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真夜中奇譚集  作者: 神楽 羊
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白魔道士に出会った話

世の中には不思議な力を秘めた人がいるのです。

これはある繁華街のバーでバーテンダーをしていた時の話だ。僕はそこでツバメちゃんという女の子に出会った。


元々はその店に通っていたお客さんだったが話をするうちに仲良くなりお互いの時間が空いている時にプライベートでも時々遊びに行く様になった。


彼女はボディケア関係の仕事をしていて僕の肩こりを軽くするストレッチのやり方などを教えてくれた、お返しに料理のレシピや作り方のちょっとしたコツを教えたり、マジックを教えたりした。

いつものように夕方適当に時間を決めて行きつけの居酒屋で合流し酒を飲みながら他愛もない話をしている時、ツバメがそういえば、と何でもない事を口にする様にサラリと話し始める。


「君に言ってなかった事があるんだ。信じてくれないかもしれないけれどそれでも構わない。私はね魔法が使えるんだよ。」


そう言うと彼女は悪戯っぽく笑った。猫みたいだと僕は思った。


「どういう事?もしかして指先から炎が出せたりするって事?それなら俺にも教えて欲しい!師匠って呼んでいい?」


二十歳を過ぎても厨二病を拗らせていた僕は本気でツバメ師匠に弟子入りしようと真剣にお願いをした。


「いやぁ炎は出せないな。スピリタスは飲めるけど。この力は修行したからだとかじゃないんだ。気が付けば私の中に備わっていたから。

私はね、回復魔法が使えるの。そして体を触ればその人がどこに悪い物があるか分かる。」


その口調から冗談ではない事が伝わって来る、彼女はきっと猫目の白魔道士なのだ。


「2年くらい前かな、君も知っているもっちさんているじゃない?絵を描いている。」


もっちさんは近くにある別のバーの常連さんでうちの店にも足を運んでくれていて何度か一緒に飲んだ事もあった。

新進気鋭のアーティストでネットで調べるとすぐ出てくる程の界隈の有名人、鬼気迫る絵を描く作風でとても美人だった。

僕はレモンサワーを一口飲むと頷く。


「私彼女と仲良くてさ、どちらかの家に行ってお酒飲んだりゲームをしたり良くするんだけどある日もっちの家で遊んでいると彼女の調子がとても悪そうだったの。

だから私は彼女の身体を見る事にした。

そうするとお腹の辺りに黒いモヤがかかっている事に気がついて彼女に言ったわ、すぐに病院に行ったほうがいいって。

話を聞くとここ一週間くらい立ちくらみが酷く何を食べても気分が悪くなるしおかしいと思っていたんだって。」


ツバメは身体を見る事で悪い場所を見つける事が出来るらしい。本当ならとても興味深い話だ。


「私と約束をしていたし心配かけたくないから何も言わなかったけどどうやらもう限界だったみたい、私はもっちに水くさいなあと笑いながら回復魔法をかける事にしたの、そして手を当てて癒す為の祈りを込めた。

多分君は怪しい宗教だとか思っているかもしれないけれど私は余りそういうのは信じないタチなんだ。

それを三十分程続けているともっちの黒いもやが少しずつ消えていくのが分かった。もっちは汗をぐっしょりとかいていたわ。

明日病院に必ず行ってくださいと念を押して私は家へ帰ったの。」


「帰る時のもっちさんの様子はどうだったの?」


酒を飲む事も忘れ、食い入るように僕はツバメを見る。


「楽になったといって何度もお礼を言われた、多分もう大丈夫だと私は思った。」


ツバメは続ける。


「次の日仕事が終わった辺りにもっちから電話がかかって来たの。悪性の腫瘍が出来ていてかなり進行していたらしいんだけど私の魔法ですぐに良くなるから心配しないでと励ました。

普通だったらただの気休めだと思うかもしれないけどもっちは私を信じてくれた。」


ツバメは生ビールを飲み干し次の注文をした。僕は先が気になって仕方なかった。


「一週間後にもっちが病院に行くとあら不思議!綺麗に腫瘍は消えていましたとさ。凄いでしょ?私は魔法使いなのです!」


コロコロと気持ちよさそうにツバメが笑う。


正直そんな事があるのかと僕は半信半疑だったがそれは後に事実だった事がもっちさん本人の話で分かった。


たまたま僕が店に入っている時飲みに来ていたもっちさんに僕は探り探りツバメの魔法についての話をした。

あまり広まるとめんどくさいとツバメが言っていたので他の人には聞こえないように気をつけながら。


「私もその魔法に助けられた事があるの、ツバメは私の命の恩人。あの子に何かあったら私が命がけで助ける。」


こんなに感情的なもっちさんを初めて見た僕は魔法が本当だった事を知る。


そんな不思議な白魔道士の話だ。


僕も炎を操る能力が欲しいと思いました。

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