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違法契約

「“丸呑み”!」


鯨が大きく口を開け、破壊者を飲み込もうとした。しかし…。


「ふんっ!」


と腕を一振り。たったそれだけでパンッと鯨は弾けて消えてしまった。


「!?」

「へへ…さあ、どんどん攻撃してきなよ!」

「…ちっ!“鯨の槍”“ボディプレス”!


高威力の槍と巨体の落下が四方八方を塞ぎ、飛び掛かった。

右に、左に。彼は軽々しい足取りでその槍をすべて躱した。


「ちっ…」

「…?」


その足取りに、なぜか既視感を覚えていた。

そう、いつか眺めていたあのギルドの合格試験。確かあの日、ハイロも同じぐらい軽い足取りだった。


「どうして…」

「くそ!こうなったら!“鯨の鎧(ホエール・アーマー)”!」


宙にいる鯨が、グラダスさんを丸呑みした。

中からグラダスさんが出た時、彼の姿は変わっていた。


全身を水の鎧で覆い、鯨のデザインが施された大剣を担いでいた。


「……神に逆らったこの力、受けてみろ!“王の威圧”!!!!!!!!!!!」


放ったのは、敵全体に独自に編み出した状態異常「無力化」を付与するデバフ魔法だ。

無力化を受けたものは戦闘が終わるまで、全ステータスを0倍にするという、つまり最終奥義のような物だ。

だがその分、反動はかなりでかい。

というのも、この魔法を放つ代償に、体の四肢のうち、一つが全く機能しなくなるというものだ。

さしずめ、最後の最後の究極奥義、ということだ。


「今回は、左腕、か…まあ、それより、よくも俺のギルドで好き勝手……」


神を凌駕した力。それはつまり全生物を凌駕する力を持つということだ。

そんな力に人が耐えられるわけがない。


なのに


「…どうして、お前…立っていられるんだ…?」

「…悪いが、ヴァルのためなら、この世の理さえも犯せるんだ」


彼はそういうと、不敵に笑い、グラダスさんを見下した。


「くそ…なぜ、お前は立てている!」

「ああ、紹介するよ。僕の使い魔ケルベロスだ」


そう言って、彼の下からは一匹の化け物が出てきた。

首は3つに割れ、その一つ一つから頭が生えていた。生えている歯がすべて牙になっていて、塞ぎきれていない口からよだれがだらだらと流れていた。


「ケル…ベロス?」

「そんな…!」


ケルベロスは本来、使い魔として従えてはいけない、いわゆる「違法獣」と呼ばれる類に分類される魔物だ。

その能力は強大だが、その反面。使い魔として契約した場合、理を壊してしまう可能性があるため、システム的に契約が交わせないようになっている。


「何を…対価にだした…」

「ん~、そうだねぇ…」


ただ、そんな魔物とも契約方法がある。

その契約に見合った「対価」を差し出すことだ。

もちろん、お金なんかじゃない。その対価は様々種類がある。

ある時はものであり。

ある時は体であり。

そしてある時は、概念であったりする。


「…この世に対する慈悲、さ」


彼はそう呟き、不敵に笑った。


「さあ、邪魔をしたんだ。君にも、対価を払ってもらおうか!!!」


手をいっぱいに広げた彼の背後には、魔法で作られた花が所狭しと咲き乱れた。

真紅に染まった花は、おぼろげに血を連想させた。

そんな景色に、絶対に違う感情が沸き上がって、思わず


「…綺麗…」


と、消えるような声で呟いてしまった。


「さあ、壊そう。やっぱり、こんな世界は間違っていたんだ!」

「ちっ…万策、尽きたか…」


真紅の色が、さらに輝きだし、今にも飛び掛かってきそうだった。

自分でも、どうして口から出たのか。そう思うほどに叶わない願いをこぼした。


「…ハイロさん…来て…!」

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