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十二

華やかなドレス、美しい美術品、煌びやかな宝石や貴金属、私の集めてきた宝物達が運び出されていく。可愛い娘は怒鳴り散らし邪魔をしたからか口を塞がれ二人の兵士に腕を捕まれソ

ファーに座らされている。

応接間から動く事が許されず部屋の隅に立ちただ見ているしかない。後任者かんししゃが睨みつけているから…。



「なぜこんな…。」


「何故も何も、ご自分達が招いた結果です。」


「私はっ!何もしておりません。」


「ええ、そうですね。貴女は何もしなかった。夫が横領している事に気が付きながらも見て見ぬふりをし、夫や娘が使用人に暴力を奮っても見て見ぬふりをし、愛情を注がなかった娘が使用人から虐められても見て見ぬふり、ああ…唯一、無理やり連れ戻した時は地下室に軟禁しましたか。よくその様に言えたものです。」


「横領したのはのは夫です!暴力を奮ったのも夫と娘であって私では無いのだから私は、私のモノは奪わないでっ!!」


「命まで奪わない事に感謝して下さい。」


この男、王家の血を引くとはいえ見た目からしても娘より少し年上、成人してない子供のくせに私に全く敬意を払わない。たかが公爵家の次男風情が…。


「失礼致します。」


長年我が家に遣えている執事が開けっ放しの入口から見覚えのあるトランクを二つ抱えて入って来ると一つずつ私と娘の前に置いた。


「奥様とお嬢様の見回り品をメイドに詰めさせお持ちしました。」


「そうか。ならばもうこの二人をここに留めて置かなくても良いな。」


「な!ここは私の家ですっ!!」


「既にその権利は失われた。辺境伯はあろう事か隣国に兵を連れて秘密裏に入国し騒ぎを起こし身分剥奪の上で投獄されている。貴女達ももう平民だ。」


「わ、私が平民なんて嘘ですっ!」


伯爵令嬢として生まれ見初められ辺境伯夫人となり輝いていた私が…有り得ないわ。これは悪い夢だわ。早く目覚めなくては。どうしたら覚めるの。


「信じようが信じまいが平民になった事実は変わりません。貴女の実家は縁を切り自領への立ち入りを禁ずるそうですので注意を。」


「そんな…。」


どうして私がこんな目に…。

アレが…アレのせいだ。許さない!私の幸せを壊したアレは絶対に許さないわ。


「…お金。まさか高貴なる血を引く者が私達を身一つで放り出すような事はしないでしょうね。」


「…金貨一枚枚渡しましょう。」


「たったの?」


「比較的裕福な平民が一年で稼ぐ金額がそれくらいです。女性という事を考慮し破格の待遇にしたつもりですが要らないなら構いません。」


「…頂戴するわ。」


金貨一枚じゃあこのドレスすら買えない。けれど無いよりはマシだわ。


「私達にこのような仕打ちをした事、必ず後悔させますから。」


「有り得ませんね。」

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