転生したら夜這いされました。
ボン・ノワール……。
嘗ては三世大公、つまり3代に渡り公爵のトップに任ぜられたという名家を超えた名家に生まれた男。
ゴン・ノワール将軍やジン・ノワールに比べて遥かに劣るとされたノワール家の残り滓にして恥晒しとされてきた……。
だが、今は違う! (ギュッ)
とまあ気合を入れた所で、休日であるが俺はスキルブックを読みつつ、魔導書にも目を通している。
読むだけでスキルを覚えられ、魔法もある程度使えるんだからゲームのせかいってすげー!
まあ、色々制限はあるんだけど選択肢を増やす事はパーティーの生存率を上げる事に直結する。
ダグラスさんとの戦いで俺が一番役立たずだと痛感しちゃったからな。
だからこうして本を読むだけでもしてるわけだな。幸いノワール家にはゴン兄さんが集めたスキルブックやジン姉さんが集めた魔導書がある。
なんとその数500冊! ある所にはあるんだなあ金と魔導書って。そんな事を考えながら読みふけっていると、控えめなノックと共に
「失礼します」と一人のメイドが現れた。
やはり、現れたのはミザリーちゃん。
「お食事をお持ち致しました」
「お! ありがとう!!」
そう言うと彼女はにこりと微笑み食事を置いていく。サンドイッチにサラダ、スープ、そしてデザートとしてフルーツ盛り合わせまで出てきた。
「いやあ〜、何だかごめんね。
俺のワガママで君達の仕事を増やしちゃってさ」
「いえいえ、私はボン様に尽くす為に存在するのです。どうぞお気になさらず……」
ミザリーちゃん健気すぎ天使か。
ホント、ボンの奴は何を考えてたんだろうな? こんな良い子を手放すなんて……死ねばいいのに。いや、ある意味俺が転生したから死んでいるのか。ざまあみろ。
「私はあの時、ボン様に救って頂いた身ですもの……此の位させて下さいませ。覚えていらっしゃいますか? あの日のこと?」
メカクレ状態から髪をかき上げてミザリーちゃんは尋ねてきた。ま、ま、まずい! ボン・ノワールの知識はあるが記憶はない! 人を呪わば穴二つ!
「う、うん勿論だよ!! あの日のことは決して忘れない!」
ああ! やってしまった口からでまかせ! 昔から俺はこうだ!
「ではお話頂けますか?」
俺の手を取りながらミザリーちゃんは懇願してくる。くっそ可愛い。
「えっと……その……」
「お願いします」
ああもう駄目だこれ断れないよ……。くそ! 設定資料集め! スリーサイズよりそういうキャラ設定をきちんと記載しろ!!
「そ、そうあれは確か奴隷市場だったかな……。
俺はそこに居たんだよね。そしてミザリーちゃんと出会ったんだよ。でもミザリーちゃんは凄い傷だらけで今にも死にそうな状態だったんだよね、それが本当に悲しくて……」
「……私もその時の記憶が曖昧だったのですが……。ボン様のお言葉を聞いて思い出しましたわ。そして救われましたの。貴方のおかげですわ」
あれ? はいとも、違いますとも言わないし何より瞳からハイライトが消えている……!? まずい、虎の尾の上でタップダンスしてしまったらしい。
「だっははは! それは俺が昔書いた俺とミザリーちゃんが主役の冒険小説のお話だったよね! ゴメンゴメン、勘違いしてた!」
「うふふ♪ そうでしたか♪ でも、もし私の願いが叶うならそんな世界で生きてみたかった……」
何だか寂しげにミザリーちゃんは儚げな雰囲気を放っている。これはチャンスなのではなかろうか?
「じゃあ俺と一緒に冒険しようぜ! 学園を卒業した後に見聞を広めるとかテキトーな事を言って世界中を旅しようじゃないか!!」
「え……? あっ……はい! 是非ご一緒させてください!!」
ミザリーちゃんは一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに嬉しそうに返事をした。ふ〜何とかなったかな。いや、ここで更にもう一手!
「あ、でもこの量だと食べきれないしさ、二人で食べない?」
「そんな……私はボン様の残したものを頂ければ十分です」
「まあまあ、いいからいいから」
生前のブラック企業で覚えたゴリ押しの魔法発動!
