ギルド嬢の本気
「おっらぁ!“龍息”!」
彼の口から紫色をした炎を吐き出した。あたりを蹂躙し、それは私の目の先まで迫った。
「“凝固空間”」
愛用の剣「空ノ御剣」のスキルである凝固空間を利用し、空間にバリアを張った。
空間はいい。「万物を凌駕する」と言い伝えられているだけあって、何物にも代えられないほどの強さを誇る。
圧倒的な技量差がない限り、適当な戦闘をしても勝つことが出来る。
「な、に?なんで、空中に剣が刺さってるんだ?」
「あら?空間は万物を凌駕するって、聞いてことがないの?」
「ちっ、めんどうだな…」
刀を引き抜き、もう一度構えた。
「見た感じ、むしろこちらのほうが手馴れのようね」
「へっ!そんな脅しなんて効かねぇよ!」
馬鹿正直に突っ込んでくる。振りかぶったこぶしを、私は躱し、横に体を流す彼の腹に剣の柄をめり込ませた。
「ふぐっ!」
「あら、ごめんなさい。うっかり当たってしまいました」
「く…この、アマぁ…!」
腹を抱えた体勢から、外からこぶしが飛んでくる。さっき吐き出した炎を纏わせ、脳天を目掛け飛んできた。
そのこぶしは、届くことはなかった。
耳元でガードを固めた剣に当たり、そのこぶしは止められた。
「この距離なら、適正ね」
「は?なにが」
「陥落しなさい。“強制恋情”」
刹那、彼の全身は震えた。
それは、恐怖なんかじゃない。一瞬で、きれいなものを見つけたような。真っ黒い空間の中に光る何かを目ざとく見つけたような。そんな感情。
それを無理矢理引き出す私のスキル。強制恋情。
「…」
「さあ、かわいいかわいい大好きな子に。洗いざらいすべて話してね♡」
「…は、はいぃ!!!!」
そうして、彼はすべてを話した。
話によると、彼がギャレンくんと出会ったのはあの日のおよそ二週間前。
悪さをしていたところに現れ、この仕事を持ちかけられたらしい。
「実は、結構儲けもよくって…。それに、あらかじめ届けられていた食べ物を販売するだけっていう簡単なものだったから…」
「そう…じゃあ、私はこれで。もう、ついて来ないで」
そういうと、彼は糸が切れたようにその場に倒れこんだ。
それを見た私は、急いで町に帰った。




