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霊魔の魔王

同刻 とある町にて。



「いえ、まだあの城には調査隊が向かっている途中でして…」

「んなこたぁどうだっていいんだよ!早く。あの城に関するクエストを受けさせろ!」


さっきから何度も断ってるのに、目の前の冒険者は数日前に突如できた『城』を執拗に調べようとしてくる。


「ですから…」

「おい。どうした?」

「あ、マスター」


目の前に現れたのは、このギルドのギルドマスターだった。


「実は…」


と、先ほどから執拗に城への探索を申し込まれていることを伝えた。


「なるほど…いいよ。行かせてあげて」

「え!?い、いいんですか?」

「ああ。実は、調査隊の派遣から帰還予定日の1週間から大幅に遅れている状況なんだ。ならば、彼に捜索を任せ、可能であれば調査隊の救出を頼むのも悪くはない。あわよくば、何か有益な情報を持って帰ってくるかもしれないしな」


そういって笑う彼を見て。彼もまた『人間』であることをひしひしと感じた。


「…わかりました。では、そのようにお伝えします」


そういって冒険者のほうに向き合った。


「…では、調査隊の援護に向かってください。補給物資はギルド先の倉庫に保管してあります。それらから持ち出して向かってください。こちらが今回のクエストカードとなります」

「おう!ありがとな!実は、弟が丸1週間音信不通でな…ともかく、ありがとよ!」


眼帯をつけたいかつい見た目といい、勝手に勘違いしていたが、根は結構いい人なのかもしれないな~。


何もなく、無事に帰ってこればいいけど。



~??? ランク規格外~

「ここか…」


その城を目の前にして、俺は一つ固唾を飲み込んだ。

覇気というものなのか。その城はなぜか圧迫感がどっと押し寄せるようだった。


「カマトは…ここにはいないか…」


中を探すしかないな。武器を片手に、その城内へと足を踏み入れた。



~霊魔の魔王城 ランク規格外~


いやな気とじめじめとした空気があたりをこれでもかとつつんでいる。悪寒というか、なにか不幸が続くような気がした。

だが、そんなこと気にもならなかった。なぜなら


「…ちっ、数が多すぎやしねぇか!?」


さっきから倒しても倒しても霊魔達がとめどなく湧いてくるのだ。

実体がない霊魔がやってくるだけでも一苦労なのにそれが休みなくやってくるのは、中々骨が折れる。

それだけならまだよかったのだが…。


「うわっぷ!ここにもかよ!」


鼻先ぎりぎりを矢がかすめる。

このような罠が何度も何度も牙を剥いてきた。


「く…ジリ貧じゃねぇか…」


そう考えた瞬間だった。


ガコン


その音が鳴ったのは、下だと認識し。

下の状況を認識した時には、すでに遅かった。踏ん張ろうとほぼ反射的に足に力を込めたが、それは空を透かした。


「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」


勢いよく、方向感覚が消えてしまうぐらい何も見えない真っ暗な空間を落ちていった。



「………ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぐぇっ!」


背中を勢いよく打った。その衝撃であばらが2,3本ぽっきりと折れてしまった感覚がした。


「あ、たた…なんで急に…」

「に、い…さん…」


その声に、背中の痛みも物ともせず飛び起きた。


「カマト!?カマト!!?」

「にいさ…ダメだ、きちゃ…」


声の先を見ると。

禍々しい玉座に、真っ黒なシャンデリア等、狂気を感じるほど豪華で真っ黒な装飾ばかりの部屋のその真ん中。竜の腕のようなもので、見覚えのある姿を鷲掴みにする人影と、その横に頭蓋骨の形をした影があった。


「カマっ…!お前、何を…!」

「初めてだよ。ここまで来た人は」

「あ~そうだな!ハイロ~。こんなにしぶてぇと、やりがいあるってもんよ!」


ミステリアスな空気を纏う男と、陽気な雰囲気の頭蓋骨。

それも中々に疑問を持つが、それ以上に、俺は風の噂で見たことがある顔に目を見張った。


「あんた…まさか、“幻影の竜格”スズムラハイロ、なのか…?」


しかし、彼はその問いに答えず、ただ冷酷とこういった。



「…“動くな”」



刹那、体がピタリを固まった。


「どう、して…あんたがここ、に…」

「こいつはな、今はそんなひょろっちい名前じゃねぇ」

「?。どういう、ことだ?」


隣の頭蓋骨はニィっと笑い、こういった。



「こいつは、“霊魔の魔王”スズムラハイロ。だ」


絶望にまみれたその二つ名。それを伝えることが出来ないのではないか。そんなことを直感で悟った。

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