祖父との約束
4話、書き直しました。(書き直す前も、羊と遊んでいたけど、(メインストーリーに関係ない、)草原で羊と戯れただけのシーンが新たに追加されました)
ノームの村から夕方、帰り着いてマーストンとアレックスは、ギルドへ馬車を帰しに行くついでに、ギルドの報酬を貰うと、手ごろなクエストを書きとめて家へと帰って来た。
帰って来ると、先に帰って来ていた星の葉の植木鉢は玄関に馴染んでいて、昔からいるような顔して置かれていた。
玄関の荷物は、ダークエルフさんとニンフがやってくれたのだろう、きれいさっぱり片付けられている。
木の温かなぬくもりのあるリビングへ歩いて行くと、中心に置かれた長椅子のソファの上では、ニンフが寝息をたてているようだ。
赤ちゃん、もしくは子どもの様に背中を丸め、胸元にはこぶしを握りしめ置かれていた。
そしてその体の下に、長い金の髪が広がっている。
「あ……、寝ちゃったか……」
「おかえりなさい」
「ただいま、アレックスは先にお風呂へ入るって」
「あー……、そうなんだ。わたしたちは先に入ったけど、ニンフちゃんが疲れたみたいで、寝ちゃった」
ソファの椅子に座り、本を読んでいたダークエルフさんは顔をあげそう言った。
「じゃー先にニンフを、ベッドへ連れて行って来る」
子どもの本程度の内容ならわかる彼女は、『勇者シュナウザーの冒険』って本を読んでいた。
ホワイト様が出演していた演劇は『勇者シュナウザーと姫の恋』と言い、勇者と姫の初恋にスポットライトを当てて、甘く、そして少しだけの切なさをスパイスしている。
『勇者シュナウザーの冒険』の方は、仲間たちとの絆を描いた物語だ。
子ども向けで、冒険に焦点を当てた作品になっている。
世界とその中で暮らす様々な人々を知るのには、丁度いい教材だろう。
「何か飲む?」
彼女は本を机に置いて、僕に聞いた。
「ありがとう紅茶を、お願い」
「はいー」
「よいしょ」
マーストンがニンフを抱き上げると彼女の体重は軽い。
手がだらーんとなって、脱力してるはずが……肉をあまり食べていないからだろうか? 子どもはこんなものかはわからない。
――そもそも精霊は、霞を食べてる種類もいるらしいが、こんなものだろうか?
そう思いながら、階段をあがっていくと、すぐのニンフの部屋へ入る。
ぬいぐるみや色とりどりの服が、ベットの上に置かれぱなしなって、少しだけ乱雑と言っていいだろう。
マーストンの眉に、少し皺が刻まれる。
ニンフをベッドへ寝かしつけると、ニンフの下の洋服を引き抜き、クローゼットへとしまい始めた。
祖父の生きている時は、もう少し整理整頓が出来てたようだったのに。
涎をだちそうなほど、口元がだらしなくなった精霊を見下ろす。
「やはり契約……」
そうニンフを見るが、先ほどと寝ていた場所と違う……。
思いっきり斜めに彼女は寝ていた、ただ単に祖父の時には猫をかぶっていただけなのか?
