あの日と同じ景色
「霊魔の魔王、スズムラハイロだよ!」
横の頭蓋骨…もとい、ジュンヤがそう叫ぶ。
彼の顔は絶望に染まり、諦めが重くのしかかっていた。
「…そういうことだ。だから、お前には消えてもらう」
「ま、待ってくれ!お、俺はあんたの味方だ!だから、何があったのか…」
「お前に話す義理も義務もない。お前は敵だ。容赦はしない」
氷のように冷たい言葉。それとは裏腹に、はらわたは煮えくり返っていた。
「あ…」
「もう、いいんだ!にいさ、ん…早く、逃げ…」
「く、っそぉ…」
そう言いながら彼は、踵を返して逃げようとした。
「…結局、あいつも人間、か…“見ろ”」
期待はずれだという気持ちと、言わんこっちゃない、という思いが交錯した。
所詮は人間。どこまでいっても最後は自己中なのだ。
「⁉︎兄さん…!なんで…」
「…残念だ。もう少し、歯向かいでもしたら、認めてやってもよかったんだがな…」
そう言い、俺は人質の頭を握りしめる。
「何を…まさか!」
彼は、俺が何をしようとしているのかわかったのか、飛びかかってこようとした。
「無駄だ。“抑えられろ”」
抵抗虚しく。地面に勢いよく叩きつけられ、そのまま地面に貼り付けられた。
「やめ…」
「…」
そして、俺はあの日の惨状を、仕返した。
人質の頭と胴を握りしめた。頭には爪を食い込ませている。取れる心配は無い。
そして、外側に力を込めた。どんどん引っ張られていく体が、ずっと耐えることは不可能だ。次第に「パキッ」と間接が鳴り止み、代わりに少しずつ「ピキッ」という音に変わっていった。食い込ませていた爪はいつしか頭皮を貫通し、そこから血がどくどくと流れていた。
パキッ、ピキッ、ゴキッ。痛々しい音が次々と鳴り響く。
「やめろ…やめろぉ!!!!!」
もがき、手を伸ばし、それでも彼の腕が俺に届くことはない。
そうしていると、人質が何かを悟ったような顔をした。
「…にい…さ…」
「っ!!」
ついに、肉が剥がれ始めた。切れ目からは血がマーライオンのように噴き出していた。
ただそんな中、人質は笑い、目の前の彼に向かって
「にいさ…ん…ありがとう…」
ブチッ。
最期の言葉を伝えて、彼は引き千切られた。
思いっきり放り投げると、とめどめなく流れる血が血溜りを作った。
「…あああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「怒りで自我を無くしたか…俺も、同じだったな」
彼に哀愁とかつての自分を照らし合わせた目を向けた。
ただ、過去を振り返っても言いことはない。
失った人生に、過去は必要がない。
「…じゃあな。人であることを悔いろ」
過去に怒るやつとは、馬が合わない。突如失った人生。そんな苦しみから、ある種の解放をする時が来た。
怒り任せに突っ込んでくる彼をかわし、足を引っ掛ける。思ったほどスピードが出ていて、少し足をもってかれかけた。
地面に倒れ込む彼に、俺はあの日と同じ、罪を言葉にした。
残虐な言葉だ。
別れの言葉だ。
重い言葉だ。
でも、そんな罪を背負っても。俺はその言葉を躊躇なく発した。
「……“死ね”」




