王宮への呼び出し
「…なるほど。あの日、そんなことが起こっていたんだな…」
「…はい」
唯一の生存者となった私は今日、王都へと赴いていた。
理由は、つい先日起こったことについての報告だった。
「しかし、グラダスを凌駕するものを葬ったハイロとやらもすごいが…そうか…グラダスが…」
「…申し訳、ありません…」
「人類希望」と呼ばれていた元ギルドマスター、グラダス。
天界と冥界が起こした争い「天冥衝突」そして、その争いに人間が巻き込まれ、戦争を余儀なくされた戦争「人類天冥戦争」。犠牲者は実に10万にものぼったその戦争で唯一神を葬った男。そんな男が、まるでごみをあしらうようにやられたんだ。悲しみよりも、恐怖がこみ上げるのは至極当然のことである。
「…それで、ハイロとやらは今…」
「…それが…」
私は、口が止まった。
私は見たのだ。あの日、ハイロに語り掛ける何かがいたのを。ハイロに手を伸ばす、何かがいたのを。
「…今は、自宅にて、療養中です」
「そうか…あのものにも、少し落ち着いたら報告をしに来いと伝えておけ」
「はい」と答えながら、私は王宮を後にした。
頭の中を駆け巡るのは昨日の情景だった。
これが悪い夢で、一度寝たら全部元通りで。そんな妄想でもやってなければ、摩耗した神経がすり減り切ってしまうと感じた。
「…はあ…」
ギルドもなくなってしまった私は、「鯨」が再建されるまでの間、国の援助を受けながら生活することを余儀なくされた。
特に何もやる気がなかった私は、町はずれの被害が行き届かなかったところにある喫茶店にやってきた。いつも通りコーヒーとビターチョコケーキを頼み、砂糖とミルクを入れ、ボーっとしながら混ぜていた。すると
「あ!ぎるどのおねえちゃん!」
と横から無邪気な声が急に聞こえた。
「ん?誰…ああ、セルカちゃん。こんにちは」
「うん!こんちは!」
声の主は、よく自宅前の公園で遊んでいる女の子だった。
「どうしたの?こんなところで…親御さんは?」
「あっち!つまんないはなししかしないからこっちにきたの!」
「そっか…なんか飲む?」
「うん!おれんじじゅーす!」
店員を呼び、オレンジジュースを頼み、しばらくして先に頼んでいたチョコケーキとオレンジジュースが届いた。
「はい、セルカちゃん」
「ん!ありがと!」
可愛く返事しながらセルカちゃんはごくごくとオレンジジュースを飲み始めたのを見て、私はチョコケーキを一口口に運んだ。ビターとはいえ、心なしかカカオが強いな。なんて、ありきたりな感想を持ちながらコーヒーを一口飲んだ。
「…ぷは~!おいし~!おねえちゃんありがとー!おれいにいいことおしえてあげる!」
「本当?嬉しいな~」
ま、子供のいいことは、はっきり言ってそこまで重大なことでもないし。そんなことを思いながらもう一口ケーキを食べようとフォークに手を伸ばし、フォークを持ち上げた。
「あのね!すっごくこわいおにいちゃんがね!『しろができろ』っていっただけでもりのなかでしろをつくったんだよ」
カタンと金属製の音がやけに耳に響いた。
「待って、それどこ」
「ん~とね~、あれ!『れっきょうのもり』!!」




