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11_情報収集

 ゴムテクターとスターズムーンの購入で所持金をほぼ使い果たしてしまい、結局他のアイテムは買えずじまいに。

 手持ちは僅かに残っているが、宿泊代に取っておくつもりだ。


「またお金は稼ぐしかないか。次は酒場に行こう、カイデル山の情報も聞きたいし」

「ついでにそこで少し休みましょっ」


 酒場に入り、店主にカイデル山について聞いてみる。年配の店主は水を差し出して穏やかに答えた。


「そうですねえ、カイデル山は魔気が生じていますので魔物が出ます。主に獣系の魔物ですね。あと、一ヶ月前から山頂に変異種が住み着いているそうです。魔族が仕向けたとか言われてますが、真偽は定かではありません。どちらにせよはた迷惑な話です」


 変異種。

 前にエリーが言っていた情報ならば、その魔物がおそらくステラピースを持っている。


「どんな変異種が知ってる? よかったらもっと教えてくれないかな」

「お金はありますか? 年寄りの話は高いですよ?」

「……少しなら」

「冗談ですよ、高齢ジョークです」

「お茶目すぎる……」


 茶目っ気たっぷりの店主であった。


「その変異種は山を下りる気はないらしく、害がないなら無理をして倒す必要はないと放っておかれているんですよ。とはいえ倒そうとすると襲ってくるので近づくのは危険ですが」


「あと、もう一つ」と店主は指を一本立てる。


「昼間は姿を見せないのですが、夜になると現れるんです。なのでもし二人が倒すつもりであるなら、夜に山頂へ向かうとよいですよ」


 夜限定であるならば全く問題はない。むしろ星魔法が大活躍する時間帯だ。


「なるほどありがとう! ちなみにその変異種ってどんな魔物?」

「ケルベルの変異種ですね。獣型の魔物で、首にぶら下がっている鈴を鳴らして自分を強くさせるようです。すみませんが細かくはわかりません。なにしろ挑んだ方々はほとんど帰ってこなかったもので」

「笑顔でそんなこと言わないでくれよ」


 最後の一言は大変不安を煽る情報であった。


「変異種討伐は依頼としてありますから、倒した証を見せてくれれば報酬を差し上げますよ」


 余計に倒す理由ができた。ステラピースも手に入れて資金も稼ぐ、一石二鳥作戦だ。

 他にもカイデル山に関しても教えてもらい、いったん情報をまとめるためエリーが書き起こす。紙とペンは店主からのサービスだ。


 ラックと山登り! カイデル山は標高400メートルでそんなに険しくないみたい。

 獣っぽい魔物がたくさんっ。かわいいのがいるかも?

 音を奏でる変異種ケルベルは夜だけ登場! 強そうだけどわたしとラックなら楽勝よ!

 ステラピースも報酬も全部わたし達のもの☆ 最強コンビなんだから!


「うん、まあ、うん……ちゃんとまとめてると思うよ」

「でしょ! ちゃんと絵も描いてわかりやすくしたのっ」


 エリー画伯、絵心はあまりない。

 ラックが回復するまで時間を潰す中、店主や他の客から妙な情報を手に入れた。

 ニンバ地方には魔族が住む塔があるらしい、と。


「この街からだと見えないわね」

「魔族か……本当に存在するんだよな」

「ラックは魔族が気になる?」


 不意にエリーが聞いてくる。


「うーんどうだろ。気になるというか会ったことも見たこともないからさ。ただ、人間とは仲が悪いのは知ってるよ」

「あー……そうよね。昔からよく言われてるもんね」

「魔王が生きてる頃は魔族対人間でよく争ってたらしいしな。封印されてからは少し減ったみたいだけど、騎士だった俺の父さんは魔族との戦いで殺されたみたいなんだ」

「お父さんが? そう……だったんだ。ごめんなさい、悲しいこと思い出させちゃって」


 エリーが暗い顔をするも、ラックは気にしていない。自分から語ったのだからなおさらだ。


「謝らなくていいよ。父さんが死んだのは十三年前、俺が二歳の頃だからあまり父さんとの思い出がないんだ。魔族のこともそれ以外は知らないし。……ただ、母さんがよく言ってた。魔族は危険な種族だから、絶対に関わってはいけないって」


 ラックの母親だけが、彼の旅立ちを望んでいなかったのを思い出す。村のしきたりには逆らえないが、最後まで母親は心配していた。

 母さんは元気だろうかと、ほんの少しだけホームシックになりそうだ。


「じゃあ……じゃあ、ラックは魔族が嫌い?」

「……親の仇ではあるけど、俺自身はまだ一度も見たことも喋ったこともないんだ。だから一方的に魔族を悪く言うのは違うかなって。父さんは騎士の務めを果たすために魔族を殺そうとしたかもしれないし、魔族も魔族で自分を守るために父さんを殺そうとしたかもしれない。なにも知らないのに、魔族を嫌いになるなんてできないよ」


 自分で確かめるまでは決めつけたくない。それが悪いものなら余計にだ。

 しばらく表情が浮かないエリーだったが、やがてほほ笑んだ。


「わたしもそう思う! やっぱりラックとわたしは相性抜群ねっ」


「なんだそりゃ」とラックもつられて笑う。ともあれエリーが元気になってよかった。

 このまま旅を続けていれば、いつかは魔族と出会う日が来るのだろうか。

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