変態 動くサライちゃん
東の館。引き続き門番から話を聞く。
「食事は毎日決まった時間に? 」
「ああ、よっぽっどのことがない限りな。俺は時間には正確だからな」
何の自慢なのか分からないがどうでも良い情報を付け加える呑気な男。
「うーん。犯人はあなたの行動を観察した上で犯行に及んだのかもしれませんね」
「おいおい。それではまるで俺がいけないみたいじゃないか」
さっきからそう指摘してるはず。理解する気が無いのか?
「いえ決してそのようなことは…… 犯人にとって都合が良かっただけです。
まさか儀式の最中に何か起きるとは普通思わないでしょう」
多少男に気を遣う。暴れられても困る。
「そうだ。うんそうだ。俺は悪くない」
罪悪感から自己を正当化する。まあこれも想定の範囲内だ。
「交代もつけないでこき使った連中が全て悪い。それに犯人も」
興奮気味に語る。こうなると手が付けられない。
「その通り。それで儀式の前と後で何か変わった点はありませんでしたか? 」
気分良くさせてもっと情報を引っ張る。
「うーん。俺も詳しく見てた訳じゃねえからな。まあ強いて言えばあの気持ち悪い人形の位置が変わったことかな」
「まさか動いたとか? 」
助手が恐る恐る尋ねる。サライちゃんの呪いを信じているらしい。
「そう言うことになるんだろうな」
「うわああ」
助手が叫びながらどこかに行ってしまった。
館を一周し戻ってくる。息を切らして何か喚いているが心配ないだろう。
「それから? 」
「さあな。後は特にこれと言ってない」
もはや信用に足りるとは思えないが一応はメモしておく。
「このサライちゃん人形ですね。よく覚えてましたね。どんな感じですか? 」
「最初は俺を睨みつけてた。儀式が終わり中に入った時は違う方向を向いていた。
まあほんのちょっとだけどな。あの人形は見るからに気持ち悪いだろ?
あいつににらまれるとギョッとするからさ。あれ何でだろうと思った訳だ」
「なにぶんここは初めてなもので…… 普通あの人形を動かしますか? 」
「まあ俺の家にも昔からあるが大掃除以外は動かさねえな。他の奴にも聞いてみ。
まあ一年に一回取り換える時は動かすがな」
「そうですか分かりました」
ではもう少しと言って見て回るがこれといった手掛かりは見つけられない。
あるのは不気味なサライちゃん人形一体。
助手が早く戻りましょうと催促するので仕方なく一度本部へ戻ることにした。
館を出たところで二人の言い争う声が聞こえる。
一人は女性の声。
村とはまったく合わない派手な服装のよそ者。旅行者?
ただコウ君や我々のようなレベルではなくもはや宇宙レベルと言える。
片言の日本語で相手を油断させ獲物を仕留めるハンター。
「イワオ知ってるね? 」
明らかにイントネーションがおかしい。わざとやっているようにしか見えない。
何も知らない外国人観光客を無邪気に演じているかのよう。
「俺は関係ない。いや俺たちは何も知らない。変な女め」
女と言い争いをしているのは昨日の男。太郎か次郎だ。
「イワオ。イワオ。どこにいるか? 」
「不吉な女め。この村を汚そうとする悪魔め。どっかに行け」
大声を張り上げる青年の異常ぶりを向かいの世話好きな女性が心配そうに見守る。
「イワオ。イワオ」
戸を叩き喚き散らす女がこちらに標的を変えた。
「イワオって確か昨日亡くなった権力者の人っすよね」
そう。今回の代替わりの儀式の主要人物の一人で現当主。
儀式が無事終われば次期当主候補の一葉に引き継がれ役目を終えるはずだった。
しかし岩男氏は昨日死亡した。死因は水死。
助手の余計な一言に反応する。
「イワオ知ってるね? 」
金色の髪に銀が混じったストレートヘア―。
それをゴムで束ねた足の長いラフな格好をした女性。
派手なティ―シャツに桜色の上着。下は申し訳程度にあるだけ。
これがスカートなのか短パンなのかキュロットなのか不明だが……
桜冷えする今の季節には何とも大胆…… いや寒そうだ。
ついつい下から上まで視線が行く。これも探偵の性って奴で観察は怠らない。
助手も同様だがどうも視線が嫌らしい。
先生も相当ですねと訳の分からないことをつぶやいてにやける。
「ちょっと待て。私は…… まあいいか」
「ハロー オウ ヘンタイ」
聞き取りやすい英語。これはネーティブではなさそうだ。
握手を交わす。
「君は誰だい? どこから来たのかな? 岩男氏になんの用があるんだい? 」
質問攻めで困らせてしまう。
「オウ ノー」
このまま英語では不便なので片言の日本語で対応してもらう。
「ワタシは遠い遠いところからやって来たルーシーって言うね。
イワオに会いに来ました。バット…… この村の人ベリーベリーイジワル。
誰も教えてくれないね。超スーパーベリーベリー困ってるね」
片言の日本語と多少混ざる英語で必死に訴える。
まあこれでは誰も教えてくれないのも無理はないか。
この村ではよそ者を排除する動きが顕著だ。
彼女では余計相手にされないだろう。可哀想だが仕方ない。
続く




