十一
「うがっ!!」
辺境伯家の当主たるグレートは脚にはしる激痛で目を覚ました。
痛みが出始めたのは一年半程前、かかりつけ医の診察を受け薬を処方され適度な運動と飲酒の制限と食事の注意を聞いたが無視して週に二度は酒をかぶ飲みし好き放題食べていたら痛みは膨れ上がっていた。
痛む脚を両手で抑え周りに目を向けると机に広げられた書類が目に入る。
目を通しながら寝てしまったようで少し角が折れているソレを震える右手で掴んだ。
書かれているのは隣の領地に出た大型の肉食獣の討伐依頼。
半年前に防衛費の横領が王にバレて以降、支給額が減額され他領の依頼を断る事を禁止された。本来ならば即平民に落とされるか絞首になってもおかしくない所を隣国に隙をみせる事になるので爵位はそのままだがそれも後任に引き継ぐまで。
この半年、王家の血を引く公爵家の次男を後任として引き継ぎながら減らされた防衛費に私財を足し補填し、自領と他領を行き来している。たまに襲いくる激痛に耐え、何とかこなしているが心身共に限界が近い。
そんな時ふと目にとまった調査報告書、手に取り開いた辺境伯は我が目を疑った。
縁談を纏めてやった途端に姿を消した約立たずが名門校を卒業し医者として働いてるという。厄介事を起こした時の為に監視を続けていたがそれが吉とでた。
まずはかかりつけ医が匙を投げたこの激痛を治す薬をつくらせる。その間にアイツの稼いだ金を奪い他家にもふれ周り一儲けする。一生飼い殺しにすればそれなりに稼げるはず。直ぐに連れ戻し薬をつくらせたがまあまあの成果をあげた。
作業中に珍しく寝てしまったのは直ぐに痛みを無くす薬が出来るだろうと安堵したからだろう。
辺境伯は眠気覚ましに酒でも飲もうと使用人を呼ぶベルを鳴らした。しかしいつもなら直ぐにノックし用を聞きに来るのに誰も来ない。
もう一度、今度は長めに鳴らすが来る気配は無い。
「彼奴ら…全員ムチ打ちにしてやるっ!」
顔を真っ赤にしながら部屋を出ると使用人達が皆倒れている。
夜襲を疑って近くに倒れているメイドを観察するが血の跡はなく、寝息を立てているので眠らされているだけと分かり思わず蹴りつけた。
「起きろっ!この愚図共がいつまで寝ているのだっ!!」
屋敷内の状況を把握する為に他の部屋の確認に行く。サロンで寛ぐ妻と娘、厨房の料理人、執事までもが眠りについているのを確認すると一応地下室にも足を運ぶ。
「アレも眠っているようなら叩き起すっ!」
怒りをぶつけたくて自然に歩幅は大きくなり、地下室に着くとドアを蹴りあけた。しかし、部屋の中に怒りをぶつける存在は無い。机の上に並べられた薬瓶をみて誰の仕業か察し辺境伯は部屋の中で暴れ回った。
「あんのゴミクズがああああああああぁぁぁ!」




