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回想、黒い影と紅い彼

 午後六時四十分。それは、僕が彼を殺す直前にちらりと見た公園の針が指し示していた時刻だ。去年の八月、中学校に入って初めての夏休みに僕は彼を殺した。


 時々テレビの中でアニメのキャラクターが魔法や超能力を使って大洪水を起こしたり、雷を落としたりして敵をやっつける、というシーンを見かけることがある。僕と大して年齢も違わないであろう彼や彼女はいとも簡単に自分に備わっている能力を駆使し、悪者を倒していくのだ。そしてそんなシーンを見かけた時、僕はいつもどうしようもないくらい激しい虚脱感に襲われた。

 初めてその声が聞こえたのは小学校四年生の時、三時間目の国語の時間だった。先生が教卓の前に立って教科書を読んでいる時、かすかにそれが聞こえたのである。初めは自分の気のせいだと思い特に意識することはなかった。しかしそれは徐々に先生の発する声とは全く別のものとして聞こえてくるようになり、そして先生が教科書を読み終えた次の瞬間、はっきりとその声は僕の耳に届いたのである。

 死にたい、と。もう嫌だ、限界だ、死にたい。これ以上は我慢できない。

 その声の暗く重い気配と意味する内容を認識した時、背中に嫌な汗がじわりとにじみ出た。ひんやりと冷たい手で首を静かに触られているような嫌な感覚を覚えた。教室の中を見回してみても、その声の発生源を見つけることが出来ない。

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