魔王神の誕生
「…ジュンヤ…が…」
そこで、俺の意識は途絶えたらしい。
意識が遠のいていく感覚と対照的に。逆に意識が覚めていく感覚が並行して頭を襲った。
「……?」
目が覚めたそこは、何もない。花が一輪だけ咲いただだっ広い空間だった。
「…行かなきゃ」
「おい」
謎の使命感に押された俺を、その声が引き留めた。
一度だけ。たった一度だけ。俺の異世界での生活で聞いた声。ああ、疲れているのか。そう錯覚するほどだった。
「…まさか」
「よう。久しぶりだな、ハイロ」
そこには、俺が殺した神の上半身が浮いていた。
「…あきらめるのか?」
「…あきらめたくはないが…可能性は限りなくゼロだ。正直、もう投げ出したい」
「お前らしくないな。敵の強大さに怖気付いたか?」
二人背を合わせ、しょーもない話をしていた。
談笑しながら、俺はある思考を巡らせていた。
このままで、いいのかな。
あっちでは、今俺を心配してくれた人が。俺を見てくれた人がいる。
そんな人が今、ピンチになってる。いいのか、俺は…。
「…行かなきゃ」
「ん?」
俺は、立ち上がった。
「…どうするんだ?」
「あいつを、倒す」
「…へっ。懐かしい目だねぇ。ちょっと待ちな」
去ろうとした俺を止めた。
「どうした。手短にしろ」
「行くなら、俺もつれてけ」
「連れていく?どうやってだ」
振り向かずにそれに答えた。
「…簡単な話だ。俺と一緒に。魂を持つ。それなら、きっとあいつを倒せる」
「…あいつは裏切った。お前はどうだ」
後ろから、ふっと笑ったような気配が流れてきた。
「裏切るメリットがないね。お前なんかの体、必要ねぇ」
そういった。
俺も、つられて笑ってしまった。
「…ふふ。なら、いいだろう。一緒に、戦うか」
「ああ。これからよろしくな」
俺らは二人、含み笑いをしながら進んだ。
「…そういや、あんた名前なんて言うんだ?」
「俺か?言ってなかったっけか?」
「言ってたら聞かねぇよ」
「そうか」
並んで歩きながら。主導権を取り返す瞬間に、彼は言った。
「オーディン。俺は、オーディン・ハイラルゼンだ」
目が覚めた。俺の右腕は振り上げられていた。そして、目の前の彼女は、俺に向かって
「ごめんなさい…」
と言ってきた。心配かけてしまったという申し訳なさと、もう大丈夫だと言う安心させるために。彼女に
「…謝るなよ。こっちが悪いみたいじゃないか」
といった。
「く…そぉ…どうして出てこれたぁ!」
彼の疑問に。俺は
「古い友人のおかげでね」
と答え、心の中で「そうだろ?」とオーディンに言った。
「調子に乗るな」なんて。そんな声が冗談めいた声色で聞こえた気がした。
「まあ、いい。もう俺にお前は必要ない!お前らもろとも死ねぇ!」
そう言って彼はかかってきた。
迷いはない。きっと、今は後悔もない。
武器を取り出した。双剣に代わっていたのは、全く気が付かなかった。
「…行くぞ。オーディン」
「ああ」と。今度ははっきりと聞こえた。
“特殊役職 魔王神を獲得しました”