あとは『売上どうなってんだよ!』
効果は会社への忠誠減少。
まあ、そんな話はいいや。
「いやー、ミザリーちゃんのサンドイッチは世界一だな〜。こんな美味いサンドイッチなら毎日でも食べたいよ!」
学園のサンドイッチよりも実際旨いし嘘ではない。彼女は少し照れた様子で微笑む。うん、可愛いな。
「あの、ボン様……学園のあの女、ユーシャ・アベルとはどんな関係なんですか?」
「へっ? いや、ただのクラスメイトだけど?」
「本当ですか?」
「うん、本当」
「本当ですね?」
「うん……本当だよ」
「信じていいんですね?」
「……、勿論だよ!」
「そうですか、良かったです」
ふぅ〜、危なかった。しかし、ミザリーちゃんは原作通りヤンデレ属性持ちだったのか……。いや、他人に危害さえ加えなければ私はヤンデレであろうと一向に構わんッ! 実際ミザリーちゃんといると落ち着くし。
「ボン、ボン。降りてきなさい。
大事な話があります」
と、割りと良い雰囲気だったのにクジョの声が聞こえてきた。どーも実の母親も大概だったが毒親の空気がプンプンするんだよね。
「あら、奥様。ボン様は今お休みになられていますわ」
「構わないわ、起こしなさい。少しくらい体調が悪いといっても構いません」
「……かしこまりました」
ミザリーちゃんの印象が悪くなると拙いので俺は簡単に事情を説明した。すると彼女は納得したのか部屋を出ていく。
ー
「さて、ボン。先程の件ですが、お前には婚約者が出来ます。それも侯爵家のものです」
「……はあ」
いきなり言われても実感が湧かない。そもそも、まだ学生だしさ。
それに相手は誰なんだ? 正直、あんまし興味がない。
「何ですその気のない返事は。
お前はノワール家の一員である事を忘れてはいませんか? ゴンやジンには軍を掌握してもらい、宮中は私が押さえます。なのでお前にはせめて領地運営が出来るようになって貰わないと困ります。それと、婚約については既に決定事項なので変更はありません。これは命令ですよ」
……く、臭え! まさに悪意の塊! やはりドレイクスレイヤーに魅入られた作中一の悪女! (※個人の意見です)家族の絆やら愛情を期待した俺が間違っていた。俺は改めて、自分の置かれている立場を理解した。
「わかりました。では、その方の名前を教えてください」
「良いでしょう。お前に嫁ぐのは……、
オレサマ・ノツモリダ。ナニサマ・ノツモリダ侯爵の長女にして先のダンジョン調査の授業でも一位をとった才媛。正直な所お前には過ぎた女性ではありますが……」
マジか……マジか!? よりにもよってアイツ!?
調理スタッフに水ぶっかけて、ダンジョン調査では俺達を放ったらかして自分だけいい思いしようとした奴だよ!? ヤバい! ヤバいよ! 好きになれる要素が一切ないよ! 美人なのは解るけど!
「……何か不満があるようですね。お前にそんな資格があると思うのですか? ゴンには武で及ばず、ジンには魔術で及ばず、私に至ってはお前を産んでやった恩人だというのに……こういう事でしか役に立てぬのだからせめて世継位は仕込みなさい。早い内に」
産んでやったってアンタ……。この人にすれば子供ですら自分の欲望を満たすための材料なのか? 何というか、もう、ここまでくるといっそ清々しいな。
「……はい、母上。全ては母上の仰る通りに……」
「お待ち下さい! ボン様は決してクジョ様の仰るような役立たずではありません! 今日もゴン様に朝から鍛錬して頂き、昼からはジン様の魔導書を借りて勉強されていました!」
「それで?」
何て冷たい目だ。ゴン兄さんやジン姉さんがあまり家にいない理由が改めて理解できる。こんな女に干渉されまくったらボンがあんなに心のねじ曲がった男になるのも仕方ないね。
「とにかくボン。お前は明日から彼女に尽くしなさい。それがひいてはお前のためにもなるのですよ?」
「はい、母上。肝に命じておきます」
俺は恭しく返事をしたが肝に命じる(実行するとは言っていない)だけどネ!
「よろしい。では学園は退学なさい。必要なくなりましたから。これからは私がお前に領地経営や貴族として必要な知識を叩き込んであげましょう。そして、ゆくゆくは私の跡を継いでもらう。それがお前の生きる道です」
いや、それは拙い! 俺が退学したらユーシャちゃんも退学になる! そしたらユーシャちゃんは反乱軍に入らないから皇帝を倒せない!
つまりバッドエンド! ドレイクスレイヤーが復活して世界はリセットされて崩壊! そんなの絶対に嫌だ!!
