動き出した者たち 謎解き編スタート
<謎解き編>大家さんによる推理ショー。
大家さんの手前助手を置いて行く訳にはいかない。
不本意ながらついに彼にも助手として動いてもらう時が来た。
「おい起きろ。支度しろ」
叩き起こす。
「先生どこに行く気ですか? 」
相変わらず呑気な男だ。
疑われているようには見えないのが助手の凄いところ。
別に褒めている訳でも貶している訳でもない。
何て言うかマイペースなのだ。助手には向かない性格だがこれはこれで味がある。
こんな考えでは大家さんにまた甘やかしてとどやされるかな。
「もう眠いのに。先生勘弁してくださいよ」
ついさっきまでイビキを掻いて寝ていた。眠くて眠くて仕方ない様子。
探偵の助手の仕事はそれは大変なものだ。
口答えすることなく言われた通りに動く。
もし探偵がピンチに陥ったら助手である彼が全力で助けなければならない。
「もう夜中ですよ。何時だと思っているんですか?
十一時回っているよまったくもう。いい子は寝る時間です」
寝起きですこぶる機嫌が悪い。迷惑な奴だな。
「いいからいいから。行くぞ」
無理矢理引っ張っていく。
深夜寝静まった村を徘徊する。
これはまずい。サライちゃんの餌食にされては敵わない。
先を急ぐ。
「あれ…… 誰かいるなあ? 」
不安からかさっきからうるさい助手。
「静かに」
「でも…… 寒気が…… 」
日付が変わる時刻。
真っ暗とは言えライトを向ければ見つかってしまう。
ここは慎重にターゲットのところへ。
「先生? 先生? 」
「うるさいぞ。少しは静かにしろ」
おーい
おーい
どこからか声がする。
徐々に大きくなっていきはっきり聞き取れるようになった。
この声は……
「早く早く」
焦っているのかどんどん大きくなっていく。
「なあ、いるんだろ? 姿を見せてくれよ」
男の声に間違いない。
聞き覚えのある声。だが誰だったかまでは思い出せない。
「なあもう鬼ごっこはいい。充分だ」
うん? やはりどこかで聞いた気が……
助手に確かめるが一言も発さずに震えている。
いや何かに驚いている様子。
まさか正体に気付いた?
「聞こえてるんだろ? 早く、早くしないと逃げられなくなる」
駆け寄ろうとする助手を必死に抑える。
「ダメだ。絶体に動くな」
「だって先生…… 」
もうその正体に気付いたのだろう。
かわいそうに。だが私とて同じ。
私も探偵の端くれ。ここまですれば声の主が誰かなど簡単だ。
人は限られている。
ここは閉ざされた村。
よそ者が紛れ込むこともない。
何といっても出口が封鎖されている。
仮に全員を調べるとなっても大して時間は要しない。
そこから消去法でも正解に辿り着けるのだ。
「いいから指示に従え。ここで大人しくしていろ」
「先生…… 」
徐々に小さくなっていく男の声。
動き出した男。
まあまだ確実に彼が犯人だと決めつけられない。
しかしこんな夜中に大声を上げ常軌を逸した行動に出るのを見ると間違いない。
誰かとの待ち合わせ? こんな夜更けにあり得ない。
まず間違いない。彼が第一村人だ。
ついに正体を現した第一村人。
どれだけ大声を張り上げようと決して返事は返ってくることはない。
諦めかけたその時だった。
声がする。
足音と同時に自分の存在をアピールする者が現れた。
単純に逢引き現場に遭遇した可能性もある。
村の男女が人の目を忍んで密会してるのかもしれない。
おーい
おーい
「私よ」
おーい
「ここ。ここに居るわ」
うん? 声がおかしい。
風邪でも引いたのか随分と声が掠れている。
まるで無理をして叫んでいるようにも聞こえる。
本当に彼女なのか? それとも別人?
「おーい。おーい」
「こっち。こっち」
「誰だお前は? なぜ彼女の真似などする? 」
「私は…… あなたの恋人。思い人」
「ふざけるな。ふざけるな。お前は誰なんだ? 」
「私はあなたの…… 」
「嘘だ。嘘をつくな。なぜ嘘を吐く」
「嘘? 嘘なんかじゃない。あなたが求めていた者」
「いい加減にしろ。誰だお前は? 」
「いいえ。これが正解」
「何が正解だ。どこが正しい」
「私はあなたの待ち人の代わり。これ以上傷つけないでお願い」
「自分はお前を知らない」
「私はもちろんあなたを知ってる」
「ふざけるな。お前は一体誰なんだ? 」
「もう分かってるくせに。私は…… 三貴」
続く




