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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ほくほくエベレスト

作者: 田村楽太郎

 ただ、そのエベレストの雰囲気に流され、私の聖剣は震え立っていた。しかし、ただそびえたつそのエベレストは、私に甘えてきた。そうこうしていてはいけない。なんせそのエベレストは、時間がたてばただの丘だからだ。ほくほく暖かいエベレストの頂上を舐めまわす。その興奮は言うまでもない。エベレストに息を吹きかけてはいけないと思い息を殺していると、やや酸素不足になってきた。私は、精一杯そのほくほくとイカくさいにおいを吸い込み、エベレストを掃除する。駄菓子菓子、そのエベレストの登頂者は、プロの登山家ばかりだからか、荷物は少なく、さほどゴミはない。どこの登山家だろうか。ガムを吐き捨てている。これは掃除しなくては、と、極地を鬼のように舐めまわす。その途端!エベレストが揺れたではないか!私のにやにやは止まらなくなり、なにか凍えるようにエベレストは喘ぎだした。究極の自然が私に負けたとそう満足したころには、火山でないはずのエベレストが活性化し、白い溶岩を吐き出した。

 私に負けるなど、これはエベレストにとって恥である。この恥を究極のものにするため彼は、いささか顔を赤らめながら、

「おしおきしてください」

と、頼んできた。なんて都合の良い話か。それを逃さず私は立ち上がり、彼の上に雲のように座った。やがてその雲は降りていき、登頂付近だけ雲から突き出した。それはエベレストしかいない孤島の空間であり、エベレストの遥か空にある宇宙(ここでは大気圏内のもの)が、ざわめくようにエベレストの頂上付近にあつまり、エベレストの頂上からの景色は、雄大なものではなく、むしろ閉塞感のあるものだった。エベレストに覆いかぶさった雲は、次第に上下に動き出した。しかし、険しいはずのエベレストが、緩やかな顔に変わり始め、また噴火した。それとどうじに、エベレストが雲を抜け出し、しまいには富士山ほどの高さになってしまった。

 結局、世界一高い山はK2(現時点で世界で二番目に高い山)となり、名前はK2からエベレストセカンドになった。なぜだ、私ごときに負けたあの惨めなエベレストをかぶっているのだ!許せない。よし、あいつもしごいてやろう。

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