表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/70

二章 きっかけ

「くそ…やられた…!」


町の中をかける。その反対からは人々が逃げるように走ってくる。

町中を、黒煙ともう一つ。紫のオーラが漂っていた。


「ヴァルさん…無事でいてくれ…!」


見慣れた通りを抜け、そこを曲がった先にあるはずのギルドに目を向けた。そこには…。



「あれ?遅かったね。ハイロくん」

「おぉぉぉぉまぁぁぁぁぁぁぁえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!」



そこで見た惨状は、あまりに受け入れられないものだった。


「…グラダス…さん」


首は、無事だった。体は何もかも、消え去っていた。

初めて、俺を組織に迎え入れてくれた人を、なくした。


「…ユメカ…さん」


バラされていた。四肢をすべて接がれ、首も離れていた。その周りには、がら空きになった恥部を襲おうと群がるゴブリンが集まっていた。

正直、死体に興奮をしているゴブリンというのは吐き気を催すほど気分の悪いものだった。


「よくも…よくもお前!!!」

「でもさ、君たちが悪いんだ。だって、僕をないがしろにするんだからさ」


そう言って、彼は引きずっていた人を、俺に見せた。

きれいな金髪。白い肌。スラっとした姿。見慣れたその姿は、ボロボロにされ、傷だらけでいた。


「ヴァル………さん……………………」

「ん?どうしたの?」


いつも担いでいた槍は、放り捨てられていた。

そんな…嘘だ…そんなわけがない…。

直視が、できない。きっと見てしまえば()()()()()()()()()気がした。


「実はね、ヴァル、君に脅されすぎて僕じゃなくて君を選んだんだ。悪い子だね全く~」

「…え?」


思わず見てしまった。

見た瞬間、彼はヴァルさんの腹にこぶしを入れた。

それが、俺のスイッチを入れた。


「やめろ!!!!!!!!!!!!!!」


とびかかり、防ごうとする彼に俺は高らかに


「“動くな”!!!!!!!!!!!!!!」


と叫んだ。


刹那。急に下から何かが飛び出してきた。

いきなりのことで反応ができず、俺は吹き飛ばされていった。


「ぐっ!」

「…グルルルルルルル」


何事かとみてみると、そこには犬の姿をした魔物がいた。

ただ、その首は三つに分かれており、三つの顔がそれぞれにくっついていた。


「なんだ…それ」

「紹介するよ。僕の使い魔、『ケルベロス』だよ」

「グワアアアアアア!」


ケルベロスは挨拶代わりに大声で吠えてきた。

そこで、違和感に気が付いた。


「…なんで、お前は動けてるんだ?」


さっき、動くなといったばかりなのに、彼はケルベロスのことを撫でていた。


「ん?なんでか?そりゃ、ケルベロスのスキルがあるからね」

「…“ステータス開示”」

“ケルベロス Lv,100


身体筋力 1200 身体魔力 2000 知識 0 身体効率 100


メインスキル 冥界の番犬 Lv,4 冥界の炎などの冥界の魔法が使用でき、知識ステータスが0になるかわりに身体ステータスが二倍になる


サブスキル 無効 デバフ系統を無視する

      冥犬 冥界系統の魔法の威力が上昇する

      異常契約 ーERROR メッセージが正しく生成されません-


バットスキル 異常契約 ーERROR メッセージが正しく生成されません-”

「…くそ、まじかよ!」


そう言っている間にも、ヴァルさんの体をこぶしでえぐっていった。


「やめろ!」

「僕はやめてもいいんだけど…ヴァルが中々トラウマを克服できないみたいでね。ほら、言ってごらん?ギャレンさんのことが好きなんです、って」

「…いわない、ね…」

「ヴァルさん!?」


きっと、ヴァルさんも認めるだろうと思った。ただ、ヴァルさんの口からは拒否の声が漏れた。


「なんで…こんな時にまでプライドなんて張らないでくださいよ!!!」

「…いや、だね…だって…」


そういうと、ヴァルさんはこっちを見た。


「どうして!?どうしてこんな状況で断る理由があるんだ!おかしいでしょ!さっさと折れれば…折れれば命は助かるのに!!!」

「…だって…」


こっちを見て、ヴァルさんは見たことないほどやさしい笑顔で。悟った笑顔で。



「私は…ハイロ。お前が好」

「つまらない」


彼はそう言って、頭と胴を握った。

そして、徐々にだが、外側へと力を込めていた。


「やめろ!!!!」


反射的にそう叫んで飛びかかった。

しかし


「グルァ!」

「ぐっ!」


ケルベロスに抑えられてしまった。


「は…なせ…」

「無理さ。どんなに君が強くたって、ケルベロスにはかなわない。さ、君の愛の最期。そして、僕らの愛の…」


ぎちぎちと。音がやがて、グキッとなった。


「や…めろ…おおお!!!手を…出す、なぁ!」

「さあ、あんな男のしがらみから解放してあげるからねぇ!!!!」


「…ハイロ、好きだぞ」


その声に、涙が溢れてきた。


「“やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ”!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


不敵に笑ったそいつに、俺の言葉は届かなかった。



ぶちっ

と、首が、もげた。

どくどくと流れるヴァルさんの残骸を、彼は嬉々として飲んでいた。


「ああ!いい、いい!やっと、やっと…やっと一緒になれたんだ!もう怖くないさ!これで、もう!」

「…………あ、ああ…」


惨劇が、終わった。


この世界で愛した人は。この世界で慕った人は。この世界で仲良くした人は。



もう、いない。



なにかが、こみ上げてきた。涙はとっくに溢れていた。ただ、もう一つ。なにかが、俺を何かに()()()()()()()()()()がこみ上げてきた。


失いたくない一心で。


復讐したい一心で。


俺はその何かに、すがった。



“…力を、貸そうか?”

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