー……【世界樹の葉】の皆さんすみません」
「……言われてみれば、すんませーん」と、言いながら、彼は血を吐いた……。
「「あぁ――……」」
「大丈夫、大丈夫、ヒーラーが2人いるんだからボクに任せてよ!」
そうサラティーが会話に混じるが、お通夜状態は続いていた。
「諸刃の剣だったか……」
「うーん、ホワイトも、少し難しいところもあるので、こんなものでしょう」
そして僕とアレックスの視線の先にいるのは、座って蟻なのだろうか? 地面の上の、何かを見ているダークエルフさんの姿。
そばでは、白いワンピースを着たニンフがダークエルフさんの頭を撫ぜている。
そしてダークエルフさんは膝に置かれた腕を出し、薬草のはっぱーを食べては、うぅーにがい!? って顔を……した!?
マーストンとアレックスは慌てて2人に駆けよる。
「ニンフ、今日はダークエルフさんいろいろあったから、ちょっと、うーんまだ早いかな? 薬草、彼女元気いっぱいだし」
ニンフをつかまえて、彼女のブラウンの瞳を見つめ、マーストンが説得する。
「ダーク、無理すんなよ」
「大丈夫、私、食べて元気になるね」
そう言う彼女の目は涙目だ。きっと薬草が9割なのだと思う……。
そんな彼女の両肩に、ニンフが手を乗せ、そしてにっこりと笑うのだ。
祖父が居た頃は、「元気がでたよ。ニンフ」ってよく言っていた。
ニンフ……。
すっかりお姉さんになって……。
そしてニンフは、シャキン! と、ふたたび青々とした薬草を取り出す!
そしてヒーラーの取り囲む、緊急地帯へ顔を向けた!
そしてニンフは歩きだす。冬の太陽を浴びて、彼女はやる気に満ちみちている!
「ちょっと待て!」
アレックスがニンフの肩に手をのせた。
「え?」
そう、彼女も、マーストンも、アレックスを見た。
「たぶん……イックは、薬草食べた時のリアクションで、体力使いすぎて飲み下すまえに逝く」
「あぁ……」
そう呟くマーストンと、やってみなきゃわからないでしょ? という感じのニンフとで、別れてこちらで揉めている内々に、イックは復活したのであった。
続く
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