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彼、彼女たちの結果

 ギルドの扉を開けると、ジューシーな肉の焼ける匂いがすぐに漂って来る。

 肉料理を頬張り、楽し気な人の声も聞こえて来た。


「マーストン!? お前……」


 聞きなれた声に顔を向けると、机に握りこぶしをつけ、こちらを見ているレーソンの姿があった。


 さすがに、この再会は予想していなかったので、少し頭を掻き、何をどうするべきか考えた。


 しかし頭の中は空白のまま、「お久しぶりです」そう言うしかなかった。


 彼は立ち上がると、こちらへやって来て、僕の腕を掴む。

 ごつごつとした手に握られた腕が、少しずつ痛みだしてきた。


 その手に、ニンフが手刀をパーンとあびせるが、レイソンは静かに彼女を見つめるだけで、別段痛さを訴えもしてこず。


「連れ歩いているのか?!」


 そう目を見開いて僕に対し言った後、視線はダークエルフさんに移った。


「ダークエルフまで……」

 彼は開いた口がふさがらないと、いう感じで僕らを見ている。


「マーストン、久しぶり~」

「おひさしぶりです」


 レイソンの事を見守っていたのだろう、彼の妹、クリシアの猫の目のようなアーモンドの瞳が僕を見ながら手を振っている。


 彼女の振った手の奥から、ケイトが顔を覗かせて、僕に頭をさげた。


 予想外だらけのレイソンの言動に、思わず動けなくなっていた僕もやっと口を開く。


「今は、彼女たちと一緒に組んでいますが、だからと言って、僕と同じパーティーだっただけで、僕と同じように彼女たちを扱うのはどうかと思いますよ」



「お前は相変わらず、鼻をつまんだような、わかりにくい物の言い方だな?」


 そう言ってやっと僕の腕を、彼は話す。



「おにいちゃん何言っているの? チトセも言ってたじゃん。もうちょっと賢くいこうよ、ね?」


 クリシアが僕らの間に入る。

 彼女は、兄にだいたいのことは従うと思っていたので、少しだけ驚いた。


「俺がマーストンと今日、会ってから今まで、正しくない事を言ったか? 本当のことしか言ってない」


「あ……、正しいとかは、……もう!」


 やって来たクリシアに止められ、そう言った矛先はこっちに来たようで、先ほどよりその瞳の力は鋭く、研磨されていた。


 ――これは何を言っても火に油を注ぐだけだな。


「俺のパーティーメンバーが、よその知らない奴に因縁を付けられた事と比べれば、マーストンの言い方にはまったく気にならない。だから邪魔だし消えてくれないか?」


 アレックスが僕らの間に立った。彼は背が高い方なので、威圧するのに十分だったようだ。レイソンが一歩下がった。


 そしてダークエルフさんとニンフも僕らの間へと立つ。


「アレックス、……ありがとう。みんなも」


「俺は別に、因縁をつけているつもりはない。そう見えたなら、ヒーラーが見つからないと言うありきたりな理由で少し苛立っているから、そう見えるんだろう? 料理も冷める事だしここは引くが、俺とマーティンは長いこと組んで、お前にはわからないこともあるんだよとだけ言っておく。じゃーな」


「レイソン、すまない。僕からはもう話はないんだ。 それだけだ。さようなら」


 そう言ったが、彼は振り返りもしなかった。


「マーストン、バイバイ」

「あの……マーストン、私たち友だち……だったかな?」


「ケイト……」

 髪の色と同じタンポポや、向日葵の様な彼女が、胸に手を置き、僕に問いかけている。


「あら、ケイト……、私とマーストンは友だちなのにー、ケイトは違うんだ」

「えぇー、マーストン……」


 ――決定は僕に委ねられているのか、居ないのか?

