ノームと召喚されたノーム
今回から視点が少し変わりました。
一人称から、三人称一元になってます。様子見で、良かったらのちのちすべて修正するかもしれなません。
(単元)
(メモリアルでも、残す可能性もありまーす)
ゴツゴツとした岩の道をマーストンを乗せた馬車は進んで行く。
目の前に見えるのは、幾つもの煙を上げる黒い山。
その山は険しく、人の行く手を阻むようにそこにある。
行き着く先を見てみれば、マグマが半円を描いて地上へと落ちジュっと、音をあげた。
ほかにもどこらかしこで、ボォーンだったり、ジューッだったりと大地を焼く音がする。
御者席に座るマーストンはうっすらと汗をかき、体温の上昇を感じていた。
「あれは?」
さすがに鉄の鎧は脱ぎすて、皮の鎧を身につけたアレックスが、呟く。
その時、後ろから馬車の壁を叩く音がする。
「硫黄の匂い、マグマの燃え盛る匂いがする様になりましたね。ここから先は地下へ潜ります」
「あぁ…………、わかりました。道なりに行けばいいんですよね?」
「はい、右へとカーブします」
そう、商人は四角い窓から、目をギョロギョロさせて言った。
それにしてもこんな、岩肌ばかりで、何もないところからどうやって?
マートンが辺りを見渡すと、「あれだな」アレックスが指さし告げたのは、馬車置き場の様な、屋根と柱のみが立っている場所だった。
それを目視で確認したと思ったら、馬車は急カーブを曲がる事になる。
馬車が軋む様に、ガタガタと音をたて、馬は戸惑う様に足をその場で踏みならす。
アレックスが慌てる馬たちに合わせ、手綱を引いて行く。
それでやっと馬たちは少し落ち着きを取り戻す。そして慎重な綱さばきで彼はそのカーブを少しずつ進んで行く。
「うーん、馬は繊細だ。こんな土地に何日も置いて大丈夫だろうか?」
「ノームは精霊の中では実直で温和の方と聞くし、商談も早く終わるんじゃないかな?」
「そうだといいが、マートンの契約の事もある」
「うーん、そうだね。だけど契約は相性だから、今回は様子見って思っておくよ」
そう言ったマーストンは、まわりの風景を見る。
こんな赤く荒れた大地に住む彼らは、きっと我慢強く、慎重でもあるだろう。
…………何故か、ダメな理由ばかり探しているなぁー。
マーストンの緊張がおさまる事を待ってくれずに、ノームの住処の入り口は、目の前へと迫ってきている。
空気の入れ替えの為の設備だろうか? 辺りに幾つも筒がささっている。
中には、そこから煙がもうもうとあがっているものもある。
その煙は、溶岩の熱から起きる風にさらされ、山の向こうへと流れていっている。
そして入口へと辿り着いた。
それは大地の色と同じレンガで出来ており、そして道は地下へも長く続いているようだ。
それはゆっくりと地下へ潜るような傾斜が付けら、不思議と明るい地下へと続いていた。
暗いだろうその道を照らすもの、パンを変色させる、色とりどりのカビたちの様に見えるものたち。
今のマーストン達からはまだ見えないが、淡く光る様々な色合いのソレは、赤いレンガで作られたちょっとした広場の中まで、案内をするように続いている。
◇◇◇◇
5分? もしかしたら10分ほどの淡く、美しい光景を彼らは馬車で進んだ。
そしてとうとう広い空間が、見えるところまで来ていた。
「綺麗なもんだ」
「カビか、苔か? レンガの上にわざわざひいたのなら体に悪いものではないだろうが……」
話す内に、広場へ辿り着く。そこには幾つもの扉があるが、どれがどれかは皆目見当がつかない。
「そうだな。それにしてもこの広場、扉は開く気配はないなぁ……。彼に聞いてみるか」
ドンドン!
