表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/35

20_決断

「……ラック、少し休むか? もうすぐで最後になるが」


 明らかに具合が悪そうなラックを見てか、ピネスは気遣うも。

 ラックは頬を叩いてお茶を一気飲みすると、盛大にむせた。


「おい、大丈夫か?」

「…………うん、だいじょーぶ、ありがとう……話を続けてくれないか」


 おかげですっきりした。いまは感傷に浸る場合ではないと気持ちを切り替える。

 優先すべきなのは、エリーだ。

 ピネスは本を閉じ、ラックの要望に応える。


「わかった。では話すが、この件についてはあまり知れ渡っていない。おそらくサニースターがあの子を守るため、意図的に隠していたと思うが……」

「あの子……じゃあ、やっぱり」


 憶測は当たっている。

 エリースターは、星の魔女サニースターの。


「サニースターには子どもがいたらしい。子どもに関しては私もここ数日まではなんの情報もなかったが……きっと、いや間違いないだろう。星魔法の使い手は限られている、いずれも名のある魔族ばかりだ。それ以外で使える者がいるとするならば、もう一人しかいない」


 一呼吸おいて、ピネスははっきりと告げた。


「星の魔女サニースターの娘は、きみがよく知っているエリーだ。さらった奴がエリーを星の魔女と呼んだのは、おそらくそれ繋がりだろう。いわば現代版星の魔女というものだな」


 それは星の巡り合わせか、はたまた運命か。

 ラックなりに答え合わせをしてみる。

 エリーがずっと隠していたのはなぜか?

 魔族だとバレたら仲間でいられなくなると恐れたからだ。

 星魔法も星の魔女も知らないラックと出会ったのは、エリーにとって天恵だったに違いない。魔族の知識だけはほんの少しあったからこそ彼女は黙っていた。本当は星魔法も隠していたかったが、ラックやピネスを守るために使わざるをえなかった。

 大方そんな感じだろうと納得するラック。

 ただ、まだ一つだけ疑問が残っている。


「エリーの母親がサニースターなら、父親はもちろん彼女の愛する人だろ? じゃあエリーは完全に魔族ってわけじゃないんだよな?」

「そうなるな、エリーは人間と魔族両方の混血種だ」

「そっか、だからピネスはあんな質問をしたのか……」


 エリーはただの人間じゃない。

 魔族の血が混じった人間であり、逆もまた然りだ。


「魔族でもあり人間でもあるからこそ、余計にエリーは悩んでいたはずだ。いつかは本当の自分を知ってほしい、かといって真実を伝えてラックに嫌われたらどうしようとかな」


 そういえば「魔族は嫌いか」とエリーに聞かれたことがあった。

 あのときエリーはどんな気持ちでいたのか、ラックはいまならわかる気がする。

 魔族と出会い魔族を知ったいまでも、ラックの答えは。


「以上が私の知っている情報だ。エリーは我々人間の味方でもあり敵でもある。そして魔族にとっても敵にも味方にもなりえる存在。最終的に選ぶのはエリーだが、きみはどうする?」


 最後に投げられた問い。

 考えるまでもなかった。


「エリーを助けにいくさっ。魔族とか人間とかどうでもいい、俺の大切な仲間だから、エリーだから助けるんだ!」


 初めからわかっていた。種族なんて関係なく、きっと仲良くなれるはずだと。

 答えはとっくに出ていたのだ。


「その答えが聞けてよかった。ゼカの塔には元々用事があるし、エリーを助けたいのは私も同じだ。我々のギルドもぜひ協力させてほしい」


 願ってもない、ラックは二つ返事で快諾する。


「もちろん! ありがとう、頼もしいよ!」


 二人は握手を交わす。

 一時的に魔族調査ギルド『マギア』の面々が仲間になった。


「結構長く話し込んじゃったけど、外のみんなはどうしてるかな?」

「出発の準備をしているはずだ。気が利く連中だ、きみともきっと仲良くなれる」

「そうだと嬉しいけどさ、酒場のじいちゃんは早く戻したほうがいいんじゃない?」

「…………もちろん、忘れてたわけではない。外に出るか」


 長らく追い出されてしょんぼりしている酒場の店主に、二人はすぐに謝るのであった。


「ピネス、ゼカの塔に行く前に少しだけ買い物していいかな?」

「構わないがなにを買うんだ?」

「……ちょっとね」


 今度こそエリーを守るために、ラックは動く。

 エリー救出作戦、開始。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