「待ってください。学園は辞めたくありません」
「何故です?」
「学園で学ぶことは楽しいですし、皆と過ごす日々はとても素晴らしいものです。それを手放したくはないので御座います」
「馬鹿馬鹿しい。そんなものはただの幻想です。人は皆己の欲得のみで動き、強いものが現れればそれに対して主義や主張を投げ捨て蒙昧に従うもの。偶にそうではないと嘯くものがいますが、それは己が支配者となって他者を都合よく従属させたい欲望の満たすための口当たりの良い方便に過ぎません」
え? 何この人……? JRPGのラスボスか何か? いや、章ボスだったわ……。
「それでも私はこの世界が好きです。だからこそ、私はこの国の未来を守りたい。その為には力が必要なのです」
「力ならば領土を冨ませればそれで事足ります。子供の妄言など聞く耳を持ちません。それよりも早く退学を受け入れなさい」
「出来ません」
「貴様ぁッ!!」
クジョは顔を真っ赤に染めて激昂する。がすぐに
スン、と澄まし顔になる。感情のオンオフがはっきりしすぎていて怖い。同じ人間とは思えない。
「……お前がどうしてもと言うのなら私は構いません。ただし、その場合、お前は廃嫡し、我が家とは無関係の平民となります。お前の母は私である。それを忘れないように」
来るべきものが遂に来ちまった……。しかし、これで俺は『ノワール家』という後ろ盾を失う事になる。それは同時に俺にとって大きな弱みとなるだろう。だが……出来ない。それでも退学することはできない。
「母者。それは俺も看過できぬ」
その時、ゴン兄さんがトレーニングルームからこの部屋に入ってきた。
「お前には関係ない事です。下がりなさい」
「いや、関係ある。ボンが俺の弟である以上、家族の問題だ。ボン、お前は本当に家を捨ててまであの学園で学ぶ必要があるのか? お前が望むように生きられるのはここじゃないのか?」
「ゴン兄さん、そうかもしれないが今ここで逃げる訳にはいかないんだ」
俺はゴン兄さんの目をしっかりと見つめ返す。ゴン兄さんは暫くの間、黙っていたがやがてフゥと息を吐いて言った。
「……解った。そこまで言うのなら俺は何も言わない。だが母者。貴方がボンを廃嫡するならば俺はボン・ノワールという男を義弟として認めよう」
「ゴン、お前がボンに肩入れするのは勝手です。ですが、そのせいで我がノワール家の評価が落ちるのは避けねばなりません。解りませんか」
「俺には解らぬ。父上が亡くなる前の貴方はその様な奸物ではなかった筈。聞けば私が皇帝に求めた各領土の技術交流もふいにしたというではありませんか」
ゴン兄さんの言葉にクジョは顔をしかめていた。恐らくゴン兄さんは今、クジョに何かしらの疑念を抱いている。この世界は原作の流れから逸脱しつつあるのか……?
「辺境がやたらに交流すれば中央への畏敬が薄れ、叛乱の兆しが生まれます。お前にはそれが見えていないのですか?」
「叛乱の目を生み出しているのは貴方であろうが! 何故ゆえその身の肌には手をかけるのに帝国の肌に等しい辺境を軽んずるのです! これではまるで……」
ゴン兄さんはそこで言葉を詰まらせた。流石に「貴方は帝国を滅ぼすおつもりか」なんて言ったらシャレにならんからな。
「兄さん。母さん。二人共声が高すぎるよ。使用人達がすっかり怯えているじゃないか。国の大事を話す時はもっと声を潜め、人のいない所で話すべきだと思うけど?」
気まずい沈黙の後ジン姉さんがいつも通り、中性的でクールな声で場を制した。二人はハッとした表情を浮かべた後、気まずそうな顔になった。
クジョはバツが悪そうにしているし、ゴン兄さんも姉さんに言われて冷静さを取り戻したようだ。
「うむ……俺も少し言い過ぎた」
「母さん。ボンはもう少し学園に置いた方がいいと思うよ。ダグラスから聞いた話じゃあオレサマ嬢は人格に大分問題があり、ボンは優秀な学友に囲まれている。オレサマ君の人格の矯正とボンのコネクションを拡げていくのは投資として十分元は取れるさ」
「……そうですね。確かにジンの言うことも一理あります。いいでしょう。ボンは明日からも学園に通いなさい。但し、条件が一つ。学園にいる間は私とオレサマさんの命令に従いなさい。それが守れるならお前の自由を認めましょう」
「はい! ありがとうございます!」
おお……やっと俺の話に戻ってきた! スケールのデカい話をされて正直ついていけなかったぜ!
「では今日はこれ位にしましょう。皆、部屋に戻りなさい」
「はい! 失礼します」
こうして俺達はそれぞれの部屋に戻ろうとした時、ゴン兄さんは俺を呼び止めた。
「ボン。お前は大分変わったな」
ギクリ、と心臓が跳ね上がる。
まさかお前偽物だろ、切り捨てる(物理)なんて事はないだろうが、何言われるんだろう?
