迷宮攻略 1
地下空洞は魔界とこの世界では呼ばれている。
そこへと道がつながってしまう。迷宮の時期が幕開けとなったらしい。
そして僕は底へと落ちる。
そこへ仲間のニンフ、アレックスとダークエルフさんが現れたのだった。
「元気そうだな?」
「ニンフちゃん!」
アレックスは胡坐をかいて座る僕らを、上から眺めている。
ダークエルフさんはニンフの首に、手をまわし抱きしめている。、
その背中をニンフが擦って、おねぇさんのようだ。
そして僕はふたりの重さで、少しだけ足が痺れていた。
「ふたりとも、お世話をかけます。ここの階層の敵はオオカミです。この足元の土台の魔法の効果も重さ的に、そろそろもたなくなってきました。これより魔法を一斉に解除します。いいですか?」
「ああ、頼む」
僕がそう言うと、ダークエルフさんは立ち上がり、ニンフの両腕を引っ張り立たせる。
そして僕は少しよろけながら、冷たい迷宮の壁に、手を付き立ち上がった。
――パチン!
「解除!」
そう言うと地面が崩れ、アレックスとダークエルフさんは、魔物前へと走り込む。
シュッ――。
そう音がするぐらいの早で、ふたりの剣の軌道が、オオカミのしなやかな体へと走った。
そして切られたそれは、煙のように消えていく。
その内、ダークエルフさんが切ったオオカミの居た場所には、カラーンと、無機質な音をたて何かが落ちた。
それは晴れた日の、空の色をした魔石だった。
そしてすぐに、上層部から訪れた場所の、地面でウィーン音がする。
青白い炎で、最初に円が、そして最後に魔法陣という姿が残った。
「終わりましたね」
「ああ、次へ行くか?」
「いきましょう!」
初心者のダークエルフさんの明るい笑顔から出た言葉に、アレックスがその赤い髪をかきあげながら、待ったをかけた。
「まず、現状報告からだ」
「よいしょっと」
その声に振り返ると、黒のギルドの事務の制服を着た、ラドルさんが立っていた。
「えっと……」
「世界樹の葉です」
「そうそう、そうでした。皆さん、迷宮へ潜った回数は……」
「「ないです」」
「はい、承知いたしました。では、まず、念のための帰還用護符を配ります」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう」
「助かる」
ラドルさんから受け取ったのは、コッペパンほどの大きさの、紙の護符だった。
「彼女は本物?」
「本物です。幼い頃からいるので」
「そうかー、では、お嬢さんにも1枚」
「ありがとうございます」
僕がそう言うと、ニンフは腕に力を入れて、のばしながらお辞儀をした。
「いいえ、この護符は、破ると効果を発揮します。各自すぐ出せる場所であり、破損の少ない場所でおねがいします」
「「はい」」
「進んでいいのか?」
「はい、問題ありません」
「よっと」と、声とともに今度は金髪の父と同じ年ごとの男性が、迷宮の入り口を抜けやって来た。
「ギルドマスターまで、来てしまったんですか?」
「チトセがいいって言うから」
「椅子にどっしり構えて待つのが、ギルドマスターの仕事だと思うですけど……」
「では、じっくり見る事にする。行ってくれ」
そう言ってギルドマスター、確か書類にはスザークと明記されていたはず、その彼はそう言ったのだった。
「では、僕からいきます。風の精霊の加護を」
そう言って僕は魔法陣の中へ飛び込んだ。
一階下の階層、普通に戦うと負けるので、初手に勝負をかける。
「来てください、水の乙女ウンディーネ!」
そう言うと、天井から水が滴り落ちる。
水の量が、雨の量まで増えると、美しい水色の髪の乙女が現れ、手を上げると重い水量のある刃物が、1匹目のオオカミ男を袈裟斬りにしてしまった。
そして、次々とオオカミ男の体が、水によって崩れ落ちる。
ウンディーネがこの階層のすべてのオオカミ男を、地面に横たえさせず飛散させてしまった。
そして彼女はこちらへ向く。
「ありが…………あぁ!?」
「えっ?…………あぁ……すみません、勝手に体が動きました」
僕の目の前で、ウンディーネは、僕の次に降りて来たらしい、ラドルさんの手に持った光の鞭によって、切り刻まれてしまった。
彼女の体から、水が流れだし、それさえも飛散してしまったのだ。
「うぅ、召喚された生き物って、こちらのかりそめの命が破壊されると、機嫌が悪くなってしまいます。悪くすると来てくれないので、僕がいる時は気を付けてくださいね」
「わかってはいたんですが……、いえ、すみませんでした」
彼が頭を下げている所に、アレックス達がやって来る。
「うん?、どうした?」
「私がマーストンの召喚のした、ウンディーネを切ってしまったんです」
「マーストンの水の大精霊を切るなんて凄いな。あれって結構、もとの精霊の性能を保っていると、思っていたが……」
「はい、そういう面で触手が、動いてしまいました」
「だが、まだまだ甘いってこったな」
そう、ギルドマスターが話を締める。
僕はそれを見ながら、薬草を食べていた。
「お恥ずかしい」
「では、次は3層へは俺から行く、バックアップはダーク、頼む!」
そういと赤い髪をなびかせて、彼は魔法陣の輪の中へと消えて行った。
そしてダークエルフさん、僕へと輪の中へ進むと、誰かの黒い服の背中が僕の前に現れ、そして消えた。
それと同時、
ギラついた刃物が僕の胸、目掛けて飛んでくる。
「ストープ!」
その刃物に、光る鞭が絡みつき、ギリギリ生き残る事が出来た!?
