少し遠くで待ち合わせ
土曜日の朝。
ラジオ体操をするのかと思っちゃうぐらい早く起き、準備して電車に揺れる。
遊園地へ遊びに行く日だ。
別々に遊園地へ向かうのは味気ないなと思ったのだが、自宅の最寄り駅も路線も違う人達がわざわざ合流するのは流石に効率が悪すぎる。
楽しさと効率という2つを天秤にかけた結果、効率の方が重要だろうと判断されたのだ。
まぁ、ぶっちゃけ電車の中では寝てるだけだし、合流しない方が色々と気が楽である。
という訳で寝ます。
おやすみなさい。
人間の目覚める能力は素晴らしいもので乗換駅直前になって目が覚める。
眠たい目を擦りつつ、席を立ち周りに人が居ないことを確認して、ぐーっと背中を伸ばす。
やってることはおっさんそのものだ。
自覚はしてるから言わないでね。
乗り換え自体は1つで終わるのに所要時間はそこそこ長い。
合計で約2時間電車に揺られることになる。
目的地の遊園地へ近付くと近くにある野球場へ向かう野球ファンと、遊園地が目的地であろう来客者が入り交じり中々カオスな状態となる。
大体、休日とはいえ野球のプレイボールは13時くらいだろう。
球場の雰囲気をいくら味わいたいからってこの時間から行くのは早すぎやしませんかね。
そんなことを心の中で嘆きながら、遊園地の最寄り駅へ到着したので降りる。
とりあえず分かりやすそうな所で立って待っていようかなと軽く辺りを見渡すとロッカー付近に見覚えのあるシルエットが見えた。
缶のカフェラテを手に持っている奴は間違いなく奏太だ。
俺より早く来るとか浮かれすぎだろと思いながら近付くと、奏太もこちらに気付いたらしく黙って片手をあげた。
「おはよ」
「おう」
「早いな」
「そりゃ男子だからな。アイツらが意識してるか分からないけれど俺は女の子と出かけるのは全部デートだと思って挑んでるからな。これくらい男として当然だよ」
「この前麗の前でタジタジになっていた男のセリフとは思えないな」
「あれだけは特別だろ。あんなのデートじゃなくて最早拷問だからな」
「まぁ、あれのお陰で仲良くなったんだし俺の事褒めとけよ」
「褒めるよ。褒めるから福城さん俺にくれ」
「やだね。というか知り合いのお古を貰うってどうなんだよ」
「背徳感あって結構良いぞ。コイツこの前まではアイツとイチャイチャしてたんだなって思うと体がゾクゾクする」
「うわぁ……。既に経験済かよ」
「一颯に阿佐谷くん、公共の場……。それも遊園地という子供たちが沢山居るところでそういう生々しい話をするのはやめなさい」
いつの間にかやってきた麗が呆れた表情でそんなことを口にする。
呆れたというか呆れているのだろう。
知り合いのお古は興奮するとかいう話をわざわざここまで来てしているのだ。
呆れない方がどうかしている。
「ちなみに私、一颯以外に眼中無いわよ。一颯に振られるなら死ねるわ」
「重いわ」
「阿佐谷くんのクズさ加減に比べてみればマシだと思うけれど?」
「皆勘違いしてるけどな、俺はクズじゃないからな。しょうもないイタズラが好きな可愛い可愛い男子高校生なだけ」
「可愛い可愛い男子高校生は『コイツこの前まではアイツとイチャイチャしてたんだなって思うと体がゾクゾクする』とは言わないんだよ」
「可愛さの中に見える闇。まさにギャップ萌えだな」
「絶対に間違ってるからそれ」
ロッカー近くであーだこーだ喋りながら待っていると息を切らしながら夏川がやってくる。
待ち合わせ時間的にはかなり余裕なのだが、俺たち先輩が先に来ていたこともあり急いできたらしい。
そういう後輩らしい対応が出来るとか流石だなと感心する。
「先輩だけだったらゆったりしてても良いんですよ?」
耳打ちでそんなことを言われる。
なんでそんな余計なこと言うの?
せっかく感心してたのに……。
「まずは先輩たちにチケットだけ渡しちゃいますね。私が持ってると無くしそうなので」
青っぽいリュックサックから財布を取り出し、そこからチケットを配分する。
それぞれがお礼を口にしつつ、受け取った。
入園料がただになるとかマジで神すぎて頭を下げても下げきれない。
という思いと同時にそろそろ本気でアルバイトを見つけようと思ったのだった。
「私今日何乗るとか全然決めてないんだけれどある程度決めておいた方が良いものなのかしら? それとも全部行き当たりばったりでどうにかなるものなのかな?」
「人気アトラクションはファストパス取って起きたいですよね。何個か先にファストパスだけ確保しておきたいので、確保するアトラクションだけ決めておきますか?」
流石株主優待券のチケットが余っているだけあって知識が豊富である。
……と、思うが奏太は「そうだなぁ」とか平気で口走っているので単純に俺が無知なだけだったかもしれない。
ここ、家族としか来たことないし仕方ないよね。
うん、仕方ない。
「ビックリフライデーリバーだっけ? あのジェットコースター乗りたいわ。あれ、すげぇー好きなんだよね」
「阿佐谷先輩もビックリフライデーリバー好きなんですね。私もあれ大好きなんですよー」
「おぉ、マジマジ? それじゃあそれファストパス取っちゃおう!」
「そうですね。先輩と福城先輩は何か乗りたい……! ってアトラクションありますか?」
2人はある程度盛り上がった後に一応という感じで俺たちに訊ねる。
もうここから別行動にしようと提案したくなるが2人っきりにするのはどうも不安で提案できない。
「あー、俺はねぇーよ。ってか、なにがあるかわからん」
どんなアトラクションがあるのかすらまともに覚えていないのだ。
それぐらい小さな頃に来て以来来ていない。
「私も無いわよ。というか、ここの遊園地は初めてだわ。だから分かりそうな2人に任せるわね」
あぁ……。
麗も未経験者でしたか。
うーん、2人っきりにするのも2人っきりにされるのも不安だから絶対に別行動を提案するのはやめておこう。
迷子になる自信しかない。