アレックスが馬車の壁を叩く。
「着きましたか?」
またブラウンの瞳がキョロキョロと動く。
「ああ、今、止めた。だが、馬車の音は響いているだろうが、扉は開く気配はない」
そう言うが返事はない。その変わり馬車の後方へ力加わったようだ。
少しだけ、振動を感じた。
「扉は溶岩対策だそうです。そしてこうやってトントンと、ノックすれば開けてくれます」
確かに目の前の商人のノックで、扉が開いた。
次の瞬間、アレックスは立ち上がり、馬を軽く足場にし、多くの槍の先の前に居る商人を突き飛ばしていた。
そして風の強化魔法は間に合ったようだ。
「待って! 双方待ってください!」
「わかっとる。だが、お前いったい、何回言えば用心棒に我らのことを伝えるのだ!」
そう、本の知識通りの小ささ、がっしりした体つき、そして髭、ノームが姿を現した。
その声を聞き、アレックスも剣をおさめ、楽しげに口元をゆるます。
「申し訳ない、先祖代々、商売相手でも全て信用する奴は大馬鹿だって家訓ありましてねー」
「お前らはいつでもそうだ。煙にまいたことばかりいいやがる」
そう言って、ノームは視線を馬車へ走らせ、マーストンをみたところで視線を止める。
「お前は……、モリッシャーなのか?」
「あ……お久しぶりです。うちの庭で一度」
マーストンはそう答えた。
◇◇◇◇
彼の脳裏には、家の庭先のロッキングチェアで、座りながら見た光景が頭の中に浮かぶ。
「マーストン、いいかい? ちゃんと座っているだよ」
そうマーストンと似た顔の祖父が言う。
彼は今のマーストンと同じような、色鮮やかな背広を身につけている。
「はい、わかりました。おじい様」
10歳を超えた頃のモーストンは、白いシャツ、吊り紐を肩にかけた黒い半ズボンを身につけ、ロッキングチェアの上にちょこんと座っている。
「では、行って来る」
祖父は優しく笑うと、芝生へと歩いて行く。
そして芝生の中央で立ち止まると、手を体の後ろに組み、声をあげる。
「来い! 地下の堅実な王へルモンド!」
そう言うと、土が波が空中で円を描き、その中心まで土で塗りつぶされる。
するとすぐに中心の土が波打つ、ドンドンドン、と音が響き、土が飛び散るようにこぼれ落ちる。
次の瞬間、すべての土が崩壊し、一部屋ほどの密度の土の精霊ノームが現れた。
彼が召喚師口をその金槌で開いたのだ。
そして登場した、地下の堅実な王へルモンドと呼ばれたノームは、肩に金槌をかけるように置いた。
「なんだ? モリッシャー、この家を竪穴住居でも、改造して欲しいのか?」
そう不満げに呟く。
「いやいや」祖父はそう言うと、小さな子どものマーストンの元へと歩みよる。
その間、ノームが訝しげに祖父を見ていた。
「おいで、マーストン」
祖父がそういうと、彼は両手で肘おきを掴み、ロッキングチェアから降りると、ふたたび肘おきを掴みつつ、心配そうに祖父を見た。
「大丈夫、彼は何もしないよ」
そう言って祖父は、優しく首をたてに振る。
マーストンの瞳は不安を映し出しながら、祖父を見ながらうなずき、彼らの元へと歩き出す。
風は、その様子を優しく見守る精霊と、老人の間を通り、彼らの視線の先に居る、小さな少年の髪を揺らし去って行く。
祖父の元へやって来たマーストンは、手をあそばせながらではあるが――。
「初めまして精霊さん、僕はマーストンです。これからよろしくお願いします」
「やぁー、初めましてモリッシャーの子どもよ。もし、お前が優秀な召喚師になれば、力を貸してやらんこともない。……これで、いいか?」
「あぁーふたりとも最高の挨拶だった。私が鼻が高いよ」
「モリッシャー、お前はじじぃになったな……、娘をあんなじゃじゃ馬に育てあげたんだ。苦労があっただろうなぁー」
そうノームは労っているのか、少し嫌味を言いたいのかわからないことを言う。
「お世話になっているみたいで、何よりだよ」
祖父がそう言うと、ノームは何とも言い難いような渋い顔をすると、「用はこれだけか?」と、呟いた。
「ああ、ありがとう」
その言葉と共に、ふたたびノームの前へ土による円が描かれる。
「相変わらずの無駄な装飾だな」
そうノームは呟くが、その前をふたたぶ土が覆った。
今度は真上からぽろぽろぽろと土の崩壊が起き、こぼれた土が地面へ辿り着く事はなく消え――。
そして最後には、もと通りの緑の芝生の庭だけが残った。
「どうだいマーストン?」
「なんだか、とても偉大で感動的でした。僕もおじい様のようになりたいです……」
そう言った孫と祖父。その祖父が庭の向こうの草陰に目を向けると、金色の髪の少女が立っている。
「ニンフ……」
マーストンは祖父の後ろへ隠れてしまう。
「もう、怖くないんだよ」
そう祖父がそう言い、少女に手を伸ばすと、少女は祖父を挟み反対側へ、マーストンの様子を探るように歩いて行き。
そして祖父の体から、少しだけ顔をだし、「マーストン、おはよう」と言った。
続く
見ていただきありがとうございます。
またどこかへ。




