第二十三葉 『街に広がる、風評』
「あ〜 めんどくせぇ所見ちまったな」
「、、(なあ なんで見せしめにするんだ?)」
「おいおいニーズ 異種交配だぞ 気持ち悪いからに決まってんだろ」
「、、(な! トレイス!それは言い過ぎだぞ!)」
「なんで俺が怒鳴られなきゃいけねぇんだ めんどくせぇ じゃあ聞くけどな お前、蛇と出来るか? 」
「、、(出来るとは?)」
「蛇とまぐわって子を成せるかって聞いてんだよ」
「、、(ばばバカな事言うな! 気持ちの悪い!)」
「それが異種交配なんだよ 人間と獣人は 竜と蛇くらいの差がある 人間から見たら獣人は獣だ 獣人から見た人間だって別の生物だ そいつらからしたら、ウェアウルフの存在は不快の象徴だろ 見せしめにして忌避感を煽るのさ あと他のウェアウルフを追い出したり、入れなくしたり、、 はぁ〜、、 ニーズ、見てて辛いのは俺も一緒だ でもな、人間と獣人の本音を知らねえと何が起きてるかなんてわからねえだろ 現実を見ろ」
「、、(そ、そうか なんとなくわかった、、)」
私達は再び歩き出し、宿屋を探していた、、
トレイスが辺りを見渡した
「結構賑わってるな、この国は やっぱ獣人が多い」
《本当だな 前に俺らが居た国とは雰囲気が違うなクロ》
私も辺りを見渡す
「たしかにそうだね 前は皆首輪で縛られていたけれど」
「首輪? そりゃザルゴスって国だな まためんどくせぇ所に居たんだなぁ 奴隷が盛んな国だ たしか、、奴隷が全員開放されて暴れて逃げたって新聞で読んだな 」
《お! 思い出したぜ 面白かったよなクロ》
「ふふっ そうだね アレには笑ったよ」
トレイスが呆れた顔をしている
「またなんか めんどくせぇ事言ってら、、 忘れよ」
ぽん吉が首をかしげてトレイスに聞いた
「、、(ザルゴスってどういう国なんだ? 俺は知らん)」
「そうか アレも聖戦の後に出来た国だからなぁ 指導者が元奴隷商でな、領地を奪って立ち上げた独裁国家だ えらい政治がスムーズで成り上がったんだよ 人が信用出来ねえからって奴隷が多いんだわ」
《なるほどな 奴隷だらけだったもんな 兵士にも奴隷が居たし 協会にも居たな 》
街を歩いて数十分、宿屋に着いた
何やら古めかしい見た目だ
「トレイス ここにするのかい?」
「ん? ああ 良いだろこれで もう探すのめんどくせぇもん」
私達は宿屋に入った
そこには狼の獣人が店番をしている
どうやら獣人の店のようだ
獣人はうたた寝している
「ご主人 1部屋借りたいのだけれど いいかい?」
獣人は飛び起きて寝ぼけた様子だ
「へっ!? あ! お客様かい!? もちろん空いてますよ! どこでも好きな部屋使って下さい!」
「おや 他の客は居ないのかい?」
店主が落ち込む
「え、、ええ まあ、、 ちょっと古いですが! 大丈夫です! 泊まってってください!」
「、、(これはまいったねぇ、、 トレイス ここは払って貰えるかい?)」
「ええ!? お前さっき奢るって、、、あ、なんとなくわかった めんどくせぇな、お前 仕方ねぇ、払うよぉ 」
店主に元気が戻った
「まいど! 銅貨12枚です! あと申し訳ない、お釣りが無いので、、銅貨でお願いします へへへ」
「めんどくせぇ〜、、 ま、安いから良いけどよ はいよ」
「ありがとうございます! どうぞ、お2階へ!」
私達は2階へ上がり、部屋に着いた
「おいクロ公 お前、偽金使うつもりだっただろ」
「ふふっ えらい感がいいねぇ」
「わかるわ! 繁盛してねえ店で偽金は使えねぇよ」
《よし! これからどうする?》
「切り替えはえ〜 俺は武器屋に行くつもりだ」
「武器屋!? 俺も行く!」
「私も見てみたいね」
《俺も》
「めんどくせぇ〜 宿取る前に行っとけばよかった」
私達は武器屋へ向かった
中に入ると、壁には色々な盾が飾られていて
その下には剣や鎧、棚にはナイフや棒のような物
多種多様な装備が置いてあった
「、、(おお! ここが武器屋か! )」
《へえ なんか色々あるんだな》
「お前らは勝手に見てろ 俺はちょっと用がある」
そう言うと、トレイスは店主に話しかけた
「よう 最近の新作と トレンドを聞きたいんだが」
「いらっしゃい その聞き方だと あんたコレクターか鍛冶師かい?」
