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再び館内へ ルーズコントロール

三貴が犯人? そんな馬鹿な。


確かに三貴は仲間だ。そう言う意味では間違っていない。


だからと言って三貴が第一村人? 飛躍しすぎだ。


探偵さんは何を言ってるのだろう? まったく理解できない。



うん…… そうか自分は疑われていなかった。


少なくても探偵さんは最後まで自分を信じてくれた。


もちろん形だけでこれも周到な作戦かもしれない。


それでも満足。満足だ。



ダメですよ探偵さん。さすがに三貴はあり得ない。仲間であって実行犯ではない。


真犯人である自分が一番良く分かっている。訂正しなくては。


「オウ イッツ・クレイジー」


ルーシーも頭を抱える。


館の前がざわざわし始めた。



「先生。先生。三貴さんはここには居ませんが……


居るのは似ても似つかないルーシーとこの大家さんぐらいなもので」


助手に指摘され顔を真っ赤にする探偵。


理解できずに何が違うのかと戸惑っている様子。


根本的に間違っているのが分からないのだろうか。



「先生の陽動作戦が功を奏するか分かりませんが三女の件は後回しにしますね」


婆さんがフォローする。


フォローされる探偵ほど情けない者はいない。


もはや迷探偵。ポンコツ探偵。


探偵さんしっかりしてください。自分がついてます。


立場を弁えず同情する。追い込まれていると言うのに人の心配をする始末。


自分はどうしてしまったのだろう?


どうも緊張感が無い。


    

「いいから早く犯人を教えろってんだ」


ゴリラのような刑事は我慢できずに催促し始める。


しかし婆さんは順を追って説明すると言って聞かない。


「それでは皆さん。長女失踪事件の舞台に行ってみようではありませんか。


失踪はこの東の館で起こりました。そうですよね刑事さん」


「ああ、ここで儀式が行われている最中に消失が起きたんだ」


ゴリラ刑事の確認をとる。


「では皆さん館の中へ。自分が真犯人ではないと思う方はどうぞお入りください」



最悪の展開。


このまま逃げても捕まるだけ。もはや万事休す。


どうする? どうする?


もう打つ手がない。お手上げ状態。


婆さんに続いて探偵に助手が姿を消す。


容疑者たちは館内へ。


最後に刑事が入る。



不審な行動を取る者が居ないかチェックする刑事たち。


儀式の間まで誰一人話すものはいない。


「お気づきかと思いますが消失当時のままです」



儀式に使用するロウソク。


茶器にお香。紙と墨に筆。


暖房器具。


忘れてはならないのが大きな黒電話。


長女が着ていたであろう衣。


サライちゃん人形が奥に控えている。



「この配置で間違いありませんね? 」


「ああ。ちゃんと再現してやったさ。そうだろ村長さん? 」


「はい。発見された当時を再現できてるかと思います。


白い布の意味は分かりませんが他は前と変わらない」


村長は一礼して下がる。


その様子を元村長が苦々しそうに見つめる。


過去の二人のわだかまりはまだ消えていない。


元村長の怒りがにじみ出ている。


村長選で後押しされたので一族に逆らえない村長。強くものが言えない。


この構図は元村長と同様で一族に良いように操られている。


老人は村長が岩男氏にうまく取り入ったと感じ目の敵にしているのだ。


困った爺さんだ。


元村長の彼がきちんと一族と向き合っていれば今回の悲劇だって生まれなかった。



「この消失事件が解決すれば他の事件もあっと言う間です」


「前置きはいいから真犯人を言い当ててくれ。面倒で敵わない」


刑事のイライラが止らない。


「ほら早くしろって」


「慌てるんじゃないよ。今いいところなんだから続けさせな」


刑事と婆さんの掛け合いを見ると愉快で和むのだが……


どうやら二人は自分が犯人だと完全に見抜いてるようでさっきから視線を感じる。


こちらの動きと位置を把握し逃げないように監視している。


周りの警官も同様に警戒している。


まずい。このままでは逃げきれない。


どうする? どうやってこの不利な状況を打開する。


頭が真っ白で何も浮かんでこない。


再び追い詰められた。


これも奴らの作戦の内か。


まんまと敵の仕掛けた罠の館に閉じ込められてしまった。



だがまだ余裕だ。自分には鉄壁のアリバイがある。


しかも自分がこの手を汚したのは一葉のみ。


どんなことがあっても連続殺人事件だとするなら言い逃れもできる。


これだけ複雑に絡んだ事件を紐解くのはたとえ名探偵であろうと不可能。


なぜなら自分の窺い知れぬものとなっているからだ。


当初の計画とは大幅にずれが生じ、もはやコントロールを失った。


誰が死に誰が……



それでも観客の見る世界は美しき連続殺人。


自分は観客の想いに応えてやるのみ。


自分の修正力の高さに今さながらに驚いている。


うん。大丈夫だ。大丈夫。



婆さんは再び横で放心状態の探偵に真実を追求するように訴えかける。


これ以上は酷では?


探偵さんの精神状態が気になる。


                    続く

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