外での昼飯
従業員さんを探している訳だがなかなか見つからない。
1度サービスセンターのような場所へ向かうべきなのかなと思ったが、地図自体手元に無いのでそのサービスセンターのような場所すら向かうことが出来ない。
地図を貰うために、どこにあるか分からないサービスセンターを探すために地図を探すとかいう訳の分からないループが完成しそうである。
ここまで来たら適当に歩いて飯屋でも見つけた方が結果的に早いんじゃないかと思ってしまうぐらいだ。
まぁ、今のところ歩いても歩いてもアトラクションしか見当たらないんだけれどね。
あ、あとポップコーン屋ね。
少なくともポップコーンを昼飯として食べるような人間では無いのでポップコーン屋はガンスルーだ。
ポップコーンで腹満たされるとかどれだけ食えば良いんだよな。
「ここまで従業員さん見つからないとは思わなかったな」
「そうだね。簡単に見つかるものだと思ってたけど全然だね」
「もう適当にご飯食べられそうな場所さが――」
練り歩く準備をしようとしたその時、謎の人だかりを見つけた。
「あれなんだろうね?」
俺の言葉をさえぎり、麗はその人集りの方を指さす。
なんかのアトラクションから伸びている列という訳でも無さそうだし、何か着ぐるみがそこに居るという感じでもなさそうだ。
「行くか」
「うん」
好奇心が食欲を勝った俺は、麗の手を繋ぎはぐれないようにしてその人集りへと突っ込む。
その人集りの中心には従業員さんが居た。
別に喧嘩をしているわけでもなければ、暴れている訳でもない。
地面にこのテーマパークのメインキャラクターを濡らした箒で描いていたのだ。
これ、あれだ。
TokTokの映像で見た事がある。
有名なやつだよね。
パフォーマンスが終わり人が散っていったタイミングで声をかける。
「すみません。少し良いですか?」
「はい。どうかいたしましたか?」
「地図が欲しいんですけど」
「地図ですね。はい。どうぞ。彼女さんの分もお渡ししましょうか?」
何で隣にいる麗が彼女と分かったのだろう。
顔が似てないから兄妹では無いと判断されたのかなと思ったが、男女が恋人繋ぎしてたらそりゃカップルだと思われて当然だ。
突然、恋人繋ぎであることを意識し始め恥ずかしくなってしまう。
その恥ずかしさを誤魔化すために「ください」と素っ気なく受け答えてしまう。
「すみません。ありがとうございます」
「いえいえ。良い夢を」
従業員さんは可愛らしく手を振りながら小道具を持って立ち去った。
「一颯? ご飯どの辺にする? 今、ここに居るからこの辺とかこの辺とかなら近そうじゃない?」
麗は全く気にしない素振りであり、恥ずかしがっていた自分が恥ずかしい。
「そうだな。麗の気分に任せとくよ。俺今、焼肉が食いたい気分だから」
「焼肉はさすがに無いでしょ」
「だろ? だから、麗の食べたい物優先で良いよ」
「えー……。う、うん。分かった」
麗は戸惑いながらも頷く。
麗は地図を見ながらゆっくりと歩く。
今俺は具体的にどこへ向かっているのかは知らない。
知っているのは飯屋へ向かっているというただそれだけである。
麗が一体どんなお店をチョイスしたのかなと到着を今か今かと待ちわびる。
歩くこと約5分。
カウボーイが住んでいそうな木造建築の家へと到着する。
その建物前には大きく食べ物のメニューが記載されており、飲食店だと丸わかりだ。
一緒に記載されている料金に戦慄してしまう。
外で食べたら少なくとも数百円は安く食べられる。
これだけ強気な価格設定でも、食べられる場所自体は限られているので売れてしまうのだろう。
実際に俺達も、まぁここで良いかと思ってしまっている。
「お肉関係の料理があるお店っぽいからここ選んでみた。どうかな?」
麗は首を傾げる。
俺の口にした焼肉という言葉を最大限考慮してくれたらしい。
なんて優しい子なんだという感動の気持ちと同時に、飲食店を麗に選ばせるために適当な嘘を吐いてしまい申し訳ないという気持ちが湧いてくる。
まぁ、麗の決めたところなら断るつもりなんて元々無かったので首を縦に大きく振っておく。
そして、グッと親指を立てて笑みを見せる。
「良かった。それじゃあ中入っちゃおっか」
値段が高いところを除けば何も問題ない。
うん、値段がね、料金がね、お金がね……。
何も喋らなかったのは自分のお財布にどれだけ入っていたかを考えていたからである。
流石に足りないことはないと思うけれど、足りなかったらどうしよう。
俺は肉料理を、麗は肉と野菜の両方が使われている料理を注文し食べる。
非常に美味しく、そこそこの値段なだけあるなという感想を抱かせた。
高いせいで、料理の味よりも値段の話が出てくるのが悲しいがこればっかりは致し方ない。
高校生には高すぎる。
「あー。美味しかった。なんか私すごい幸せ。生きてて良かったって思える!」
「死ななくて良かったな。あそこで死んでたらこうやって遊べなかったし、美味いもんも食えなかったんだよ」
「まだやりたいことはいっぱいあるしさ。死んでなんか居られないよね」
とても1か月前に自殺しようとしていた人の言葉とは思えない。
可愛くて、頭も良い。
それでいて、唯一の弱点であった自殺をしようとしてしまうほどのネガティブな思考が、ここまでポジティブな考え方を出来るになっている。
神は何故、彼女に弱点を与えないのだろうか。
もしかして、体育をせずにサボるという少しズレた性格難を与えたことでバランス調整をしたつもりなのだろう。
であれば、神は相当適当だということが伺える。
こんなほぼ完璧人間を生んでしまっているのだ。
もう少しバランス調整頑張ってもらいたい。
いや、俺みたいな人間と付き合っていること自体がマイナスな気がする。
実は結構バランス取れてるのかも……。
自分で言っていてなんだが悲しいなぁ。
何はともあれ満足した俺たちは店を後にし、夏川へと1本『飯食べ終わりました。向かいます』と連絡を入れたのであった。
ちなみに、奢らずに割り勘だ。
ありがとう。麗。
俺の財布の平穏は守られたよ。




