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山湖村脱出

ついに本命の登場。


コウ君もういいんだ。これ以上は見ていられない。


私の代わりになぜかいつも事件を解決してくれた大家さん。


その彼女の推理が間違っているはずがない。


降参するんだコウさん……


まずい。ついついおやじギャグを言いそうになる。


どうしても緊迫した場面ではふざけたくなってしまう。


この役目は本来助手に担ってもらいたいのだが今は使い物にならない。


だから私が代わりをする。二刀流って奴だ。



追い詰める婆さん。


「コウ君。本当にあなたが犯人じゃないんですか? 」


馴れ馴れしい上にしつこい。


「自分が犯人だなんてある訳がない。何かの冗談ですか? 」


「まだ言い逃れするつもりかい坊や」


困った婆さんだ。ガキだと思って舐めやがって。この際強く言うか。


「しつこいな。婆さんが誰だか知らないが自分にはアリバイがあるし動機もない。


自分は今回の儀式に渡しとして参加したただの部外者。


それはそこにいる探偵さんや助手にあなたも同様。


疑うなら身内を疑ってはどうですか」


何とか言い返すことが出来た。これでごまかせる。



確かにコウ君の言い分には一理ある。さあここからだ。


あれ? 私はどちらの側に立つべきなのか。


大家さん? コウ君?


弱者に寄り添い最後まで信じると言うならやはりコウ君。


探偵として正義を追及するなら大家さん。


そろそろ私の出番か…… 嫌だな……



「こら坊や。いい加減にしないか」


「あのねお婆さん。これは山湖村で起きたトラブル。


基本的に部外者は関わりは薄い。だから自分にはまったく関係ないことです」


何とか言い逃れたがこれ以上追及されればボロが出る。


「コウ君本当のことを言ってくれ」


「探偵さんまで…… そんな…… 自分を信じてくださいよ」


「コウ。嘘はもういい」


助手まで説得に回る。


元々一人対複数。分が悪いのは目に見えている。


「お前もかよ。一体どうしちまったんだよ? 」


失望を隠せない。


信じていたものとばかり思っていたが違ったようだ。



コウ君……


「自分が何をしたって言うんです? 自分には…… まったく…… 」


「コウ。俺は信じている」


「当然だよ。自分は…… やってない…… 」


コウは歯切れが悪くなった。


「コウ君はあくまで否定するようだが証拠はもう挙がっているんだよ」


証拠は掴んだ。決定的な証拠を出す前にすべて話して欲しい。


もはやそれぐらいしか望めない。


「探偵さん。自分を嵌めようとしても意味ないですよ。自分は無関係だ」


「こらお前」


頭に血が上った刑事。どうにか宥める。


大家さんは様子見。


コウ君の説得はこの私に一任されている。


大家さんも刑事も大人しく見守るしかない。


「もういいんだコウ君。これ以上君を苦しめたくない。認めてくれないか」


泣き落としにかかる。


これは本来刑事の役目。


ただすぐに暴力的に解決しようとするから任せられない。


ほら今にも殴り掛からんとしている。



「ちょっと…… 」


ついに刑事が暴走を始める。


すべて任せるように釘を刺していたのにこれだから……


「認めないか。よしなら自分で確認して来い。穴がどこに通じてるかをな」


サライちゃんがこちらを睨んでいる。


サライちゃんが怒っている。


サライちゃんが泣いている。



刑事はコウを抱えると穴に押し付ける。


「ちょっと止めてくださいよ。自分はこう見えて閉所恐怖症なんですから。


いいんですか? 警察が一般庶民を無理矢理引っ張って行って。


暴力警官として訴えますよ 」


「いいから入りやがれ。話はその穴を抜けてからだ」


鳥の鳴き声が幽かに聞こえる。


無理矢理穴に押し込まれる。


仕方なくもう一方の世界へ。



離れ。


ついに山湖村を脱出する。


穴の前に突っ立っている新米刑事に一撃を喰らわす。


これで邪魔者は居なくなった。


あの刑事が怒りに任せて無理矢理穴に入れたものだから難なく脱出できた。


探偵さんたちには申し訳ないが当初の目的通りここから消えることにしよう。


本当だったら三貴と一緒に儀式の完了と同時に逃げ出していた。


もちろん行方不明扱い。犯人ではなく被害者と巻き込まれた哀れな男として。


そうすれば追いかけ回されずに新天地で幸せに暮らせていただろう。


まったくどこでどう間違ったのだろう?



あの刑事の話からも何となく予想は出来たがやはり一葉の遺体はどこにも。


見つからないと言うことは回収したのだろう。


これで確実に逃亡犯として追いかけ回されることになる。


まあ一ヶ月も経てば奴らも諦めるはずだが。


さあ急ぐか。


この家ともおさらばだ。


急いで村を抜ければ追手も撒けるはず。


後は三貴の行方だが……


頃合いを見て戻ってくればいいさ。


三貴よどこにいるんだ?



離れから周りの様子を窺う。


見張りの者もいないし外からの気配も感じない。


よしチャンスだ。


決断の時。


もう山湖村にも西湖村にも未練はない。


闇に一歩踏み出せばもう追いかけようがない。


それにこの辺の地理は自分の方が上。頭に叩き込んである。


もしもの為の備えを忘れない。



西湖村脱出へ。


                  続く

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