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真夜中奇譚集  作者: 神楽 羊
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夕方テレビ

逢魔が時は危ないよ。

この話は僕がたらたらと専門学校に通っていた二十歳頃の話だ。


当時実家の一階には祖父と祖母が生前使っていた部屋があり二人が亡くなってからは長い間僕たち三兄弟の遊び場所となっていた。


友達を呼んではゲームをしたり酒を飲んだり女の子を連れ込んだり好き勝手にやっていたのだが仏壇には時々手を合わせていたから許してくれていた、とは思う。




─その部屋には大きなブラウン管のテレビがあった




とても古い型の物で時々まともに映らなかったり音がおかしくなったりしていた、その度に叩くと直る。


ある日の夕方、僕は一人で見るともなしにテレビを見ていた。


ニュースが映っていてニュースキャスターが事件の報道をしている


「本日〇〇県〇〇市の路上に乗り捨てられて車の中からザザ…女性の遺体を発…ザーザー夫と…子を殺人と…ザー死体遺…の疑…で逮捕」


突然画面が乱れ音声もおかしくなる。


原稿を読む男の声が低速になり犯罪者へのインタビューで使うボイスチェンジャーの様な声になった。


途中で恐ろしくなり僕は急いでテレビに駆け寄る。


ニュースの内容が不気味なのも相まって僕は早く直そうとテレビを叩き続けた。


ニュースが終わり少し経つと何事もなかったように元の画面に戻る


笑顔のお姉さんが明日のお天気を伝えている。


古いテレビとはいえタイミングが良すぎて怖くなる。いやタイミングが悪すぎて冷や汗が出た。


あの気味の悪い音声が耳にこびりついている。




***







不思議な事が起きた。


次の日の同じ時間、僕はその部屋で弟と他愛もない話をしていた、テレビはつけていない。


僕は真っ暗な画面に映った自分の姿を見た時にふと思い出した。


「昨日めっちゃ怖い事あったわ。この時間にテレビ見てたら殺人事件のニュースやっててさ、母親を夫と息子が…」


その時急に弟が開いている部屋の扉の先、薄暗い廊下を見つめながら静かに!と小声で言った。

何かに怯えてた。


「どうした?急に」


真顔で弟が言う。


「今玄関開いて誰か入って来た、今廊下歩いてる。足音聞こえてない?」


弟は冗談好きではあるが霊感が強い。

その顔は本気で話している時の顔だった、弟はそのまま扉を勢いよく閉める。


急に鳥肌が立ち恐ろしくなった。


「いや、なんも聞こえへんかった…それでな…」


話の続きをしようと僕はテレビの画面を見た。



巨大な、顔の潰れた女が真っ暗な画面一杯に写っている。


正確に言うと顔半分が長い髪で覆われていたがそれでも分かる程目や鼻や頬骨、口、顎が潰れていた。


うわ!と声を上げ僕は弟に飛びついた。

多分生涯で弟に飛びつく機会などあの時だけだろう。


「テレビに女写った!!!」


もちろんテレビはついていない。


弟が冷静に言う。

「もしかしたらそのニュースの女の人が来たんかもなあ。」


その夜僕は金縛りに遭った。


漆黒の闇の中、異常な程顔が膨れ上がったテレビの女が立っていてゆっくりと髪の毛を

上げた。すると目も鼻も横にひしゃげていた。



今となっては彼女が何を伝えたかったのも分からないし分かることもないだろう。



夕方に壊れたテレビを見るのはもう止めておこうと思った。

あの女はテレビから来たのでしょうか?

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