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第三章 捜索〜現場捜索〜
午前5時。
樹海の入り口には、規制線が張られていた。
パトカーと数台のワゴン車が並び、警察官やレスキュー隊員が捜索の準備をしている。
「確認。連絡が取れていないのは四人」
「車両のナンバーから照会済み。昨日の午後、現地に入った記録がある」
捜査主任と思われる男が地図を広げる。
「問題は、そもそも“どこまで入ったか”だ」
隊員の一人が、立ち入り口近くの駐車スペースを指差す。
「この辺り、足跡が五人分。ところが奥の林道に残ってたのは三人分だけです」
「三人分……?全員一緒じゃなかったのか?」
「そこがまだ不明です。途中で別れた可能性も……」
警察犬の準備が整う。
担当者が手綱を握り、ゆっくりと森へ入っていく。
薄暗い木々の間を照らすライトが、次第に深い緑に呑まれていった。
「くれぐれも、無理はするな」
捜査主任の声が背後から届く。
樹海は、思っている以上に“人を拒む”。
その言葉の意味を、誰もがまだ知らなかった。