第二十四葉 『増す税金と、影響』
宿屋へ着いても、トレイスの元気がない
オニがトレイスに話を聞いてみた、、
《ウェアウルフだけの国ぃ!!??》
「そうだ そんな話聞かされたらテンション下がるぅ〜」
《獣人を引き渡したら グリムザールの人間と、この国の獣人が殺される、、 でも、それはグリムザールが勝てればの話だろ? 勝てるのか? 》
「はぁ〜、、この国には聖騎士が居るんだぞ わかるか?」
《ん? なおさらグリムザールに勝ち目ねぇじゃん》
「はぁ〜、、聖騎士ならたぶん、、獣人を差し出す そうすりゃあ、この国は、獣人もウェアウルフも居ない国に早変わりだ 両者win-winだ」
《でもこの国は、グリムザールの申し出を断ったから戦になるんだろ?》
「いやだからな? こういう時は、一応体裁を整えるんだよ
ここは共和制の国だぞ? 国民を渡すとなると支持率に響くだろ 戦争になったらわざと負けるか もしくは戦争直前で交渉してもいい
聖騎士の権力は絶大だ、『勝つ』『負ける』『交渉』ってカード握ってんのは聖騎士なの 昼間見ただろ? アレが獣人のために戦うと思うか? 『勝つ』なんて選ぶわけねぇだろ?」
《たしかに、聖騎士が亜人に肩入れするとは思えねぇ でも、獣人が素直にグリムザールに出向くとも考えられねえんだが》
「い〜や 獣人が出向く必要ないんだ」
《へ? 》
「獣人に変身したウェアウルフが、グリムザールに出向くだけでいい グリムザールの国民は獣人が来たと思うだろ その後は、人間だけ殺せばいい それに、獣人は他の国では差別の対象だ 行くとこなんかねーよ 革命起こそうにも相手は聖騎士だ めんどくせぇ」
私は口を挟む
「トレイス、考え過ぎてはいけないよ まだそうとは決まってはいないからねぇ グリムザールの思惑なんぞ まだわからないないのだから」
「まぁ そりゃそうだな ちょっと考え過ぎてたわ 気が楽になった」
ぽん吉が、さも名案かのように言った
「んじゃさ! そのグリムザールに行って確認しようぜ!」
「おいニーズ、、 誰に確認を取るんだ? 誰に!」
「え? だから、グリムザールの大統領だよ」
「お前、、バカだなぁ 会ってくれると思うか? あと初対面で『あんたウェアウルフだけの国作るって本当ぉ?』って聞くのか? 会えねえし答えねえよ!」
「ああ! たしかに! わりい!」
「めんどくせぇ〜 クロ公、お前よく今まで旅して来れたな」
「ふふっ それがぽん吉の良い所さね」
「あ〜めんどくせぇ 飯でも食うかな 」
《お前飯食うんだな》
「当たり前だろ! お前らがおかしいんだよ」
私達は一階へ下りる
店内には客が来ているようだ
「おやおや 客が来たじゃないか 良かったねぇ」
《なんか変な格好だな 武装してるのか?》
「めんどくせぇ、、 ありゃどっかの旧領地から来た兵士だな」
「旧領地、、戦争が近いというのは本当なんだねぇ」
「、、(兵士か! でもなんか装備が古めかしいな)」
「そりゃ 昔と違って治めてんのが議員だからな ガキの頃から教育されてきた貴族と、そうじゃない人間とでは 税金を使う才能が違う それが見た目に出る これが作戦だったら切れ者だな」
「なるほどねぇ ところで何を食べに行くんだい?」
「セレンディアっていやぁ アレだな」
《アレ?》
「、、(なんだ!? 美味いのか!? 俺も食う!)」
私達は、トレイスと酒場へ向かった
「酒場かい? おや また兵士がいるね 今度は新しい装備の」
「ああ 別の旧領地から来たんだな 金の使い方は議員による 武器に金使う奴もいるだろ ま、兵士の教育がどうかは知らんがな 見る限りじゃ新品だから、訓練してんのか疑問だね」
狼の獣人の女性店員が話しかけてくる
「いらっしゃいませ! ご注文は?」
「そうだな ビールと、、 アレ、あるかい?」
トレイスは親指と人差し指で輪を作り額にあてた
「おお! お客さん、通ですねぇ ありますよ!」
「んじゃ ソレちょ〜だい 」
「はい! かしこまりましたぁ 店長〜! ビールと『キュクロス・ゴート』お願いしま〜す!」
《キュクロス・ゴート? なんだそりゃ》
「ん〜、、 見たらわかる」
しばらくして
店員が息を止めながらビールと皿を持って来た
その皿には白くて丸い物が乗っている
「トレイス、、 これはなんだい? 酷い匂いがするのだが」
「これはキュクロス・ゴート 山羊のチーズだ」
《山羊のチーズでも ここまで臭くねぇだろ、、》
「、、(俺、、やっぱいいや)」
トレイスが笑っている
「たっははは 獣には無理だろうな こいつはサイクロプスが洞窟の中で熟成させた食い物だ 人間でも食う奴は少ない」
《サイクロプスって鍛冶師じゃねえのか》
「俺は少し事情があって鍛冶師になったからな いや〜 それにしてもキッツいぜ たっははは」
《お前もキツいんかい!》
店内で兵士達が話をしている
「なあ、、まだ戦争は始まらねぇんだろ? 」
「ああ 一応待機してろってさ」
「一応も何も、、俺仕事あるのに 」
「仕方ねえだろ、聖騎士様の命令だ」
「ちゃんと給料出るよな?これ 」
「出るよ、心配すんな」
「俺、、戦争始めてなんだよなぁ、、 」
「俺は2回目だ 大丈夫だって聖騎士様が居るんだ」
「聖騎士様ってそんな強いのか? 」
「強いさ 素手で魔導砲を撃つくらいだ」
「へぇ そりゃ安心だな 」
「そうさ 聖騎士様が前線に立てばすぐ終わる」
「でも、、相手がウェアウルフなんだろ? 」
「まぁな 」
「じゃあ満月の夜に獣人になって魔法使うのか?」
「その可能性はあるな」
「うぇ〜、なんか気持ち悪いな 」
「大丈夫だよ 心配すんなって たかが獣だ」
トレイスがため息をつく
「はぁ〜、、めんどくせぇ話してやがる、、」
《聖騎士ってそんな強いんだな 一等星は弱かったが》
「そりゃお前 舐めプされてたんだろ お前ら猫だもん」
「たしかに 余裕ぶっていたねぇ」
《まあ 不意を撃った感はあったな》
私達は店内の様子を観察したり、話をしたりした
トレイスの食事が終わり、私達は宿屋へ帰った
そこで店主に声をかけられた
「あ、あの お客さん、、大変言いにくいんですが、、宿代を上げさせてもらいたいんです、、」
「はあ? なんでまたそんな めんどくせぇことを」
「それが、、はは、、税金が上がりましてねぇ うちもギリギリでして、、 申し訳ないですが、一晩銅貨18枚でお願いします」
「銅貨12枚が、たった数時間で18枚ねぇ、、それでも安いから良いけどよ わかったよ あと6枚渡しゃいいんだな?」
「はい! ありがとうございます!」
トレイスが金銭を支払い、店主はホッとしている様子だった