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最初のアトラクションへ

 ビックリフライデーリバーのファストパス適用時間まで違うアトラクションで時間を潰すことにする。


 「一応地図にアトラクション名は書いてあるんですけどねー。具体的にどんなアトラクションかは書いてないんですよー。名前で興味があるもので良いですから、あれば言ってくださいね。どんなアトラクションか私が説明してあげますー」

 「というか、何系が良いのか聞いた方が早くないか?」

 「あー……。確かにそれもそうかもしれないです! 流石阿佐谷先輩」

 「褒めるな、褒めるな。照れちまうだろ」


 奏太は鼻の下を伸ばす。

 冗談でそのセリフを口にしているのかと思ったがどうやら冗談ではないらしい。


 その横で、夏川が広げている地図を覗き込むようにして麗が眺めている。


 「ん、麗。何か良さげなのあったか?」


 一々、確認するのが究極に億劫だなと思ってしまっている俺は自分で決めることを諦め、全て人任せとする。

 別にジェットコースターにも乗れるし、お化け屋敷にも入れる。

 コーヒーカップのような三半規管を刺激しまくるようなアトラクションにも問題なく乗れる。

 何を選ばれても文句を言うつもりは無いので人任せにしたってバチは当たらないだろう。


 「どれが良いのか分からないわね……。千春。あなたのオススメに案内して?」

 「オススメって……。それ中々困る要求ですよ。でも、仕方ないですね。特別に案内してあげます」


 ふふんと笑った夏川は歩き出す。

 向かった先は謎の建物。

 白を基調としたドームのように大きな建物である。

 ここだけじゃ何のアトラクションなのか分からない。


 「なんだこれ」

 「これあれだぜ。室内型ジェットコースター」

 「建物の中にジェットコースターか。珍しいな」


 待ち時間は平気で1時間を超えている。

 どんだけ混んでるんだよ。

 だが、皆そこには触れない。

 噂では聞いていたが、待ち時間は本当にとんでもないらしい。

 何も言わないということはこのぐらいの時間は掛かって当然……という事なのだろうか。

 そりゃファストパスが必須ですわ。


 「ここって2人横に並んで座る感じでしたよね?」

 「あぁ。そうだな……」

 「どうしますか? どうやって分けます?」

 「男は男。女は女で座るのが1番良いと思うんだが、どうだ?」


 一目散に奏太は反応する。

 コイツデートとか言いつつ、俺と麗を別々にしやがった。

 わざとか? わざとなのか?


 「確かにそれも良いですけど……。私的には先輩と福城先輩は一緒の方が良いと思うんですよー。やっばりカップルさんが居るんですからそこはくっつけるのが定石なんじゃないかなーって思うんですよねー」


 夏川は少し頬を赤らめながらそんなことを口にする。

 この感じで大体察した。

 少なくとも夏川が俺と麗のイチャイチャを想像して顔を赤くするとは思えない。

 むしろ、「イチャイチャ目の前でするな失せろ」と罵倒してくるタイプの人間である。

 多分だが、奏太が隣に座っていることを想像して勝手に照れているだけだろう。

 4人を2人、2人で分ける。

 そのうち俺と麗が一緒になれば必然的に夏川と奏太は一緒に座らざるを得ない。

 でも、ストレートに言うと好意がバレてしまうので俺と麗の為という的を作ったということなのだろう。


 「まぁ、そうだな。俺は奏太より麗と座りたい。イチャイチャしたいからな」


 麗の肩を引き寄せ、話をそっちの方向へ持っていく。


 「酷くね? まぁ、確かに福城さんが居るならそっちの方が良いかもな」

 「だろ? はい。奏太は夏川とな」

 「夏川ちゃんは俺とで良いか? もし、嫌なら別々ってのでも良いからね」


 子供に話しかけるような感じで奏太は夏川に接する。

 はっきり言って、この光景だけで奏太が夏川を恋愛対象として意識していないのが丸わかりで、夏川の気持ちを知っているこちらてしては非常に心苦しい。


 「一緒で良いですよ! というか……むしろ、一緒が良いというか……、なんていうか……。とにかくよろしくお願いします!」


 夏川の目には気を使ってくれる阿佐谷先輩というような感じに奏太が見えているのだろう。

 とても嬉しそうに受け答えている。


 とりあえず乗る組み合わせも決まったので隣り合わせになりながら並んでおく。

 前に夏川と奏太が並びに、その後ろに俺と麗が並ぶ。

 ここで一々首を突っ込んでも仕方ないと思ったので、夏川と奏太を放置して俺は麗を愛でることにした。

 何かあったら助けを求めに来るだろうという短絡的な考えもある。


 「麗。手繋ごうか」

 「ちょ……。一颯。雰囲気に流されすぎ」

 「嫌?」

 「べ、別に嫌じゃないけど」


 頬を好調させた麗の手を握る。

 ほんのりと温かい麗の体温が俺の体に伝わってくる。

 やはり、人の体温って良いよななんて思っていると、麗の手が少し震えていることに気付いた。


 「ん? どうかしたか? やっぱり手繋ぐの嫌だった?」


 無理しているんじゃないかと手を離そうとするが、麗は離さない。


 「無理なんかしてないから。むしろ、手繋ぐのは私も嬉しい……し」


 麗は途中で目を逸らし、恥ずかしそうに俯く。

 そんなことを面と向かって言われると俺は俺で恥ずかしくなり、頬の辺りがポッと熱くなる。

 だが、そうなるとなぜ手が震えているのかという疑問がさらに大きくなる。

 恐怖でないなら、緊張?

 俺と手を繋ぐのに緊張して手を震わせているということであれば可愛すぎて抱きしめたくなってしまう。


 「あのー……。先輩たち? 一応ここ他の人の目もありますからね。イチャつくのは構いませんけど、少し声のボリュームもとか考えた方が良いと思います」


 前に居る夏川が言いにくそうにしながらも、はっきりと口にする。

 言いにくそうにしていれば良いという問題ではない。


 「……」


 麗は耳まで赤くしちゃっている。

 完全に素モードだったしな。

 そりゃ恥ずかしくもなるわ。

 俺ですら、めちゃくちゃ恥ずかしいんだもん。


 「うん。一颯と福城さんがしっかりカップルしてんだなって安心したぜ」


 奏太はフォローしたつもりなのか親指を立てて、美しい笑みをこちらに送る。

 恥をかいた人間にそれはフォローじゃなくてただの追い討ちなんだよなぁ……。

 そんなこんなでダラダラと会話をしていると俺たちの番になり、無事ジェットコースターを楽しんだのだった。

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