「お前があの学園に入学してからずっとお前の成長を見てきたが、今のお前の方が前より遥かに好ましいぞ。昔のお前はいじけて心のねじくれた尊大にみせかけた卑屈な子供だったが、今は違う。今のお前は真っ直ぐだ。自分の心に素直になり、正しいと信じたものの為に行動している。俺はそんなお前を誇りに思う」
「……ゴン兄さん」
「だが、あまり無茶をするんじゃないぞ。お前が傷つくのは俺も辛い」
「うん、心配してくれてありがとう」
「ああ。それと、母者はああ言っているが俺はお前の味方だ。何か困った事があったらいつでも頼ってくれ」
そう言ってゴン兄さんは去っていった。涙が止まらない。あそこまで俺を買ってくれているとは思わなかった。
「おい、泣いている場合じゃないだろう。男なら人前で泣くな」
「はい……」
とは言うが兄さんの目元だって潤んでいる。きっとゴン兄さんも感極まっているのだ。俺は感動の余韻に浸りつつ兄さんの背を見送る。
そして同じく見送ったジン姉さんは軍帽を被り直す。
「ボン。私はさっき母さんに投資と言ったがあれは気にしなくていい。学園生活はお前の社会勉強の月謝だ。赤字になっても構わない。だから好きにやりなさい。平民虐めや奴隷虐待より余程健全だからね。ただし、死ぬような真似だけはしないで」
「勿論だ。絶対に死なないし、死なせない。約束する」
「よろしい」
姉さんはそう言うと微笑んでからその場を去った。
クジョと俺は親子にはなれなかったがゴン兄さん、ジン姉さんとは家族になれた気がした。
ー
「……はあ〜、めっちゃ疲れた」
自室のベッドに横になってため息をつく。今日は色々な事があって精神的にかなり消耗してしまった。
しかしオレサマみたいな女が婚約者とかまじしんどい。ぴえんこえてぱおん。しかもオレサマは悪役令嬢だが原作にはいないキャラだ。
となると、転生者か……まさかドレイクスレイヤーがボンの代わりに生み出した悪しき存在とかそんな感じかな?
うーん、疲れているが目が冴えて眠ることもできない。
ここは一旦俺が覚えている【ドレイクユニバース】の情報をまとめよう。
ドレイクスレイヤーっていうのは世界を支える3竜、震天竜、動地竜、大海竜をも滅ぼす究極の剣。って言うのは表向き。真実はこの世界が卵から孵化した時の殻に纏わりついた旧き世界の悪意の化身。神を気取り殻である自らの本分に則り世界を箱庭のように管理しようとする存在なんだ。
まあ、悪意の化身だからこの世界を良いものにするつもりなんて初めからない。人々が憎み、妬んで、呪い合う負の感情を糧にして生存し、破綻したらリセットしてやり直し。
リセットした時の人々の失意や無念、絶望の感情を喰らい力を増す。
永久機関じみた化け物。それがドレイクスレイヤーの正体。
グッドエンドやトゥルーエンドでは倒せるけどその前に世界がリセットされる。つまり学食のおばちゃんや宿直のじいさん、家の使用人もミザリーちゃんも消滅してしまう。
悪いけど俺はあの人らが好きだからドレイクスレイヤーを倒すつもりなんてない。だから今の世界を存続させるなら皇帝「だけ」を倒して終わるノーマルエンドを狙うしかない。
幸いにもクジョには俺を始末する気はないみたいだし、しばらくはクジョに従って学園生活をエンジョイしつつユーシャちゃん達と俺は皇帝を打倒するための力を蓄える。これが当面の方針だな。
中心メンバーはゲームと同じか抑えた方がいいだろう。
だが、気が重い……。
ゴン兄さんは絶対皇帝を裏切らない。原作じゃボンが殺しているが、俺にはそんな事はできない。どうしたものか……。
くそ、クジョみたいなサイコ女じゃあるまいし何でこんな冷酷な事を考えなきゃならん……。何とか戦闘不能になってもらうか、何年かかっても説得するか……。ああもう、考えるのは止めだ! 明日も早い。寝るぞ! お休みなさい!!
コンコン、とその時控えめにノックされた。誰だ?
