三
学園を飛び級で卒業して次の日には寮から出て街の宿屋に泊まった。
安心して寝れて風呂に入れれば良いから貴族用のお高い宿屋では無く庶民用のそのそこの宿にした。
「ここで寝泊まりすれば良いじゃないか。」
約束の日時、少年の元に向かうと勉強場所として案内されたのは学園の敷地の隣にひっそりと建つ小屋だった。
草のつるが巻き付きパッと見ただけでは小屋があるとは分からない。しかし、中に入ってみると清潔はある程度保たれ一通りの設備がある。学園の寮を出た話をしたらどうせここに通うのならばと提案されたのだ。
「家賃とかいらない代わりに掃除だけはきちんとして欲しいけどね。」
「…苦手分野だから保証はできない。」
「…女子は綺麗好きなものじゃないの?」
「男でも剣の不得手があるだろ。」
「…勉強できる位にはしておいてよ?」
そう言われて始まった家庭教師だったが二日目にして掃除から始まる事になったのはとても不服。私の感覚では片付いてる方なのに…。
「何故一日でゴミ屋にできるんだ?!」
少年…アルは綺麗好きすぎる。
「細かい事気にしすぎだ。」
「いやいやいやいやいや。絶対に違うから。」
そんな日常が二週間程続いた。
アルに教えるのにも馴れてきたところだったのに突然終わりはきた。
「これを持って明日にでも此処を離れた方が良い。」
手渡されたのはアクスレピオスへの推薦状だった。
どうやら私の実家に飛び級卒業がバレたらしく意外にも探されているらしい。愛情なんて無いだろうから何かに利用しようとしているのだろう。
「世話になった。」
「確かに世話はした!ちゃんと片付け出来るようになれよ!…楽しかった。」
アルとはそれっきり、私はその日の夜にアクスレピオスへと旅った。
この二週間、悪くない生活だった。初めて他人とあんなに近い距離で接したからか…何となく気分が少し悪い。
アクスレピオスに着いて推薦状を提示すると、渡した人の顔が真っ青になり直ぐに学長室に通され本当に平民なのかと何度も何度も確認されるし推薦状についても凄く質問された。
アルから事前に助言されていなければ偽物として罰せられたかもしれない。
とりあえず次に会ったら少し説教しようと思う。
無事に入れたけれど実家からの横槍は避けたい。この瞳は目立つから前髪で隠す事にした。その上で度なしの眼鏡をすれば更に目立たない。私はやっと少しの自由を手に入れたんだから邪魔はさせない。
教室に案内されて担任に挨拶を促される。
「今日から入る事になりました。ローワンです。」
「……平民…」
「何あの見た目…キモチワルイ…」
どうやら此処でもまた一人でいる事になりそうだな…。
まだ挨拶しかしていないのに目の前の同志達の眼からは良い感情が見えない。
まあ、私は医学が学べればそれでいい。
「私の外見や平民である事が気に食わないようだから宜しくとは言わない。ただコレだけは言わせてもらう。私の学びの邪魔をする輩には容赦はしない。」