長寿の長耳 後編
ケルと楽しく雑談を交わしている間に、じいさんが帰ってきた。
「ハイロ、終わったぞ~」
「ありがとうございます!」
しかし、手渡されたコートには腕も翼も見当たらなかった。
「…あれ?」
「まあまあ。一回着てみろ」
まさか取られたのか?とそんなことを考えながら着てみる。瞬間。
翼が、広がり。
片腕が、服の周りを守るように浮いていた。
「!?こ、これは…」
「おお。成功じゃ!あんまりずっとあっても邪魔じゃろ?じゃから、着なかったり使わなかったりするときはその装備に仕舞われるようにしたんじゃ」
流石だ。そんな発想はふつう生まれるわけがない。
ケルを見てみると、彼もまたキラキラした目で発想力に関心をしていた。
「これでかなり実用的になったじゃろ?」
「はい、ありがとうございます!」
しまってある間の翼は翼の小さな模様みたいな感じで可愛らしいデザインになっていた。
腕は左胸の辺りに小さくあった。
強くなったコートを握りしめ、俺はキラキラした目で
「大切に、します!」
と、力強く言った。
「…では、用も済んだので俺はこれにて」
「ちょっと待て。渡すもんがある」
俺がスマートに店を出ようとした時、じいさんがそう言って奥で何かをごそごそと探し始めた。
「あったあった。これ、土産じゃ。持ってけ」
手渡されたのは一つのネックレスだった。
「これは…」
疑問を覚え、訪ねてみるとじいさんはそっと近づき
「…お前さん、あのねーちゃんが好きなんだろ?」
といたずらに笑いながら言った。
「えっ!ちょ、なに、えっ」
あまりに急に確信を突かれ、思わずそうきょどってしまった。
「はっはっは!こうも何百年も生きてたらのぉ。若造の気持ち程度手に取るように察せるわい」
「あはは…まあ、そうですね」
「じゃから、わしからの激励品じゃ。どんな女でもプレゼントでネックレスを手渡せば一発じゃよ」
女経験はかけらもない俺にとって、そんな助言はかなり助かった。
「ハイロさん。じいさん、子供産んだ次の日に俺を連れて逃げられたような人なんで女に関しては信じない方がいいですよ」
かなり助かったその助言の信頼性は限りなくゼロになった。
「…まあ、ありがたく頂戴しますね。では」
「ありがとうございました。またのご来店を」
「道徳心と女だけは守り抜けよ~」
そんな暖かい送り出しと余計なお世話を受け、俺は家に帰った。




