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「お姉ちゃん!」

道中、わーわーと歳不相応な侮辱を受けながらギルドまで行った。

大人でさえたじろいでしまう言葉に俺含めたすべての大人たちが唖然としていた。そんななか何食わぬ顔であたかも「子供だから仕方ない」とでもいうかのような顔で母親は見ていた。

そんなことが30分続き、やっとの思いでギルドに着いた。


「着きました。ここです」

「あらあら、どうもありがとう…」

「早く入って姉ちゃんに確認するよ!母さん!」


母親の感謝はギャレンくんにかき消された。


「はいはい…ヴァルを呼んでもらってもいいかしら?」

「はい。ちょっと待ってください」

「逃げるなよお前!」

「はいはい…」


俺はそう言ってヴァルさんを捜しに行った。


ギャレンくんの様子を見てみたら、少しソワソワしてる気がした。



「あ、ヴァルさ~ん!」

「ん?ああ、ハイロか。どうしたんだ?」


少し探したのち、ヴァルさんを見つけることが出来た。


「実は…」


そう言って、何で探したのか事の顛末をすべて話した。


「…それはすまなかった。すぐに向かう。案内願えるか?」

「はい。こっちです」


そう言った瞬間、目の前に


“サブクエスト 「お姉ちゃん!」発生”


と出てきた。

まさか。きっと別の場所でフラグが立っただけだ。そんなことを思いながら暫く談笑しながら二人を残したフロントに向かった。



「あ、姉ちゃん!」

「ギャレン…全く…」


ギャレンくんはヴァルさんを見つけるなり、ヴァルさんに飛びついた。

ぐりぐりと顔を擦り付ける彼を見たって別に嫉妬なんてないんだからね!


「こら、ギャレン。聞きたいことがあるんでしょ?」

「あ!そうだ、姉ちゃん!こんなやつなんかとやましいことなんてしないよね?ねえ!」

「ええっ?ど、どういうことだ?」


急に生々しい話をされ、ヴァルさんはたじろいでしまった。


「姉ちゃん…姉ちゃん…こんな男なんかに騙されないでよぉ…」


もうなんか一周回って面白くなってしまった俺は、一つのコントとしてみることにした。


「な、何か誤解してないか?私は別にハイロとは…」

「キィー!!!姉ちゃん。、ハイロさん呼びしてるぅ!!!おのれぇ…許さないぞ…」

「メンヘラかよ。てか女かよ」


思わず突っ込んでしまった。


「ギャレン、いい加減に…」

「そもそも!姉ちゃんは騙されやすいんだ!こんな男なんかに騙されてるんだから!」


そこで、プチッといってしまった。


「ギャレン!いい加減に…」


「ギャレン。今なんて言った?」


代償がこもらないように語気を強め、そう問うた。


「えっ…」


あまりに急に俺が怒ったからか。言論統制を使わずに黙りこくってしまった。


「なんて言ったか聞いてんだ。逃げんな」

「…こんな男に、騙されてるんだ。って、言いました…」

「…いいかギャレン。よく聞け」


子どもに説教するように、俺は少し高圧的に話を進めた。


「確かに、姉ちゃんを大切に思うことは大切だと思う。だけど、それと姉ちゃんを困らせるほど暴走するのはおかしいぞ」

「でも、お前は…」

「お前じゃない。姉貴を思う気持ちがあるなら。もう少し道徳を学べ。そんなに流暢に物喋れるんだったらな」


そこまで言うと、ついにオイオイと泣き始めてしまった。

しまった、と思いヴァルさんの方に目線を合わせると、いきなり耳元に口を近づけてきた。

母親の方はギャレンを慰め、同時に諭すのに手一杯だった。


「ちょっ、ヴァルさ…」

「ありがとうな。これで、ギャレンも少しは大人しくなると思う」

「あ、いえ。俺はそんな…」


そう照れながら返事をすると


“サブクエスト 「お姉ちゃん!」達成”


そう出てきた。

どうやら、あれは幻覚でも勘違いでもなかったらしい、と思っていたら


「…お兄ちゃん、ごめんなさい、言い過ぎました…」


とギャレンが謝ってきてくれた。


「うん。これからは、あんなこと言わないようにね」

「…はい。お姉ちゃんも頑張ってね」


そう言って、ギャレンは連れられてギルドを出て行った。


「すみません、ヴァルさん。ありがとうございました」

「いや、こっちこそすまなかった。これから何かあるのか?」

「はい。これからサブクエストを攻略しに行きます」

「そうか。気をつけてな」


はい、と答えて俺もギルドから出て行った。



(姉ちゃん…大丈夫、かな?)


不安感が、この先のハイロの人生を変えることになるとは。ハイロどころか神ですら予想だにしていなかった。

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