現れる人影
9人をけく居ると、会話があさっての方向に行き、誰が話しているかがふんわりしてますね……。
馬車を降り、依頼人の案内についていくと、畑の真ん中に迷宮の魔法陣があった。
「頑張って行こう!」
「「おー!」」
いつもの調子とは、やはりだいぶ調子は変わるが、迷宮へ順番に入って行く。
迷宮の中の姿は、まずはうっそうとした森だった……。
そしてダークエルフさんと、ニンフがうなずき合い、一同を置いて先へと進む。
「おい! 待て! おい! マーストン、お前んとのちびっこいのと、べっぴんさんのダークエルフが!」
イックは、そう僕に声をかける。
しかし、マーストンは森の木々を見つめ、見渡している。
ここには、見覚えがあった……。
「ここは……ふたりの様子から見ても【妖精の迷い森】です。それもダークエルフさんが妖精に囚われていた、場所のようです」
「妖精の迷い森と言っても、竹の林じゃないほいか」
「スイジースの町の方です。そっちとは違いますね」
それだけ言うと、マーストンは2人の背中を追う。
しかし……、不思議と、森のどこかに違和感があった。
彼女たちを追う足どりが、こんなに順調なのは、妖精が消えたためだからだけなのか?
そして一同はダークエルフさんが閉じ込められていた小屋へたどり着けた。
小屋はまだ新しく、庭先の植物の種類も違う。
新しく建て変えたのか? 誰が、何のためにあんな場所にある小屋を?
「待って!」
「お前たち勝手に行くな!」
扉の前に居た2人を、マーストンとイックが呼び止めた。
止まってくれた、二人の少しもとへ歩いて行く。
「ここは、何故か以前見た時より、凄く新しいようです。なぜかが、不思議なのですよね」
「建て替えた、って事はなさそうだな?」
「今、それが関係あるのか? 何ならこの建物を破壊して中を確かめてもいいが?」
「それはまずいだろう。どんな法則で、ここにこれがあるのかもわかってないんだから」
マーストン、アレックス、そしてイックさんは意見を言い合っている。
「ブラックファイアーの皆さん、今までこんな現象ありましたか?」
「ない……ないよな?」
そうノックさんが言うと、残りの2人も首を振る。
「喋れ!」
「ボクもないと思うなー。でも、世界は広いからね。あっても気付かなっただけだったかも?」
そしてニンフと、ダークエルフさんは、今度はキッチン側の窓へ。
そして2人についていたアレックスが、口に人差し指を当てながら、「こちらへ」と呼んでいる。
「僕とイックで、行こう。残りは少し離れて待機しておいて」
そう言うと残った彼らは芝生を抜け、森側へ移動する。
そして僕らはアレックスの元へ。
窓から見えるのは、キッチンに変わった様子がなく、それは以前来た時と、あまり変わった様子がないと言う意味でもあった。
そして彼らが指差す、廊下の窓側に移る影。
誰かが、そう階段下にいるのはわかるが、影だけでは正体不明はだった。
そして今は違う。
あの執事が廊下から現れて、隠れたマーストンのもとまでやって来て、窓を開け上から声をかけてきた。
「なぜ、すぐに上がって来ないのですか?」
そして声を殺し隠れていたはずの、マーストンが仕方なく立ち上がる。
それで、執事の様子を確認する事もできたが、ただ呆れたって顔で、マーストンたちを見ている姿を見たのと、ホワイト様と同じエルフだけれど、彼は顔に深い皺が刻まれている。
どれほど、長い年月生きてきたのだろうか?
「貴方、私のお友達に無礼を、働くと許しませんよ!」
以前から、練習中だったお嬢様らしいことの強みを生かす、ダークエルフさんの台詞だ。パチパチパチ、ニンフが拍手した。
「「パチパチパチ」」マーストンたちも拍手する。
少し自棄だが、数少ない、優位点である人数だよりで、こっちの土俵に持ち込むようにしなければならない。
とにかく、ダークエルフさん頑張った!