そう首をひねりながら、彼は散らかった髪飾りなどを、片付けて部屋をでた。
◇◇◇◇◇
階段を降りると、お風呂からあがったのだろう、アレックスがダークエルフさんと話している。
「さき、俺たちがブルーノさんの家を通った時、マルロネが窓から顔を出していたんだ。俺たちが帰って来たのを喜んでくれたのはいいんだが……、ここで、泊まるってきかなったんだが、明日くらいにマルネロが泊っても大丈夫か?」
「いいですよ! ニンフちゃんと三人で寝ましょう」
「ニンフはな……、今回の馬車の旅の途中、俺のみぞおちに、かかと入れられたんだよな……。危険かもしれない」
頭をひねるアレックスを見て、フフフッと、笑いながらマーストンは廊下から姿を現した。
「アレックスすみません。寝相が悪いのは昔からなんで……、僕が幼い頃は祖父が、間で寝てくれたのですが……。ダークエルフさん紅茶いただきます」
そういうとトレイを膝の上に置いたダークエルフさんは、「はい、どうぞ」と、長椅子にアレックスと隣に座った、マーストンに微笑む。
「しかしニンフついてはあのままなのか?、俺が知っている精霊のニンフはもっと乙女という年頃だぞ?」
そう、アレックスが切り出して来た。
正直、彼はそこら辺については気にしないかと思っていた。
分け隔てなく受け入れる、そうなんだろうけど、共同生活をへて家族を心配というか、大事にするという心理になってきているかもしれない。
マーストンは紅茶の色と香り、そして味を楽しんだのちカップをソーサーへ置いた。
「話した事はあると思うのですが、僕が子どものころ僕を連れ去ったニンフは大人でした」
そう言うと、彼はダークエルフさんとアレックスの顔を見る。
彼らの表情は深い海の様に深く、なんでも受け入れてくれるようである。
◇◇◇◇
「僕の思い出の始まりは、夢の中の花畑のような場所で、花冠を作っていました。
彼女はとても知的なブラウンな瞳で僕を見ているので、誘拐というか、断りなく僕を連れ出しているとは思いませんでした。
夜になれば、暖かく燃えるたき火の前で、僕に膝枕をしてくれる彼女。
僕はそんな彼女の、とても長く豊かな金の髪を抱いてねたのです。
季節は夏、真夏の夜の夢、妖精たちのパーティーから外れた場所だったと思うのですが、祖父が来ました。
偶然? 必然かもしれません。両親とともに、僕の眠る焚火の前に現れ、いつも温和な祖父が烈火の様に怒っていました。
『お前は、絶対にゆるれない事をした! 召喚師の、モリッシャーの血の連なるものに、精霊が手を出すことは絶対に許されん!』
そう言う祖父の話を、彼女は全然聞いていませんでした。
両親に背中を支えられ、去ろうとする僕を追おうとして、祖父に背中を引っ張られ……。
彼女は後ろに倒れ込み、転んでしまったのです。
そんな事は、あの時の僕は許すことが出来ませんでした。
だから……、彼女の前に立ち、手を広げたのです。
『おじい様、やめてください。無抵抗な彼女にそんな事をするのは、絶対に間違っています』
そう叫んだんです。
ですが……、ニンフはやった事は子どもの誘拐です。決して許されることではありません。
10歳ほどだから、僕もある程度、精霊の知識を教え込まれていました。
ですが……、彼女はうーん、あの頃は神々しいほど、美しかったので僕は許しました。
祖父にも長い時間をかけ、そのことについて話し……。
そして『お前が彼女の責任を持てるのなら……』そういう祖父に、『うん大丈夫! 僕は将来の偉大なモリッシャーの召喚師として、彼女と共にあることを約束する!」
……そう威張って言ってはみたのですが、次の日彼女は、僕と同じ年頃になっているし、綺麗な優しいお姉さんが出来たと思った僕には、計り知れないショックでした。
だが、優しい祖父に戻った祖父は言うのです。
『マーストン、今のお前では彼女の力をを借りることは難しいだろう。お前が大きくなり、私から彼女を引き継ぐことが出来たなら、彼女、いや、この小さなニンフはきっとお前を助けてくれるだろう』
『わかりましたおじい様、僕はその姿をおじい様にお見せいたします!』
そう言ったのですが、約束は果たせず、祖父の死後、急に彼女は話せなくなりました。
たぶん、人魚と同じで、契約を引き継ぐために、彼女は声を……。
そして契約者は、海の魔女ではなく、偉大な召喚師だった祖父だと思います。
僕は祖父と交わした約束の、彼女を引き継ぐ事も、新たな契約についてもわからずじまいです。
ですが……、きっと、僕が死ぬ事態になったらきっとニンフ、彼女が困りますよね……。
困っています。僕が亡くなれば解除ならまだいいですが……。
しかし祖父もノームの様に、僕の子孫だよりだったら困りますよね……。そう思いませんか?」
珍しく、苛立ちを隠せないように彼は言った。
アレックスと、ダークエルフさんが顔を合わせた後、思い出したようにダークエルフさんはこちらを見た。
「私、長生きですから」
そう、胸を押さえて言ってくれた。
実はマーストンも、そんな下心がないわけではない。
――でも、僕は僕で頑張ろう。
そう思いながら、ダークエルフさんの入れてくれた紅茶のカップに、彼は手を伸ばした。
続く
見ていただきありがとうございます。
またどこかで。




