一章 不安的中
転機は、いつ来るかわからず、人生が180度変わるから、転機なんだ。
行き先の分かりきっている転機は、ただの「決まった運命」だ。
それを踏まえて。転機は、やってきた。俺の元に。
いつも通り、変わらない日常だった。
朝は規則正しく起きて。日課の素振りもして。豪華な食材を使った朝ごはんを食べて。いつも通りにギルドへ向かった。
「おはよう、ハイロ」
「ヴァルさん、おはようございます」
ある程度ヴァルさんと話すことにも耐性を得た俺は普通に会話をした。
「…なあ、ハイロ」
「?、どうしました?」
「最近、妙に見られているような気がするというか…」
「ヴァルさんも?」
そう。ヴァルさんといるとき。妙に視線を感じることがある。
嫉妬のような、それでいて未来を夢見るような視線だ。それが毎日続くから最近は気のせいではないような気もしていた。
「…怖いんだ、助けてくれないか?」
「ん~…」
俺も助けられるならとっくに助けてるのだが、あいにくとその視線の出所がいまだにわからないのだ。
「すみません、なるべく早いうちにどうにかしますね」
「すまない、ありがとうな」
朝の短い会話を交わし、俺たちはギルドに入っていった。
「おはようございま~す」
「おはよう。今日の今日のクエストはなんだ?」
俺たちを見ると、ギルド嬢は少しバタついた後、一枚の紙を渡された。
「これは?」
「それが、出所不明の個人あての依頼なんですよ」
出所不明?なにやら不穏な雰囲気を醸し出す依頼に首をかしげながらクエストを確認した。
“助けてほしい ランク???
詳細は、現地で話す。お願いだ、来てくれ
クエスト条件 ハイロのソロ挑戦”
「?ど、どういうことだ…?」
「こんな奇妙なクエストは私も初めてみます…」
何が起こるか全くわからないクエストに首をかしげる。
「とりあえず、行ってみますね」
「あ、はい。では、少しお待ちください」
「…ハイロ、大丈夫なのか?」
クエストカードを発行してもらっている間に、ヴァルさんがそう聞いてきた。
「…まあ、危なくなったら緊急で帰ってきますので」
「そうか…まあ、何かあったら遠慮なく頼ってくれよ」
「はい」
談笑を広げてると、ギルドカードと一個の石が渡された。
「これは?」
「ダンジョンやクエストの進行中に危険を感じた際にこの町まで戻ってこれる魔道具です」
「なる、ほど…わかりました。ありがとうございます」
どうやら、不吉な予感を感じ取っているのは俺だけじゃないようだ。
…何もおきなけきゃいいな…。内側からくる意味のわからない恐怖心に、現実にならないようにとそう願った。
~??? ランク?~
「どこだ…ここ…」
薄気味の悪い森だった。特に脅威があるわけでもなく。魔物も何もいなかった。
それどころか、素材もなにも持っていけるものはなかった。
「おかしいな…どこのもいないじゃないか…」
どこを探しても人影は見つからなかった。マップにもそれらしき気配は乗っていない。
間違えたか…?そう思ったが何度確かめても行先はここに戻ってきたのだ。
「…おかしいな…」
同じ言葉を二度も繰り返して、ようやく進展があった。
木にメモ用紙が張り付けられていた。
「なんだこれ」
メモ用紙にはこう書かれていた。
「ハイロさん。こんな罠にかかってくれてありがとうね!おかげで、ヴァルを悪い催眠から解かすことができそうだ。誤解はしないでほしい。だって、これは君も愛するヴァルのためなんだ。お前みたいな悪い虫がくっついてたら、ヴァルも幸せになれないじゃないか。だからね、わかってほしいんだ。金輪際、ヴァルには近づくなよ」
「“ジャニズムにテレポート”!!!!!」
不安が、的中してしまった。
不吉な予感が、現実となってしまった。