「承知しました。クリスティーヌ様」
彼は手を前にだし、彼女に礼を尽くす。
「本当に、僕らを攻撃する事はありませんか?」
執事はニヤリと笑う。
「貴方がた、それで満足するなら何度でもいいますよ」
「これは駄目やつだぞ」
イックさんが小声でつぶやく。
そして彼らは全員、一度、外の芝生の上に集まった。
「例の執事がいたぞ!」
「「わぁー」」
「そして案内してくれるらしい。多分、全然安全じゃないけど行く人」
全員……手を上げた? あっ、えっ……。
「待ってください。安全のために誰か残った方がいいのでは?」
「俺はノックとノロシに、あの時は……って自慢げに話されることに、我慢できない」
「わかる」
寡黙なラスクさんや、ノロシさんまで……。
「まぁ、ボクら冒険者だし、こんなもんでしょう」
マーストンは目を閉じて、両親を思い出す。そして冒険者気質として、向こう見ずな素質は両親にも思い当たる事があったが、ブラックファイアーにはその傾向が強いように思われた。
「そうかもしれませんが、生き急がないでくださいね」
「わかるが、冒険者の言うこっちゃないだろう?」
「マーストンの夢は実は学校の先生だから」
「は?!」
イックとサラティー……、やはりマーストンは、親戚関係の気恥ずかしさを感じていた。
「とりあえず、逃げる際はそれぞれ壁をぶち破ってでも、バラバラに逃げよう。ヒーラーとニンフは誰かについて、我、先に逃げてくれ。前回のブラックファイアーの荷物の例もある。最悪、ここに残されても、いつかは吐きだされる。その時までに魔法の効果が継続されていれば、復活のちゃんすはどこかしらにある」
「「はい」」
アレックスの意見通り、ヒーラーが2人いる状態の今なら安全策の為の、プランはいくらでもあるだろう。
それがどう生かせるかだった。そして執事である、彼の目的を遂げさせない。
「では、行こう」
「待って、一応ダークエルフさんは一番後ろへ。君が居れば、彼と会話の成立する可能性はあるから」
「でも、私、前衛だから……」
「それについてはダーク、今はこだわらなくていい。俺たちにあの執事は戦う時間をくれるとは限らない、後衛が奇襲をかけ逃げる事を優先させよう」
「でも、アレックス、ニンフの奇襲は今回使えないよ?」
「じゃーボクの出番だね」
「ヒーラーか、ならノロシもいけるやつなのか?」
「攻撃が来たら、防御魔法を目の前で展開するのさ、自爆は回避されても、こちらへの攻撃量は減る。マーストンの土の魔法を、合わせれば行けるっしょ?」
「だが、ところで丸聞こえじゃないのか?」
アレックスの言うように、執事はすべてを把握していると考えておくのは正しい。ましてやこの近さだ。
世界はじゃんけんの範囲を、とうに越えている。想定外の事を考えていかないと……。
そしてアレックスと、ラスクさん、ふたりの戦士から家へとすすむ。
扉を抜けると、「こっちです」と、2階から声がする。
そして部屋の間取りは、ほぼ、そのままだった。
「ある」
彼女が触ったのは、階段の手すりについた傷。
黒く焦げたような跡は、最近つけられたようだ。
「ダークエルフさん?」
「ここは私の家です。でも……まだ、新しく、ある傷がない場所……」
「ここはそう、作ってもらったんです」
階上に立ち、僕らを見つめている白いエルフは、僕らを見つめそう告げる。
だが、僕とは視線が合わない。
彼はやはり彼がクリスティーヌ様と呼ぶ、ダークエルフさんだけを見ていた。
そして僕が彼女の前に立つと、明らかにその表情を曇らせた。
「誰につくって貰ったんですか、共犯者? 彼女の両親ですか?」
「さぁーて忘れました」
そう言い終わらないうちに、彼は奥の部屋へ入って行ったようだ。
「ふぅ……推理パートなのに、俺たちに提示されてたカードが少なくて、わかんねぇー」
「だなー」
「何が狙いだ?」
ブラックファイアの皆はそう言う。
そして階段を上がると、壁の向こうに敷居の壁はなかった。
魔法でくり貫かれて、円の線状に椅子が置かれている。
ノロシさんとサラティーのヒーラー2人は、各パーティーの戦士の後ろへ椅子を動かし座ったのだった。
続く
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