約束を果たす時
俺はまた、あの場所に来ていた。
城を建てるわけでもなく。俺は昔の約束を果たしに来ていた。
「…おい。起きてんだろ、オーディン」
俺は虚無に言葉を吐く。それはただ空に問いたわけではない。
“ん?なんだハイロ。俺は今眠ることに忙しいんだ”
「なら暇じゃねぇか。いいから手伝え」
“しゃーねーな。どうしたよ”
心の中に巣食うあの神様は、そう返した。
俺はその返事が聞けたのを確認し、ある物を取り出した。
“それ…”
「ああ。お前との約束。やっと果たせそうだ」
約束。それは、少女アリスを生き返らせること。
本来、蘇生魔法は使うことができない。使おう物なら膨大という表現では到底足りないほどのHPが必要になる。
「そのことを考慮しても、果たせそうだ」
“でも…いや、無理だろ”
「無理だったら言わんし。それに、可能性があるんだ。お前も縋ってみたいだろ?」
彼は黙った。数十秒黙り、返事を返した。
“わかった。縋ってみるよ”
「ふっ…」
そして俺は、一つのアイテムを取り出した。
「前に鑑定した時によ。仮死状態って書いてあったから、もしかしたら魂は抜けてないのかもって思ってよ、魂を閉じ込める瓶みたいなのを作って、アリスの魂を全て保存しておいたんだ」
“なるほど…魂の概念は今ならわかる。だけど、それをどうやって入れるんだ?”
「わからん。取り出すことはできたけど、入れるのは無理だったね」
“じゃあどうやって…”
俺は、さらにもう一つアイテムを取り出した。
“それは?”
「…あの戦いの後。ジュンヤが落とした“糸紡ぎの玉”ってやつだ」
“どんな効果だ?”
「簡単だよ。魂と器を紡ぐ玉ってやつだ」
“なるほど…つまり、その玉で魂と器を繋ぐんだな?”
俺はその問いにフルフルと首を振った。
「いや違う。仮にそうしたとして。魂は一定の場所に留まっていないといけないんだ。もしもつないだとして、この瓶自体が壊れちまったら如何にもこうにもできない」
“お前の言論統制は?”
「一定期間が過ぎるとダメになる。最長で一ヶ月だ」
“じゃあどうやって…”
俺は、自分の胸を指差した。
“?”
「お前に任せる」
“は?”
有無を言わさずに俺は言葉に代償を込めて言い放った。
「“オーディン。アリスの器の中に魂持って入れ”!」
“聞いてなぃ…”
嘆くオーディンの声はどんどん遠くなっていって。俺はその声に
「…頑張れ」
そう呟いた。




