そこに残るは、別れの屍のみ。
「…ん?おかしいな…」
「どうした~?ラファ~」
私は、ハイロの世界のモニターをなんとなく見ながら、なぜか体を走る異変に不思議を覚えた。
確か、構築時の構想として。この男が技を放つ際にハイロが現れ、何とかピンチを救い危機は去る、という内容だったはずだ。
だが、ハイロの様子をふと見ると。
「まだ、森の中でさまよっている?」
「え?いやいや、そんなわけ…本当だ…どうして?」
「わかりません…試運転でも、ここはうまくいっていたはずなんですが…」
この世の理を壊す魔物、ケルベロス。だが、そんなシナリオさえも理の範疇。あれが原因という可能性はゼロだ。
つまり、もう一つ。別の要因があるはずだ。
「おかしいな…」
そうは思っても、干渉権はこちらにあるわけで。その時はまだ、そこまで重大に考えていなかった。
「…やっぱり、来ない、か…」
「く…そ、がぁ!」
死力を振り絞るように、彼は水の魔法でできた鯨の槍を投げ飛ばした。
しかし、虚しくもそれは、ジュッと蒸発して消えてしまった。
「…すまない、お前ら…」
「諦めないでください!マスター!」
絶体絶命。それは、彼女が現れても変わることはなかった。
「マスターに手を出した罪…とってもら…」
「邪魔だ。消えろ」
目で追うどころか、何も見えなかった。
ただ、気付けば、彼女の四肢は下に転がっていた。
「ユメカ!」
愛の力とでもいうのか。どこからか沸き上がったのだろう力でグラダスはユメカの元まで飛び出した。
だが、時すでに遅し。彼は胴と頭にだけになった彼女を抱きかかえた。
「―――――――――」
「喋るな…血が、出るだろ…」
そうはいっても、彼女の体からはすでに水溜まりほど血が溢れていた。
「なあ、おい、目、開けろよ…」
「」
応答も、動きもせず。その肉塊はただそこに存在するだけになった。
「…T')'&(#$%&'('(&%$#'&&'%$RS%R&$&%$%&%'!!!!!!!!!!!!!!」
彼は、言葉にならない怒りを叫んだ。
地を揺らし、空間を震わした。
「うるさいな…じゃあ、終わらそっか」
刹那、花々が地に根を這い巡らせた。
「“悲岸花”」
そこから先は、うまく言い表すことはできない。ただただ、そこには地獄絵図が広がるばかりだった。
「…うう…」
その後、目を覚ましたのは。すでに事が終わり、まるで魔物にでもなったのかと勘違いするハイロがいて。そして、彼が去ったあと。そこに残っていたのは地獄に絶えたものの屍。そして
「ヴァル…さん…」
私の、英雄の首だった。




