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アリスの為に

「…それでも俺は。彼女をもう一度生き返らせる!」


武器を取り出し、俺はその神の残骸とやらに飛び掛かった。


「無駄なあがきを…よかろう。それならば、気が済むまで叩きのめしてやろう!」


彼女もまた、光の槍のようなものを取り出した。

俺らの一撃は互いに相殺しあった。


「ちっ…!」

「こんなもんか?お主の救いたい気持ちは!」


そう言って笑った彼女に、吹き飛ばされた。

際限のない世界を限りなく飛ばされた。


「まだまだぁ!」


飛び掛かり、今度は手数の多い攻撃を仕掛ける。

すべていなされているのも構わず、ただひたすらに攻撃を繰り返した。


「わからん。どうして主がここまでするのか。一体どうしてだ?」

「…後悔してるからだ」

「は?」


後悔してるから。もう一度会って、謝りたい。俺の意思のせいでごめんって、謝りたい。だから…。


「だから。もう一度だけ会いたいんだ」

「…」


それだけ言って。俺は武器をしまった。


「…頼む」


頭を下げ、地べたに頭をこすりつけて。

勝てないって思ったからの行動じゃない。戦って、勝って。それで生き返らしたとして。俺は、心の底から喜べるだろうか。罪をかき消して生き返らして、俺は笑って、いられないだろうな。


「…クハハ!だそうだぞ!ハイロ」

「…え」


…嘘だろ。



「ああ。俺も聞いていた」

「お前…覚えておけ…!」


突如現れたハイロを見て、俺は思わずそう言ってしまった。


「で、どういうことなんだ?」

「ああ。俺、こいつとグル」


隣で「イエ〜イ」というメグリネを指差し、あっけらかんといった。


「…」

「てかそもそも、本人の強い意志と実現させるために必要な力ってもんが二個あるんだよ」

「そうじゃ。死を蘇らせるには、相応の強い力が必要不可欠。だからお前さん1人の力じゃどうにもならないのだよ」


説明を受けてもなおわからない。


「つまりあれか?俺の思いは伝わってなかったってことか?」

「いや、違う。意志っていうのは、仮にもし失敗したときに受け入れられるようにするためだ」

「失敗…?」


ピクっと、その言葉に反応してしまう。


「ああ。もし失敗すれば、アリスの魂はこの膨大な記憶の中を永遠に彷徨う。それも、かなり分裂してな。そうなれば、魂をもう一度呼ぶことは不可能だ」

「そんな…」


手が震える。もしかしたら、このチャンスがなくなるのかもしれないと知って、恐怖に手を震わせた。


「…でも、そっか。落ち込んでたって、しょうがないな」

「おう。そう思えるならいい」


そうだ。落ち込んだって、仕方ない。俺がこんなことをしたんだ。これぐらいのリスク、なんてことない。


「じゃあ、やるか」


俺は、その言葉を聞き、アリスの魂を取り出した。


「そこに置いてくれ」

「わかった」


言われた台座の上に、アリスの魂を置いた。


「…衝撃に備えとけ。“入れ”」


直後。頭の中を割らんばかりに、勢いよく記憶がドバドバとなだれ込んだ。

その記憶のすべては、アリスが見てきた記憶のすべてだった。楽しい思いも。悲しい思いも、共感性羞恥のように、その感情のすべてを感じた。

ふと、気付いた。

楽しい思いに、なぜか俺の顔がほとんど入っていた。


「…」


気が付いたら、俺の目の前にはアリスがいた。


「…何しに来たの?」

「…」


ひどく冷たい彼女の声。それが本心なのか、はたまたただの偶像の虚言なのかはわからない。

ただ、ここまで来た。やっとこれた。例えそれが実は可能性のない負け戦のだとしても、俺は手を伸ばす勇気が手中をうごめいていた。


「行かなくちゃ、いけない」

「今更何をしに?」

「本当の君に、言わなくちゃいけない」


彼女は後ろをぴったりとくっついて、俺の心を揺さぶろうとする問いを何度も何度も語り掛けてきた。


「なら、私はここにいる。ほら、言ってみな」

「君じゃ、だめなんだ」

「…何よ、今更」


悲しそうに言ったから。思わず足を止めてしまった。


「だってそうじゃない!あなたは、何も言わずに私を殺した!それで、生き返らせるなんて自信満々に言った割には、こうして4000年も経った!ねえ、教えてよ…私は、あなたにとって何?」

「……」


その言葉に、俺はまた足を進めた。


「…そう。どうでもいいのね…」

「どうでもいいんじゃない。ただ、それを言うのは君じゃない。君みたいな偶像なんかじゃなくて、本当に存在してる彼女だ」


そうだ。俺が合わないといけないのは、アリスで、この子じゃない。


「だから、俺は先に行く」

「…わかった」


刹那。空間にひびが入り、すべてが弾けて壊れた。

その先。さっきの台座があって、その台座の上にはアリスがうずくまるように目を閉じていた。


「ありがとう」


彼女はそれだけ言って。あとはやさしく笑って、消えて、いなくなってしまった。


「…約束、果たせそうだ」


俺は、彼女のほほにそっと手を伸ばした。

儚くて、やさしく触ったはずなのに今にも壊れそうだ。


「…ハイロ、着いた」

「おう」


なぜか感覚的にそう言わなければいけないと感じ。俺はハイロを呼んだ。

右手にアリスの魂をもって、彼はやってきた。


「…“生き返れ”」


まばゆく発光して、それはアリスの中へと入っていった


「さ、あとはお前だな」

「…俺?」


聞き返した瞬間。糸が切れたようにふっと意識が吹き飛んだ。

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