残念だが、優しくないんだ。
「は、腹か?見たことないのが普通だと思うんだが…」
「…なら、お前運がいいぜ」
太刀を構え、体に力を込めた。
途端、翼と片腕が現れた。その翼を俺は左手で広げ
「お前、腹の中見せてやるから」
「…ふぁ?」
気持ち悪い虫は駆除しなきゃ、な。
「いっ!ちょ!あだぁ…!ちょま、くそ!何で追いつくんだよ!」
「“刺せ!刺せ!落とせ!飛ばせ!”」
逃げまくる虫の先。当たるだろうと予想した先々の地面を地形変化させ、罠を仕掛け、ある地点に誘導した。
「あ、洞穴!ラッキー!」
なんか現代人じゃね?
と…人が入れないほど小さな洞穴の中に小さくなって入っていってしまった。
「お前!人のくせに強すぎだ!もっと手加減を…」
「“発火”!」
虫の入った洞穴の中目掛け、俺はそう言った。
中から赤い光が漏れた瞬間。
「あっっっっっつぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!」
と、中からは断末魔が響いた。
「あっち、あっち!…あれ?」
「どうしたインセクター。出口でも塞がれたのか?」
「お前えええええええええええええええええ!」
俺はこつんこつんと体当たりの感覚を指先で感じながら、近くにあった石で出口をふさいだ。
「わかった!俺の負けだ!降参する!だから、命だけは…命だけは!!!」
「そうだな…お前も、生きてるんだもんな…」
小石を前後に揺らし、期待を少し持たせながら言う。
「あ、ああ!だ、だから…」
しかし俺の心はとっくに決まっていた。
「けど、俺は敵を許さない性分でね。どうしても、助ける気にはなれないんだ。すまんな」
「い、いやあああああああ!」
断末魔が響いた後、「ジュウ…」と音が鳴り声が途切れた。
“ボス インセクター討伐しました。1分後に入り口へとワープします”
“Lv,UP 53→57”
気を失っているヴァルさんを担ぎ上げながらインセクターの死骸を取り出し、とりあえずスキルに仕舞っておいた。
まったく、むしにがてなら無理して来なくったっていいのに…。
「…ま、可愛いからいっか」
そんなことを考えてたらあっという間に1分たった。
「…すぅ」
「寝息?」
にわかに信じられない声を聞きながら、入口へとワープしていった。
「…はあ。苦手なものもわからないんじゃあ…ねぇ」
「グルルルルルルルルルル…」
光になって消えていった。その後ろを眺めながら、使い魔の顎を撫でてやった。
「…いつかはやりあうやつだ。覚えておいてね」
「グルル…」
そう、いつか。
絶対に、僕だけのものに。
そのためなら、どんな理だって犯せられる。