「ん まあな んで、なんか面白いの出たか? 噂でもいい」
「そうだな、、 星霊石を組み込んだガントレットなんてもんがあるぞ」
「へえ 何が出来るんだ?」
「手の平から魔法を集束して撃つんだ なんでも 杖がいらねぇってんで 新米の魔法使いに人気でよ 魔導書読みながら戦えるんだとよ 今の1番人気だ」
「へえ そりゃ良いじゃねえか 見せてくれ」
「いや うちの店には無い どうせすぐ売れなくなる」
「なんで」
「本が燃えるだろそんなもん 売り文句だけの詐欺だありゃ 新米にゃあ扱えねえさ」
「たっはははは そうだな! 手の平で魔法撃ってりゃ燃えるわな! たっはははは! あ待てよ ってことは燃えなくすりゃ良いのか いや、本が燃えないアイテム作れば相乗効果で両方売れるなぁ」
「作れるのか? お前さんに 名はなんて言うんだ」
「トレイス・アデルフォイだ」
「トレイス・アデルフォイ!? 有名人じゃねぇか なんでこんな所に」
「ちょっと野暮用でな 他になんかあるか? ただのニュースでもいい 人が困ってりゃヒントにもなる」
「他に、、ニュースねぇ あ!そうだ! 近々戦争があるぞ! 武器の発注掛けてたんだ すっかり忘れてた 取りに行かねぇと」
「へぇ 戦争ねぇ めんどくせぇな どことどこだ?」
「この国と 隣のグリムザールだよ 元獣人の国があった場所だ、そこが政権交代してから、こっちと揉めててな 獣人はグリムザールの邦人だから引き渡せって いったいいつの話してんだか 何百年も前の話だぞ、言いがかりだ」
「へぇ そんな事言われて困るのは獣人達だ なんでまたそんな事に」
「いやな ここだけの話、、 ちょっと耳貸しな」
「めんどくせぇな すぐ返せよ 」
300年ほど前、まだここが王国だった頃
グリムザールは、獣人国家ゴルザードって名前だった
ある時
ゴルザードに大量の魔術師の賊がやって来た
獣人達は必死で抵抗したが、獣人は魔法が使えない
鉄壁が売りの国だ、数十年は持ちこたえたが
武力が違いすぎる、国は乗っ取られた
その後、国名がグリムザールに変わった
魔術師達に改造されて、鉄壁の魔導要塞となった
んでグリムザールから、獣人がこの国に逃げて来た
そん時の王様は獣人嫌いじゃなかったから受け入れた
セレンディアは人間と獣人の国になった
グリムザールは獣人が消えて清々してたらしい
そっからずっと獣人嫌いの国だ
ところがだ、政権交代してから コロッと変わった
妙な事に、獣人を寄越せと言ってきた
こっからが商売仲間から聞いた噂んだがな?
どうやらその政権握ってんのがウェアウルフだって話なんだ、、
大統領含め部下全員が、ウェアウルフってな、、
「は? そいつはおかしいぜ ウェアウルフは獣人に嫌われてるはずだ 獣人を寄越せなんて言うか? プロパガンダだろそりゃ」
「いいや 本当の狙いは 獣人じゃなくて このセレンディアに居るウェアウルフだ」
「は? どういう事だ?」
「獣人が出ていくとなりゃあよ 何日も掛けてセレンディアから獣人達がゾロゾロと出ていくだろ? この国に居るウェアウルフが満月の夜に一緒に出てけばどうだ 見た目は獣人だ バレやしねえ 」
「その後はどうすんだよ グリムザールにいる人間と ここから来た獣人達は この国と状況変わらねぇじゃねぇか ウェアウルフの立場は何も変わらんぞ」
「だからよ グリムザールに居るウェアウルフは、人間として育って来たんだぞ? しかも政権を握るほどだ 何か気がつかねえか? 」
「あ 魔法が使えるな」
「そうなんだ! 獣人と一緒にウェアウルフを全員国に入れてよ 満月の夜に変身したらどうなる 獣人の腕力と機動力を持った魔術師の軍隊だ そいつらがグリムザールに居る人間と獣人を殺す そうすりゃ、あっという間にウェアウルフだけの国が出来上がる」
「おいおい 物騒な話だなそりゃ ホラー聞きに来たんじゃねぇんだぞ俺は」
「いやだからよ? 状況見て、ウェアウルフに好機が見えたらよ、武器でも売って貸し作ろうって話なんだ がはははは」
「めんどくせぇ事聞いちまったよ、、忘れよ」
「がははは 冗談だよ こっちには聖騎士様が居るんだ 負けるわけがねぇさ がはははは」
トレイスは話が終わると、店を出た
私達も後を追って店を出た
店前で、トレイスは浮かない顔をして
煙草を吸っていた、、