サシ呑み
まあそんなこともあり、晴れて謹慎処分となった俺は足早に帰り、最初の日に行ったあの食事処に行った。
…臭くないよな?なんてことを考えながら入ると
「いらっしゃい!ヴァルさんならあそこの奥の席にいますよ!」
「どうも」
丁寧な接客に軽くお辞儀をして案内された方を向いた。
直後、暴風に見間違うほどの圧が飛んできた。なぜか、腕を組み、横には槍を構えていた。
あまりにも威圧的で、命の危機を感じるたたずまいに隣をすれ違った店員に消えるような細く、
小さい声で
「…チェンジで」
スルーされながら、そう呟いた。
「ハイロ。どういうことか説明をしてもらおうか」
「あははは…えっとぉ…」
気まずい。ただただそれだけだった。
店に入ってから30分。沈黙の中楽しい楽しい食事をすすめていた。そんな中、ヴァルさんがようやく話題を振った、と思ったら…。
「お前はそこまで馬鹿じゃないと思っていたんだが…それは私の単なる勘違いだったのか?」
「…すんません」
「謝るなら、何があったのか分かりやすく教えてくれないか?」
「…実は…」
マスターに説明したようにまた説明をした。
そこから、マスターと同じ様な指摘をされ、またも俺は指導を受けた。
「…全く。ギルドをクビになって居たらと思うとヒヤヒヤしたぞ」
「す、すいません…」
「…まあ、無事ならいいんだ」
そう言って安堵するヴァルさんに俺は
「いや、それが…僕、2週間謹慎になっちゃって…はは…」
そう申し訳なく言った。
頭を抱えて、ヴァルさんはぐったりとしてしまった。
「ははって…はぁ…まあ、今回のことを考えれば、まだ優しい方なのかもな」
「そ、そうな」
「だが、お前がやったことは拷問だ。今後、こんなことないようにな」
「はいっ!気をつけます!」
ヴァルさんの説教はそれでお終い。そこからの話題はギルドに入ったことの改めての祝い。まだ出会って数ヶ月しか経ってないこと。俺のことを押し倒したことの話をすると「もう…忘れろ…」とたじろいでいてかなり可愛かった。
とまあ、新人社会人たちの呑みのような話題で盛り上がるとどうしても酒は進むようで。
「…ヴァルさん。もうそろそろやばいんじゃないんですか?」
「そぉんらころ…ないのならあ?」
ヴァルさんはとうとう酔い潰れてしまった。
そ、そんなつもりはないけど、酔ったヴァルさんの声もなかなかに艶かしくて…じゃない!違う!
「ヴァルさん、もうそろそろ帰りましょうか」
「やら!まら食べるのぉ…」
「飲み過ぎです。早く立ってください…よっと」
「離せぇ!ハイロォ…ぐぅ…」
なんともマイペースな彼女はそう言って俺の背中で寝てしまった。
スヤスヤと寝息を立てるたびに、俺の心臓は跳ねた。嬉しい跳ねなのだけれど、同時に自分の理性に対して不安感を覚える感覚も伴った。
そして街を歩く最中、重大なことに気がついた。
「…俺ヴァルさんの家しらねぇ」