「どうぞ」
「夜分に申し訳ありません。少々宜しいでしょうか?」
「ああ、入っていいよ」
入ってきたのはミザリーちゃんだ。相変わらず美人だなあ。
「どうかしたのかい?」
「はい……」
何だか少し様子がおかしい。そわそわしているし、息が荒い。
「あの……私……」
「えっと……大丈夫? 具合でも悪いのか?」
「いえ、違うんです……」
「そうなの……?」
俺がそう聞くと彼女は俯いて黙ってしまった。これはどういう反応なんだろうか。もしかしてアレなのかな? そういうイベントか? いわゆる18禁的な? 果たして約得というか据え膳食わぬは男の恥と言うべきか。なにが国だよ! ク○ニしろオラァ! みたいな? って何考えとるんじゃ!
とセルフツッコミしている間にシュルシュル、とミザリーちゃんは服を脱ぎ始めた。
慣れている辺り、ボンとミザリーちゃんはそういう爛れた関係だったのか!?
いや、非処女だからディスク破壊するとか嘗ての掲示板に現れたミザリーちゃん過激派みたいな事はしないが。
「待った。ストップ。落ち着いてくれ。一体何をしようとしているのかな?」
「いつも通りのことを……。ずっと学園に通っていて貴方と会う機会がなかったので……」
そう言って顔を赤らめるミザリーちゃん。
で、デカメロン……。
コーラ瓶……。
雪○だいふく……。
彼女の下着姿のボディラインを上から順にイメージするとこうなる。このメイドさん……スケベすぎる! いかんいかん。落ち着け。クールになるんだ。
ここでいたたぎまぁず……ぎゃらぎゃらぎゃら!
なんて真似は妖怪腐れ外道!
ドレイクユニバースは全年齢!
海賊版は許されません!
が、我慢だ! む、無念だが……!
ドレイクスレイヤーに取り込まれるんじゃねーかって位無念だが我慢だ!
「ま、まずは服を着ようねミザリー君。俺は欲望のままに君を傷つけて生きるような真似はしたくない」
「そんな……傷つけるだなんて。私はボン様にならどんな事をされてもいいのです。今までの様に」
頬を染め、伏し目がちながらミザリーちゃんは健気に答える。クッソー!! あのクソ害悪遅延野郎! ミザリーちゃんにここまで愛されているなんて!
ムカついたので股間を自ら殴った!
「ぐぎょわああ!?」
「ぼ、ボン様!?」
し、死ぬ程痛い……! こんな時にクリティカルヒットだとぉ?
「だ、大丈夫だ。問題ない」
ですから縋りついてその下着から飛び出しそうなデカメロンを早く締まって……泣きそう。
「……そうなんですね。あのユーシャ・アベルとかいう女が貴方を惑わしているんですね」
ミザリーちゃんの目がハイライトオフになっている。やばい。悲しみの向こうへたどり着くわけにはいかない! 俺には必要なものはたくさんあるの! 壊れそうなものばかりかつ手に入れても無くしても気づきそうにないものばっかりだけど!
「いや、あの子とはそんなんじゃないから。俺にはミザリーちゃんだけさ」
「ボン様……嬉しい!」
そう言うとミザリーちゃんは俺の胸に抱きついてきた。ああ、柔らかい……いい匂いがする。あったかい……。が、耐える!
ここで手を出したらバッドエンド確定詰みセーブだと思え!
「私……はしたないですけど、もう我慢できません♥」
「脱がそうとしないでェ! 何でかなァ!」
ミザリーちゃんが俺のズボンに手をかけた瞬間、俺は渾身の力を振り絞って彼女を引き剥がす。あ、危なかったぜ。
「やっぱりあの女が忘れられないんですね……許せない。ボン様の輝かしい未来を奪ったあの女……許せない!」
ああ! 話がループする! この状況をどうする!? どうする!? どうする!? ある!
ミザリーちゃんに手を出さず、かつヤンデレモードを解除する手段が!
「ミザリー!」
「はいっ♥」
くそ……エロかわいい上に健気とか大悪魔か……! とにかく俺は話を続ける。
「ミザリーも学園に来てくれないか? クジョ……母上のお目付け役の名目でさ! それならミザリーも安心だろう?」
「はい! 行きます! 行きたいです! 絶対に行きます! 行かせてください!」
おお……! 瞳がパアッと輝いている。
可愛過ぎる……修正が必要だ。って何の話じゃ!
「そ、そうか。じゃあ明日迎えに行くから準備しておいてね」
「はい! お待ちしております! ここで!」
……チョットナニイッテルノカワカリマセンネ。
結果満面の笑みで添い寝してくるミザリーちゃんのせいで一睡もできなかった。
なにせむにっ♥むにっ♥とおっばいや太腿が当たるんですものネ!
ミザリーちゃんが学園に来たら俺は床で寝ることにしよう……身体と精神が持たんわ、マジで。