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言葉の時代

 争いは、牙で決するものだった。それが、この世界の原則だった。地を揺るがす咆哮、獣人たちが牙を剥き、爪を振るう。狼、虎、鷲、熊、狐――あらゆる種が群れ、獣の力をもって支配し合った時代。


 ここは獣人たちの世界。人という種は存在せず、理よりも本能が支配していた。


 強き者が上に立ち、弱き者はただ従う――それが“当たり前”だった時代。焦土と化す集落、燃える樹海。交渉は砕け、言葉は無力だった。


 だが、牙は文明を育てなかった。血は歴史を繋がず、ただ命を奪った。そしてある時、誰かが気づいたのだ。“言葉”こそが、次の武器になると。


  祭壇の上、雄々しく咆哮する獣人。その口から放たれるのは、理路整然とした”言葉”だった。


 周囲の観衆が静まり、その言葉が“勝利”となって裁きを下す。そうして制定されたのが、《言論闘争法(げんろんとうそうほう)》。争いを“牙”から“言葉”へと置き換えた法の誕生だ。


 弁論で勝てば、それが正義となり――負ければ、どれだけ正しいことでも悪に変わる。


 光のような論理を振るう者たち「ロゴス」。

 情熱と魂で揺さぶる者たち「パトス」。

 威厳と人格を以って導く者たち「エトス」。


 三つの力が、“言葉の戦場”を支配する。ロゴス流、パトス流、エトス流、それぞれの流派が育った。


 今やこの世界における戦いのすべては、《咆論士(ほうろんし)》と呼ばれる弁論戦士(ディベータ―)たちに委ねられるようになった。


 だが、すべてが平等ではない。


 流派に属さねば、語る資格すら与えられぬ者もいる。声を持たぬ者たちが、静かに消えてゆく中――


 夕暮れの丘。ひとりの獣人が、拳を握り端末を胸に抱え、都市を見つめていた。


 彼の"言葉の戦い"が、世界を――変えていく。

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