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後日、処理

 ホワイト様の劇を見てから、5日ほど経過していた。


 結局、オオカミはその後現れず、自治体が街から離れて住んでいる人々に、連絡用花火の配布と、柵の徹底が行われ、オオカミ事件は玉虫色であるが終止符が打たれることとなった。


「はーい! パーティーメンバーの皆さん集まってください」


 ギルド職員で、僕らのパーティーの担当のチトセが、ブラウンの髪の髪を風になびかせて畑の横に立っている。


 そして僕らは彼女のまわりに集まった。


「「おはようございます」」

「おはよう」

「…………」


「はい、おはようございまーす」


「でも、なんでうちの場所が集合場所なんだ?」


 僕らが集まったのは、僕らが借りている家の庭で、その端にはちゃっかりギルドの馬車まで置かれている。


「えへへ、東地区は、ここを出発点とした方が早いんですよね」

「ブルーノさんには許可取ったんですか?」


「事後報告ですけど、ブルーノさんも柵の希望者なので、快く貸してくれました」

「いいのか? それで」

「さあ? うちの田舎はそんなものでしたが」


「軍手ありますか?」


「あっ、僕もってますよ。はい……ってニンフ、軍手でお人形さん作らないで」


 そう言うと、ニンフはチトセの後ろまで行って、隠れてしまった。


「ニンフ! チトセ、すみません」


「いいのですよ。ニンフちゃんの説明欄を読みました。薬草は、凄い効果ですね。大事にしていきましょう」


 そう言ってマリーンルックの、胸の前で手をグウにしてポーズをとる。


 僕はヒーラー不足という現状を思い出し、返答に困った。

 そしてチトセの肩の上の指人形が、腕を組んでうなずいている。


「では、花火は全軒配布で、柵を作る場所は、書類にまるが付けられています。すべての家の柵を作りましたら、柵の無かった場所をふたたび回り、期限内だけだったら柵を作った場所と同じく✖とチェックしてくださーい。期限を過ぎていたら、私の用心棒として一緒に、御宅へ再度まいりましょう。以上ですが、わからない点ありますか?」


「作られていなかった家はどうするんだ?」

「知りません。ギルドが請け負ったのはここまでです」


「柵がないと、危険なのではないでしょうか?」

「それを言ったら、冒険者さん達の方がもっと危険なのでバックアップに全力を尽くします」


「あ、……そうですね」

「はい」

 チトセは、首を傾げて、明るい笑顔で笑った。


「では、………………」では、で、チトセは指を曲げ、顎の下に押し当てた格好で、僕らを見回した。


「皆さん、チームの名前決まってますか?」

「あぁ…………」


 パーティーを組む際に、チーム名を書く欄があったが、部屋の片づけをしたり、料理作っていたり、パーティーメンバーでの訓練を行う内に、すっかり忘れてしまっていた。


「あったな……」


 そんな時、一番自己主張の強いのがニンフさんで、チトセさんの肩の横で、指人形が薬草を持って立っている。


「ニンフ!」

「ニンフ、ちょっとこっちに来なさい」

「「どうしたんですか?」」


 僕らの慌てように、ダークエルフさんと、チトセは驚き、同時に、


「「どうしたんですか?」」


「え……っと、薬草で少し緑に」



 、ニンフの持つ指人形が、すこし緑色になっているのを二人に見せる。


「チトセさんの肩は、幸い汚れていないようですが、すみません」

「あー、大丈夫です。冒険者さんたちの命と違い、取り返しがつきますよ」


 そう言うチトセは案外、というか受付嬢がいつか行き着く、担当冒険者の死を乗り越え……、受付嬢をしているのかも知れない。


「では、結局、ニンフはどんな名前にしたいんだ? 薬草か?」


「薬草やパーティー、冒険者などありふれた名前はおすすめしません。『薬草の皆さんに、薬草の配布をお願いします!』って言うのはこちらから拒否しますし、長い名前は略されて自己紹介してこられ、書類を探したら全然違う名前でした。は勘弁ですから」


「はい……すみません……」


 チトセの剣幕ってほどではないが、今までの念がこもったような口振りに、なぜかアレックスが素直に謝っていた。


「あっ、そうだ! 『世界樹の葉』なんてどうでしょうか? ニンフちゃんの説明を読んだ時、世界樹の葉ようだなーって思ったんですよ! どうですか?」


 それを聞きニンフは、ブラウンの瞳を輝かせ、人形の手で、腕組みをして、うんうんとうなづく。


 そんな彼女の金色の髪へいろいろな角度から光が当たり、キラキラと光る。


「では『世界樹の葉』でいいよ! って人!」


「僕は名前付けるセンスが皆無なので……」

「いいと思います」

「いいぜ」


「はい、では世界樹の葉決定ってことで、今度、皆さんで身分証書き換えに来てください」

「これはいつもの様に、代表者が行くわけではないのか?」


「うーん、名前はよくわからない情熱で、勝手に変更届けを出してしまう方がいるんですよ。ですが1ヶ月は変えられない仕組みなので、そんなことが起きないようにってわけです」


「なるほど」


 そう言ったが、気付くと皆、顔を突き合わせて、その表情は読み取れない。

 僕も、そんなものかって感じだ。


「では、マーストンさんは私と一緒に、花火の配布お願いします」

「ニンフは連れて行っていいですか?」


 アレックスは危険を重視し、ダークエルフはニンフと一緒に居たいようだ。


「ニンフは、凄く歩くけど、大丈夫? アレックスと一緒に行ってその場所で座っている?」


 アレックスたちの前に立ち、切り替えの早いニンフは、こちらに手を振る。


「ふたりともお願いしてもいいですか? ニンフは基本は野良の精霊なので、そこで生きることが出来、現れるのも自由自在です。なので、気が付くと僕の側へ来てしまう可能性があります。居なくなっても平気なので、様子を見てください」


「それって、ニンフは万能なのか?」

「風が意思を持ったほどには、万能なのかもしれません」


「勝手に居なくなっちゃいけません」 

 そういわれ、ダークエルフさんの買ったばかりの魔法使いの服の胸元へ、ニンフさんは埋もれてしまっていく。


「ダークエルフさんお手柔らかに……」


 僕は焦るが、柔らかい口調を心掛け彼女に伝えた。

 そして出て来たニンフは、「フッ」そうフッって達観した顔をしていた。


「羨ましいな、このこの!」


 そうニンフに言うアレックスも、ちょっとしたセクハラだが……。

 チトセの顔を見ると、これは許されてます? 


 ちょっと遠くを見ている雰囲気もありますが、ギリギリセーフの様で安心……。


「マーストン様、パーティーメンバーのセクハラ、パワハラの講習会を暇な夜にやっておりますので、是非きてくださいね」


 ……駄目だった。


「はい、わかりました是非に」


「お願いします。マーストン様の説明欄にあった。レイソンさんが昨日、うちのギルドで登録手続きをされました。知識も武器となるので是非」


 そこで……僕は少しだけ呼吸を忘れそうになった。


 だから、小さなため息をついた。以前、僕の出した結論の意味はもうない。

 今、そんな気がしている。


 続く


見ていただきありがとうございます。


またどこかで!

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