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教育的指導の予感

 ギルドで明日の迷宮のクエストを受けたマーストンたちは、ギルドのレスランで親睦を深めるって理由で夕食をとっていた。


 今、彼らの前の皿は片付けられ、コーヒーやオレンジジュース、紅茶などの飲み物が並んでいる。


「なぁ、しばらくの間なら、俺たちの家で泊まって貰えばいいじゃないか?」

「わぁー、やったー、その方が便利だよね」


 そうアレックスがいい、サラティーは同意した。

 昔から人なっこい彼女は、マーストンたちの中に溶け込んでしまったように見える。


「みんな、いいの?」

「いいぜ!」

「はい!」

 そう言う仲間たちの前に、胸の前に大きく手でバツを作っている、ニンフの姿があった。


 マーストン、彼は首を少し傾げ、ニンフを見る。


「ニンフ、セラティーは僕の従妹なんだから、君の従妹のようなものだよ。だからも僕は、君たちが仲良くしてくれるのこと望むけど駄目なのかい?」


 そう聞くと、彼女はプイっとした様子で、ダークエルフさんの椅子の後ろへと隠れた。


 ダークエルフさんは戸惑いながら、後ろにまわった彼女を見ている。


「えっと……どうしたの、ニンフちゃん?」

「変わらないなーニンフは、昔はマーストンを押し出して来たけど、今は彼女なの?」


 僕はぼっーっと彼女たちを眺め、セラティーも言っている事は変わらないな……。

 そう思っていた。


 ◇◇


 叔母の連れて来た僕の従妹、短い金色の髪、水色の瞳のサラティーと、金色の髪、茶色の瞳のニンフ。


 彼女たちは僕なんかより、ぱっと見、姉弟に見えた。


 だからなのか、このふたりは、子どもの頃から()()()()()りしている。


「マーストン! 何で、この悪い精霊さんの事ばかり聞くの!?」

「マーストンがいい子だからに、決まっているでしょう?」


「落ち着いてどうしたの? ふたりとも喧嘩は良くないよ?」


「でも、ボクはいとこでサッカーも、かけっこも一緒にできるもん!」

「私はいつでも一緒に、居るから」


 子どもらしく、一緒に一緒に元気な遊びをしたいと、怒っているサラティーと、彼女の事を気にも留めないように、僕といつもの様に過ごそうとするニンフ。


 結局、いつも2人は相容れなくて、3人の関係はパンクする。


「「ねー! マーストン、どっちが好き!?」」


「僕は……、お爺様が、一番好き!」


 そして僕がお爺様と叔母さんの元へ行くと、いつも仲直りのクッキーを貰った。


「ふふふ、サラティー、ニンフちゃんと喧嘩ばっかすると、もうここへ連れてこないわよ」


「だって……」


「見て、マーストンが困っているでしょう」


 そう言われた僕は、いつもお爺様の奥へと隠れて、座っていた。


 そうすると、彼女は僕の元までやって来て「マーストン、ごめんね」と言う。彼女の水色の瞳が揺れて……綺麗だった。


 ニンフはその時は、僕らを見ていただけだったんじゃないかな?


 でも、彼女はその後、四六時中僕にひっついて歩き、お爺様に、「ニンフは、マーストンのひっき虫だのう」と言われ無言でうなずいていた。


 あの頃、ふたりとも新しい自分の居場所を作る事に、必死だったのかもしれない。

 だけど、ニンフはずっと僕と一緒に居た。


 だから、久しぶりに会った僕たちの従妹を、一緒に歓迎して貰いたかった。


 僕は彼女(ニンフ)に、ここに居ていいって居場所を、まだ、作ってあげられてないのかもしれない……。


 ◇◇◇◇


「ニンフ、悪いけど冒険者になると、パーティーで生活をともにする事は普通にある。君の譲れないラインを後で、一緒に相談しょう?」


 そう僕が、彼女に言うと彼女はふらっと、ギルドのレストランの席を立ち、行ってしまう。


「私、ついて行きますね」


「ありがとう。でも、深追いはしないで、ニンフも人間界の境目から、精霊の世界へ足を伸ばしただけかもしれない」


「はい、わかった」

 そう言うとダークエルフさんはギルドの扉を開け、とばりの降りた港町アオハジへ出て行った。


「いいのか?」

「正直わかりません。今のダークエルフさんなら、彼女を任せられる。彼女がここの世界を選んだなら、僕以外の人間を知るべきです」


 そう言って、マーストンはアレックスの顔を見て笑った。


 僕がそうしていられるのは、アレックスのおかげで、彼と出会わなければニンフと同じありさまだっただろう、きっと。


「で、ボクは引越していいのかな? やっぱーまだ未定?」

「すまない。まだ未定だ。」


「そうかぁー、まぁ、結構ニンフが頑固だからな……」


 彼女は頭の上で手を組み、体を反らせる。緩く編まれた彼女の三つ編みが、肩から背中側へと落ちた。


 ヒーラー特有の女の子ぽいふわぁっとした恰好はしていても、する動作は昔ながらの彼女の様だ。


「ニンフがそうであるから僕は、命を救われた時もあるし、彼女はそれでいいと思う。ただ……」

「ただ?」


 セラティーは今度は机に手を付け、身を乗り出してきた。


 アレックスは自然な動作で、彼女の手元にある、ニンフ飲んだオレンジジュースの入っていたコップをどかす。


 どっちもらしくて、僕は少しだけ嬉しくなり、目が細まる。


「ギルドランクが上がるごとに品格を求められる。そして召喚師の世界ではそれは精霊にも求められ、だからこのままでは母から、僕とニンフに指導が入りそうではある」


「あーありえる、ニンフはもう精霊界へ帰っちゃうじゃない?」


「まさか? ……大丈夫だと思うかい? アレックス?」


 マーストンはうなだれるように、肘をついた腕へと全体重をかけ、隣にいるアレックスへ思わず聞いてしまった。


「俺は……マーストンの母上を知らないので、なんとも……」

「すまない。そうだよねー。うーん引っ越す話し、前もって引っ越すならば、って話をしょうか?」


 そういうマーストンはだいぶ、それどころではない様だった。

 右手を結び、その手の親指と人差し指で、鼻の根本を押さえ、目を閉じたりしている。


 明らかにそれどころではない。って状態になってしまっている。


「今度でいいよ。マーストン」

「そうかすまない。…………、みんな……、一度、僕がニンフと話してみるけど、もう少しだけニンフに行儀正しくなって貰う際、協力を仰ぐかもしれない……」


 そう、苦渋に満ちた声と、表情でマーストンは言うのだった。


「ああ……」

「あっ、でも、たぶん大丈夫じゃないかな? ニンフちゃんには伯母様の甘いところあったしね?」


「まぁ、そうだね。そうだ」

 彼はそう言ったが、マーストンの表情はさえる事はなかった。


 続き


見ていただきありがとうございました。


またどこかで。

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