知 っ て た
あんまり長居するわけにもいかず、俺はもう一つのクエストを消化することにした。
「あ、あの」
「ん?なんだ?」
俺は近くに居た冒険者にあることを尋ねた。
「あの、鍛冶をしているおじいさんを捜したことはありますか?」
「ああ、俺はないけど、上位冒険者たちはみんなあったことがあるって聞いたことがあるぞ」
そのかもしれないは、かなり確実に。
「その、なんで、上位冒険者たちなんですか?」
「なんでも、そのクエストは不定期かつ殆ど依頼されることはなく、見つけた人には依頼主からこの世のものとは思えない装備をもらえるっていう。でも、それは噂だって聞いたけど…」
かなり確実になったものは、確信へと変わった。
「…まさかお前さん…」
「ありがとうございます!では!」
「ああ!お、俺にも!!!」
何か叫んでいたが、それを無視して俺は走り始めた。
「あ、えっと…ジェラーさん、ですか?」
「ん?君は…ああ、飛び級の新人くんじゃないか。どうしたんだい?」
俺が訪ねたのは、上位冒険者のジェラーさんだ。鯨内のランキングで12位の確かな実力者だ。
更に、他の冒険者のタレコミで俺と同じクエストを受けたことがあるという噂を聞いたのだ。
「実は、おじいさんを捜すクエストをやっていまして…」
「…ほう」
「それで、冒険者に聞けばわかるって言われて…」
そう言うと、彼はフッと笑い
「それで、どこに居そうかを教えてほしいんだね」
「はい。なので、教えてもらえれば…」
俺はそこで気付いた。
室内にいたはずが、なぜか闘技場のような場所に来ていた。
「…え」
「知っている」
唖然とする俺に、重要なことを言ってのけた。
「俺はそのじいさんがどこにいるかを知ってる」
「えっと…なら、教えてくれると…」
「だが、俺も彼の装備が欲しい」
彼はそう言うと。本を取り出した。
本は何か不気味な文字を浮かばせながら浮いていた。
「だから、ちょっとした賭けをしよう」
「賭、け?」
背景に七色に光る魔法を携え
「君が勝ったら教えてあげる。僕が勝ったら、そのクエストを引き継がせろ」
そう言って、いきなり戦闘を仕掛けてきた。
「…そんなもの?弱いねぇ」
「あ…うぅ…」
青のコートに、血が少し跳ねていた。
先程までの威勢はどこへやら。呆気なくやられたそれは地面に這いつくばり唸っていた。
「さて、約束は守ってもらおうか」
俺は彼を持ち上げ、顔を見た。
「…爺さんの居場所はどこだ?」
「…列強の森の、入り口の巨大樹木の中、です」
有益な情報を手に入れた俺は、“治れ”とだけ言って捜しに行った。
「…フッ。スズムラハイロ、か…」
何とか仰向けになった僕は、明るい空をいっぱいに抱え、そう呟いた。
「治れ、か…」
彼の狂気と善意に立ち会った僕は、もう二度と彼に関わらず。彼のことを口にしないだろう。
彼は、怒った菩薩よりも。怒った幻影竜よりも。ただひたすらに怖かった。




