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34_目覚め

「…………あれ、ここって」


 視界の先は、この前泊まった宿と同じ天井。たしか自分はゼカの塔周辺にいたはずだが、その後どうやってここまで来たか覚えていない。

 体を起こし左右を見ると、エリーが大変驚いている姿が映った。


「ラック! どこか痛いとこない? お腹は空いてない? 熱は? 寒くない?」


 接近し、エリーの温い手がラックの額に触れる。顔も近い。


「うん、熱はないみたい。他はどう?」

「えっと、痛みもそこまでしないし寒くもないけど……お腹は空いたかも」

「そうよねっ。じゃあお店に頼んでご飯持ってくるからちょっと待っててね。ラックはゆっくり休んでて!」


 急いでエリーが部屋の外に出ると、室内はラック一人に。

 壁掛けの時計を見ると丁度お昼。


「エリーを助けに行ってから、まだ数時間しか経ってなかったのか……」


 時間の流れが遅く感じる。まるで長い夢を見ていたかのようだ。


「……ちょっと汗臭いな、体でも洗っておくか」


 気分転換も兼ね、ラックは浴室で汗を流す。

 意識も体もさっぱりしたところでエリーが戻ってきた。


「お待たせラック! たくさん作ってもらったからたっくさん食べてね!!」


 揚げたてほくほくの芋、焼き加減強めの肉、瑞々しい野菜がてんこ盛り。水もある。


「ありがとうエリー。こんなに食べちゃってもいいのかな」

「いいに決まってるわよっ。だってラック、丸一日眠ってたんだよ」

「丸一日かあそれなら仕方ない……え!?」


 一日の誤差があった。


「もしかして、失敗作を倒したあたりで」

「うん、突然ぐっすり眠っちゃったからびっくりしたわ。でも元気になってよかった」

「そっか、なんか迷惑かけちゃったな……そういえばピネスやレトはどうしてるんだ?」

「ピネスさん達はマーヤとレトを連れてギルドの本拠地に戻ったわ。本当はラックにも直接挨拶したかったみたいだけどいろいろ忙しいみたい。伝言だけもらったからそれだけ伝えるね」

「頼むよ」


 書き起こしたメモを広げ、エリーは音読する。


「まずはピネスさんからね……ラックへ。今回は大変お世話になった、本当にありがとう。できればきみやエリーもギルドに誘いたかったが、きみ達には目的があるからきっと断られるだろう。私は先に出発するが、またいつかきみ達とは会える気がする。ラック、これからもエリーを守ってあげてくれ。スキルがあってもなくても、きみは頼りになる男なのだから。それでは良い旅を……だって。なんだかピネスさんらしいねっ」

「むしろこっちのほうがお世話になりっぱなしだったよ」


 できれば直接お礼を言いたいぐらいだ。

 この広い世界で、また会える日がくるだろうか。


「というかさエリー。いまの口調はピネスの真似?」

「うんっ、似てる?」

「似せようとしてるのは伝わったよ」


 良し悪しはともかくその努力は認める。


「じゃあ次はマーヤね。やっほーラックくんっ、エリーちゃんをよろしくねーって」

「任せてくれよ」


 お互い顔合わせ程度でしかないので当たり障りのない内容だ。

 彼女の場合、エリーが長く話しているだろう。


「あとはレトね。じゃあな、だって」

「みじかっ」


 マーヤより少なくてちょっぴりさびしいラックであった。

 ふと、机に置いてある白い剣に気づく。これはもともとレトの所有物だが。


「あ、その剣はやるって。ラックが使ったほうが錆らせなくていいって言ってたよ」

「ほんと? ならありがたくもらっちゃおうかな」


 ご丁寧に鞘まで残してくれている。自分を認めてくれた証だろうかとラックは嬉しくなる。

 今度会うときは、きっと仲良くなれるだろう。


「最後はウォルスね、あのおっきな鳥」

「え、あの鳥からもあるの?」

「くるるるぴゅいぴゅいぴゅーい、だって」

「なに言ってるのかわからん」


 せめて翻訳してほしいが、エリーの鳴き真似がかわいかったのでよしとするラック。

 ご飯も食べ終わり、ラックはうんと伸びをする。


「ごちそーさまっ。そういやエリーはもう食べたの?」

「うんっ、わたしはラックが起きる前に食べちゃった」

「そうなんだ……じゃあ、早速出発しようか」


 ラックは立ち上がり、旅支度を始める。といってもあまり準備するものはないが。


「えっもう? 体調は本当に大丈夫なの?」


「へーきへーき」と軽く跳ね、全快だよとアピール。


「ステラピースも手に入れたしゼカの塔も壊したし、もうこの街に用はないよ。次のステラピースを探しにいこう」


 ステラピースに反応するエリー。

 一瞬だけ切なそうな表情を見せたが、すぐに笑顔を取り繕う。


「う、うん。わかったわ……」


 どうしてかエリーの元気がない。

 少し気がかりだが、二人は街をあとにした。

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