それをにぎっていたはずのダークエルフさんは、アレックスにお腹を抱え込まれ、連続する爆発から逃げている。
ドン! ドン! ドン!
アレックスたちが追い詰められない内に、次の行動をしなければ。
「風の刃よ、切り刻め!」
真空をつくる事によって出来た風が、シュッ、シュッ、シュッと、敵を刻むはずが……、居るべき場所に居ない。
「マーストン、この魔法使いはどうやっているのか、空間を空間を飛んでいる」
「どうやってですか!?」
「わからない……同士討ちを誘われるから気をつけろ!」
そして次の瞬間、誰も居なかったはずの僕らの前方に、ローブと仮面の魔法使いは飛躍して、そこに居た。
そして次のモーションで、
僕らの居る方角へと魔法を撃つ!
赤く燃える炎の塊から、僕を入れた3本の腕が、防御壁を張る。
――致命的な攻撃は助けてくれる。しかし……ギルドの2人は完全に、練習を見に来た人になっているな。
そこで、僕らが突破できないと、魔法使いは諦めたのか、攻撃先は、アレックス、ダークエルフさんへと戻る。
「来てください、水の乙女ウンディーネ!」
そう……僕はウンディーネをふたたび呼ぶ。
その合間も見落とさないようで、魔法使いからの灼熱と言っていい、精度を上げた魔法が召喚途中の、ただの水の状態である、ウンデーネを貫通する。
しかし魔法は止まることなく、第2、第3の魔法が放たれている。
ウンディーネという大精霊という存在が、魔法使いを苛立たせるのだろうか?
その隙をついて、アレックスが切りつけたが、ローブが飛散しただけ。
「どういうことだ? 手ごたえがなかった?」
「ウンディーネ、霧雨を、出来たら色を付けて」
彼女はわずかにうなずき、霧の雨を迷宮の中へ降らせる。
そしてそれはピンク色だった。 さすが乙女です。
「お嬢さん、なにやっているんだ!? これは多分、苺ジュースじゃないぞ!」
「クライドさん、大丈夫ですよ。彼女の服が色が染まっていないので、光の加減でピンクなだけだと思います」
そう僕の後ろに居る、ギルド事務員とギルドマスターの会話が聞こえて来た。
――ニンフがほんとう、すみません。
そして突然の雨で、動きがより散漫になった、魔法使いにアレックスが切りかかる。
ザーン!
そう切りつけた彼の刃は、魔法使いを透明なガス状の何かへと変えた。
「ダークエルフさん! もやの中心に、微かに色づいた何かがあります。それを切ってください!」
その声が届く前に、ダークエルフさんは動き出していた。
パシャパシャと僅かな水を踏みわける、足音をだし引っ張られるように、正体不明のガスの中心を、
ザーン!、と、球体を切り分けたのだった。
気付くと、いつのまにかピンク色の雨は止んでおり、ウンディーネはこちらへ来ようとしないので、こちらから出向く。
「ウンディーネありがとうございます。先ほどは、すみませんでした」
そう言うと、ウンデーネは小さく首をふる。
そこへ、ニンフがやって来て手を取り合ってブーラ、ブーラしている。
「早熟なわりにまだ、下の階層があるようだな」
「でも、強くはなかったが結構な小賢しさだったので、もう次で終わりでは?」
「ですが、初見殺しなだけで、対策知ってしまえば、何とかなる敵ですし」
そうアレックス達が話している横で、ダークエルフは自分と同じように、ウンディーネを三つ編みにし始めている。
これは……ウンディーネも下の階層へ行く事に、決定してしまっているようだ。
「では、今度は俺の行く番か!」
ギルドマスターが、魔法陣の中へと消えて行った。
「ギルドランクの査定の終わったようですが、折角なら世界樹の葉の皆さんに、花をを持たせるべきなのに困ったものです」
そう言って、ギルド職員の彼は、マスターの事について嘆き、入っていった。
次が最後であるかもしれないが、ギルドランクの査定? いつの間にそんなことになっていたのだろう?
僕はそう思いながら、アレックスたちの後へと続いたのだった。
続く
見ていただきありがとうございます。
またどこかで!




