「マスター、違うんです!」
「…で、どういうこと?」
「…いやぁ‥はは…」
ギルドに送検された俺はつくなりなんなりマスターに呼ばれた。
圧が凄すぎて今にもつぶれそうだ…。
「宗教団体の崩壊。精神狂化魔法の対人使用。精神錯乱による治癒協会搬送車多数。その他etc…。何か言い訳は?」
「ありません…」
「なら…」
「お前は何してくれとんじゃごらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
そんな怒号が部屋中を揺らした。
「すみません…」
「すみませんじゃないよ!何?動機が『どうしてもムカついてしまって』って!ガキか!」
「そ、それには、深~いわけが…」
「言い訳なんて聞きたくねぇの!クビにしてやろうか?ああ!?」
まるで中学でやんちゃやらかした奴に怒るように大激怒が飛んできた。
「はぁ…なんて怒りたいんだけどねぇ…」
「めっちゃ怒ってなかった?」
「なんかあったんでしょ?ハイロくん」
俺の疑問はそっちのけで。何もかも見透かしてるといわんばかりの目でそう言った。
「…実は…」
あの一件で起きたことや分かったことをすべて話した。
クエストに行った町では、百足を崇める宗教があったことを。その宗教では生贄を差し出す風潮があったこと。ある一家がいじめにあっていて、そこの娘が無断で生贄に差し出されたこと。宗教に関しては一家を貶めるための単なるウソだったこと。それを知って、今回の一件を起こしたこと。
すべてを話し終えた後、マスターは一度大きくうなずき
「なるほど。じゃあ、一応そう説明しておくよ」
「はい。お願いし…」
「ただ、これだけは言わせてもらう」
許されるのかと思ったのもつかの間。また少し怒気を含んだ声になった。
少し身震いを感じ
「ゴクリ…」
と息をのんだ。その先に続いた言葉は
「ハイロは優しすぎる。味方に対しては特に」
であった。
「…え?」
「いいか?優しいことは大切なことだ。ただ、行き過ぎた優しさは、時に凶器となる。それを忘れないでほしい」
行き過ぎた…やさしさ…。
自覚はない。ただ、確かにいつでも。前の世界でさえも自分の対立位置にはかなりの敵対意識を持っていた気がする。
確かに、行き過ぎたものはいつだって危ない。ただ…
「…でも、俺はこのままでいます」
「なぜ?」
俺は、俺のままで。たとえ直した方がよくとも。俺は…。
「俺は、このやさしさが武器です。たとえ、誰に何を言われても、直す気はありません」
「…はぁ…じゃ、勝手にしな」
呆れられた。当然だ。
だけど、これがなくなればきっと冒険者をやるモチベーションはなくなる。
何かを守れるから。何かを守る力が持てるから、ここを…この職業を選んだんだ。
「…ハイロ」
「はい?」
「言い忘れてことが2つ。いい方と悪い方。どっちから聞きたい?」
急に聞かれて慌てつつも考える。
数瞬の思考の中、ぱっと思いついた方を口に出した。
「い、いい方からで!」
「ヴァル、今日の7時にあの食処で待ってるってよ」
その報告にフワッと心を浮かすと
「んで、ハイロ。お前2週間謹慎。家で反省しろ」
「…え」
一気に地獄へと突き落とされた。そんな俺を笑うかのように
“ストーリークエスト 許されざる行為クリア”
というウィンドウが表示された。




