第四皿 『猫の妖術、冴えわたる』
屋根に登り、寝転がって陽を浴びる
欠伸が出て、眠くなる
何やら下のほうが騒がしい
道具屋が、珍しい物でも仕入れたのか
《クロ 道具屋には、入った事がなかったな 行って見るか》
「おやおや お足はあるのかい?」
《金は、、無いが 見るだけで良い》
「そうだね 何か面白い物でも 見れれば良し」
屋根から飛び降り、ひらりと着地
道具屋の前を通ると、扉が閉まっている
道具屋の周りを、ぐるりと周り
何処か開いてやしないかと探してみるが
どこも開いてない。
《ん〜 困ったな、、 これじゃ入れない》
「入れるさ 化けてあげるよ」
《本当か! そりゃありがたい!》
「おやおや まるで子供だねぇ」
私はくすりと笑った、道具屋の裏へ行き
口から白い霧を吹く
白い霧が身体を覆うと、人の姿になった
見た目は、黒髪の猫毛、身長は170ほどの痩せ型の男性
ちりめん黒の袷、焦げ茶帯、黒羽織、紐は黒い平打ち
青年の姿になるのも、久方ぶりだ
《おお! なかなか粋だな》
「ふふ 嬉しいことを言うね」
私は足もとに落ちている枯れ葉を拾い
懐へ入れ、道具屋に入った
「いらっしゃい! お? 珍しい服を着てるね 異国の方かい?」
「ええ 日ノ本から来てねぇ ちょいと賑やかだったものだから 何か面白い物でもありゃしないかと 思ってねぇ」
「ヒノモト? 聞いたことないが まあいい ゆっくり見てって下さい」
「そうさせてもらうよ」
道具屋の中を見て回った、店の奥へ行くと
円柱状の小さい鳥カゴに、何かが入っていた
《なあ こいつは何だ? 羽根の生えた人間? 小さいな》
「、、(本当だね 羽根を切られているのは 呪術では縛れないからか。 もしくは 呪術では死んでしまうからだろうか)」
そこには、透明な羽根を生やした、小さい人がいた
羽根を半分切られ、飛べない様子でいる
「ご主人 これは何かな」
「ええこれは 妖精ですよ なんでも幸運を呼ぶって噂の品でね さっき入って来たばかりでして」
「へえ、、 幸運ねぇ、、」
《、、これだから人間は そんなんで幸運が来るもんか》
「ふふっ ご主人、これはいくらだい?」
「ええ、ちょいと値が張りますがね 金貨2枚と銀貨8枚、もしくは銀貨28枚です」
「では これで」
私は懐から3枚の枯れ葉を出し、店主に渡した
「なっ! 金貨3枚! は、はいたしかに! で、ではお釣りを」
「いや、お釣りは要らないよ」
私は妖精の入った鳥カゴを持ち、店を出た
「ちょ、お客さん!、、、、さっそく幸運が来た」
それから少し歩き、池に着いた
そこでカゴを開け、妖精と呼ばれる生き物を外に出し
私はふうっと息を吐いて元の姿に戻った
《クロ、、こいつどうする》
「そうだね 怪我をしているから 治そうかね」
私は、二尾の先から白い炎を出し、妖精の羽根に当てた
「祓え給え清め給え」
妖精の羽根が燃え、次第に羽根が、元の状態へ戻っていく
《おお 羽根が生えた》
「ふふ 良かったねぇ」
妖精は何も言わず、驚いている
何度も自分の背中を確認しては
くるくると羽根を追いかけている
すると妖精は、大変喜んだ様子で
円を描きながら空を飛び
何処かへ飛んで行った、、
「飛んで行ってしまったね」
《ああ 》
「ふふふっ 」
《どうした?》
「いやなに、、 幸運を呼ぶ妖精が 枯れ葉になって さぞ店主は驚くだろうとね ふふっ」
《ははっ そりゃ とんだ幸運だな!》
猫の目に 店主騙され 大金の
枯れ葉と見えて 驚かれぬる