 そしてケイトは自分の言った事に、落ち込み下を向いてしまった。


「お前たち、いいから行くぞ。飯が冷える」


 しかし結局は、二人は、レーソン呼ばれて行ってしまった。


 ただ、クリシアが「置いて行ったくらいで、友だちやめるなんて言わないでよね!」と、言って去って行った。


 僕も彼女たちも、正しい冒険者だったあの頃、指揮系統はレイソンに統一されて、彼女たちはそこへ残っただけで、僕は違う仕組みの中を生きているだけ。


 ――そして結局、僕は一言も話さずじまいだ。


 彼らとの話の後、向かったギルドの受付のベンチは混んでいたが、なんとか空いている4人がけの席に座ることが出来た。


「で、マーストンは誰と友だちだったんだ」


 彼は、背もたれの下の方に手を置き、前を向いて聞いた。


「僕は昔の名家って家に生まれて、幼い時は、誰からも頼られる家の子どもって、立ち位置に落ちつきました。その村を出て……、変われると思いましたが、彼らとは忙し過ぎて、話せない日々を過ごして来たので、憧れていた友だちって奴も、曖昧になっていって、そしてアレックスとダークエルフさんは友だちで、ニンフは家族って、今そう決めました」


「まぁ、友達で、親友だな」

「友だち♪」


「でも、彼らには置いて行かれてるので、正直わかりません。やっぱり、僕には友だちは難しすぎます」


「まぁ、人それぞれだしな、じゃー彼女は?」

「頼れる仕事のパートナですかね」


 そう言うと、聞こえていたかのように、チトセはこっちを向き、「世界樹の葉の皆さん早く来てください! お知らせしたい事があるんです!」


 開口一番、そう大きな声を張り上げた!


 僕らは多くの人が座っているその場所から、ふたたび歩いてベンチの列から抜け、カウンターへ行くと、その上には上等の紙が伏せられて置いてある。


「もー遅いですよ!」

「いや、遅くないだろう?」


「こんにちは、チトセ」

「「こんにちは」」


 そして挨拶すると彼女は、すかさず上等な紙をひっくり返して、その賞状を見せて来る。


「おぉーCランクの免許の紙か!」


「はい! この賞状にはあまり価値がないですけど、部屋のインテリアとして持て囃される賞状です! 普段は進級は時間がかかるのですが、ギルドマスターと、ラドルさんからの推薦だったのすぐに、審査が通りましたよ」


「夢のない事、言うなよチトセ―! しかし一つ乗り越えはしたがこれからだ」


「僕は、冒険者になって2年経ってしまったと言うべきか、やっと取れたと喜ぶべきか少し複雑ですね。やはり正攻法の、同じランクのパーティーメンバーだと、ランクアップは早いんですね……」


 少し感慨深すぎて、僕の思考はぐちゃぐちゃになりつつあった。


「アレックスさんの夢はこちらで味わってください。はい、筆記用の魔法の羽ペンを出すので、この2枚、ギルドで保管用の用紙と、ギルドカードに書きつけてくださいね」


 そう言うが早いか、チトセの手の間から羽ペンが構築され、名前を呼ばれた人物が、手の中で浮いてる羽ペンを回収する。


 そしてそれを握るだけで、指定された2つの場所に書きつけていってくれる。


「わぁ~」

「これは!?」


 カードには各自ステータス画面があるが、魔法なのどは確定するまで文字化けしていることも良くある。エラーなのか何なのか、解消されない不安を抱えながら僕らは見つめている。


 そして僕は祖父の契約を継続している。ニンフは文字化けの嵐になっている。


「とにかく、おめでとうごます」


 そうチトセが言うと、待合室の人々から拍手が飛んでくる。


「「ありがとうございます」」


 そんなレストランで始まる、ウェートレスさんの誕生日の歌の様な、拍手が待合室に響いたのだった。


 しかし――。


「えっ? ホワイトさんからの書類が、まだ、来てないんですか!?」


 そんな事も起こる。


 続く



見てくださりありがとうございます。


また、どこかで。

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